電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

SS22013

タイトル(和文)

海塩粒子輸送シミュレーションによる塩分付着量推定に関する研究(その10)-機械学習を援用した飛来海塩量の高解像空間分布の推定-

タイトル(英文)

Study on estimation of salt deposition with numerical simulation of sea salt particle transport (Part 10) - Estimation of high-resolution spatial distribution of airborne sea salt with the aid of machine learning -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
広域に分布する送電鉄塔等の電力流通設備の耐腐食設計や保守管理において,大気条件下での鉄鋼等の素材の腐食は重要な問題であり,海から飛来する海塩粒子はそのような腐食を引き起こす主要な要因の一つである.飛来海塩量は,海域での風特性,海岸からの距離,地形起伏,地表面粗さ等に依存するため,これらの諸条件を加味して飛来海塩量の広域分布を推定することは有用である.当所では,海塩影響評価のための手段の一つとして,風況・海塩粒子輸送解析コードNuWiCC-STの開発を進めてきたが[1],地形起伏を精緻に捉える高い空間解像度(数10m~数100mの解像度)で大領域(数100km~数1000km四方)の海塩分布を推定することは実現できていない.

目  的
機械学習 注1)を援用し,NuWiCC-ST(数値解析)による飛来海塩分布の低解像度データを高解像度化する(超解像).推定値に対する機械学習アルゴリズムと入力データの影響,観測との相関性に及ぼす超解像の効果を把握する.

主な成果
1. 超解像の実施と推定値に対する機械学習アルゴリズム・入力データの影響把握
NuWiCC-STによる飛来海塩分布の低解像度・高解像度データを基に,機械学習を用いて回帰モデルを生成し,同モデルによる飛来海塩分布の超解像を実施した.また,複数の機械学習アルゴリズム・入力データ条件による超解像データとNuWiCC-STによる数値解析データとを対比した.機械学習の適用は,海塩輸送に関わる気流(風速,風向)の地形影響の再現性向上に大きく寄与すること,地形影響を受けた風速・海塩濃度変化の効率的な学習には,5km四方程度の範囲の地形データや数値解析データ等の利用が推奨されることを把握した.

2. 観測との相関性に及ぼす超解像の効果
日本域を対象に飛来海塩量の超解像マップを試作し,既往の観測データ 注2)と比較した.超解像により,観測地点の一部で,飛来海塩量に対する地形影響がより的確に再現されたものの,全ての観測地点を対象とした観測との相関性に大きな改善は確認されなかった.これには,今回の試作マップが,特定の地域の限定的な学習データ等に基づいていたことが影響したものと推察された.

今後の展開
学習データの拡充やより適した機械学習アルゴリズムの選択により,推定精度を向上させた飛来海塩量の超解像マップの作成を目指す.

注1)次の4つの機械学習アルゴリズムを対象とした:入力値と予測値に線形関係が成立することを仮定する「線形モデル」,より複雑な関数のモデリングを可能とする「MLP」,入力データの持つ空間的情報を考慮できる「SRCNN」,入力データの空間的情報を考慮しつつ深層学習を可能とする「DRRN」.
注2)ドライガーゼ法(JIS Z 2382)によるガーゼへの付着海塩量観測データ(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)平成17 年度成果報告書,2005).

関連報告書:
[1] N15007「海塩粒子輸送シミュレーションによる塩分付着量推定に関する研究(その7) -日本域を対象とした飛来海塩空間分布の評価-」(2016.02)

概要 (英文)

Machine learning models were applied to the sea salt flux distribution data from NuWiCC-ST (numerical simulation) to reconstruct super-resolution data. By comparing super-resolution data with numerical simulation data, we found that the application of machine learning models greatly improves the reproducibility of topographic effects of airflow on sea salt transport, and that the use of input data over a 5 km square area is recommended for efficient learning of sea salt transport. In addition, we developed a prototype super-resolution map of the sea-salt flux in Japan region and compared it with previous observations. The prototype map reproduced the topographic effect on the sea salt flux at some of the observation points more accurately, whereas there was no significant improvement in the correlation with observations of all the observation points. This may be due to the fact that the map was based on limited training data for a specific area.

報告書年度

2022

発行年月

2023/06

報告者

担当氏名所属

須藤 仁

サステナブルシステム研究本部 研究統括室

藤原 広太

サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門

平口 博丸

電力中央研究所

服部 康男

サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門

木原 直人

サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門

中尾 圭佑

サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門

キーワード

和文英文
海塩粒子 Sea salt particle
Wind
超解像 Super resolution
機械学習 Machine learning
数値流体解析 Computational fluid dynamics
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