電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
SS22012
タイトル(和文)
地質モデルの構築とその不確実性への対処に関わる提言
タイトル(英文)
Recommendations on geological modeling and dealing with its uncertainties
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
地層処分事業では地質環境モデル(Site Descriptive Model, SDM)と呼ばれる概念があり、処分場周りの地質分布と、地質分布をベースにした熱・地下水・力学・化学といった地質環境特性の空間分布が記載される。このうち、地質分布等を表現する地質モデル(地質図)は、これらの特性の空間的広がりを説明・推定するために不可欠な基礎情報である。地層処分分野においては、地質モデルの構築技術を有する地質技術者の数が減少傾向にあると思われる。一方で、2020年より、2つの自治体で地層処分サイトの選定に関わる文献調査(注1)が実施中である。このため、地質モデル構築に関わる技術継承・人材育成が急務である。また、技術的には事業に即した情報整理が必要であり、地質情報の不確実性の取扱いが大きな課題である。
目 的
地質情報の不確実性を考慮した地質モデルの基本的な構築手順について、実際の事例を交えて整理する。また、不確実性を低減するための地質調査の基本的な考え方や、不確実性の管理について提言する。
主な成果
1. 地質モデルの構築手順の整理
地質モデルの構築では、データそのものに内包される不確実性とモデルの不確実性という2種類の不確実性を考慮する必要がある。本論では主に後者に焦点を当て、モデル構築の対象地域での限られた情報から考えうる複数の地質モデルを示すことによって不確実性を表現する。また、地質要素(地層区分、断層、貫入岩など)の分布の確からしさに基づく地質モデルの絞り込みを提案した。
具体的には、地質モデル構築の考え方・手順を、構築の過程で生じる不確実性の所在を示しながら、(a) データの収集と精査、(b) 地質概念モデル(作業仮説)の作成、(c) 地質モデル(地質図学による図化)の構築という3つの段階に大別し、富士川河口周辺地域の地質モデル構築の事例と共に整理した。
2. 地質分布の不確実性低減に向けた地質調査の留意点
一般に、地質モデルを絞り込むためには、地質要素を考慮して地表からのボーリング調査を実施することになる。そこで、ボーリング調査設計のための基本的な考え方、具体的には、特定の地層、断層、貫入岩等の地質要素を対象としたボーリング調査における調査工事設計の基本的な留意点(掘削箇所、長さ、方向など)について整理した。
3. 地質環境に関わる主題図の作成に対する提言
検討対象地域に対し、複数の地質モデルを提示することで、地下水や力学などの他の地質環境特性の検討でも空間分布の不確実性を考慮することになる。またそれらの検討結果から解析・評価上で感度が高い地質要素の情報などのフィードバックを受けることで、地質モデルの絞り込みやその効率化が期待される。
また、本論の検討内容を総合し、Plan(調査・モデル化計画の立案)→Do(地質モデルの構築)→Check(地質モデルの評価)→Act(モデル改善に向けたアクションの設定と実践)という地質モデル構築のPDCAサイクルを提案した。これは不確実性の管理・低減を達成するためのリスクマネジメントでもあり、DoとCheckをリスクアセスメント、ActとPlanをリスクトリートメントのプロセスとみなせる。
4. 今後の展開
本論は、地層処分に関わる文献調査、それに続く概要調査(注1)の初期段階での計画立案、データの整理、地質モデル構築の参考事例となる。また、対象地域の地質環境の説明性の向上、人材育成にも貢献すると考えられる。
(注1)地層処分に関わる「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)」に基づく段階的な調査としては、文献調査、概要調査、精密調査があり、概要調査からが現地調査となる。
概要 (英文)
In view of the declining number of geotechnical engineers in the field of geological disposal, we organize a procedure to construct geological models taking into account uncertainties in geological information. Two types of uncertainties need to be considered in the geological modeling process: uncertainties inherent in the data itself and uncertainties associated with the modeling process. This paper focuses mainly on the latter, and deals with uncertainty by presenting multiple possible models for a single target area. The geological modeling procedure consists of three steps: (1) data collection and scrutiny, (2) development of a geological conceptual model, and (3) construction of a geological model. The specific implementation procedures for each of these phases are presented with an actual example of geological model construction in the area around the mouth of the Fuji River. In the case study, we present the method of refining the geological conceptual model based on the certainty of the distribution of geological elements. In addition to the above, using the design of borehole investigations as a case study, we present the basic concept of geological investigation to reduce uncertainty. We also propose a PDCA cycle for geological model construction with the risk management perspective.
報告書年度
2022
発行年月
2023/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
幡谷 竜太 |
サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門 |
共 |
楠原 文武 |
サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
地質モデル | geological model |
地質環境モデル | site descriptive model |
不確実性 | uncertainity |
リスクマネジメント | risk management |
地層処分 | geological disposal |