電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
SS22011
タイトル(和文)
既存資料を活用した火力発電所における陸域動植物の簡易な影響評価手法
タイトル(英文)
A simple method for assessing the impacts of thermal power plant construction projects on terrestrial animals and plants using existing information
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
火力発電所の環境アセスメント(以下アセス)では、国や都道府県のレッドリストに記載されている動物や植物の重要種に対する影響を評価することが定められている。平成23年の環境影響評価法改正では、事業の位置・規模等の計画の立案段階において、既存資料を用いた簡易な調査、予測および評価を行う手続きが追加された。当所では過去のアセス資料と事業想定区域の植生区分を照らし合わせ、区域内に出現する重要種を推定する方法を提案した。火力発電所の立地条件に応じた重要種の生態的な特徴を踏まえることにより、事業特性に応じた効率的な影響評価が期待できる。
目 的
火力発電所の立地特性とこれまでのアセス調査で記録された重要種の生態的特性を分析し、陸域動植物の簡易な影響評価手法を構築する。
主な成果
1. 火力発電所の立地特性
国が公開している地理情報を用いて、既設の火力発電所(136地点)の立地特性を分析した。火力発電所は、主に標高10 m未満の低地や海岸線から1 km未満の沿岸域に位置していた。周辺環境の大部分は工場と水域であり、動植物の重要な生息・生育環境となる自然林や湿地など、植生自然度の高い環境の占める割合はわずかであった 。こうした立地特性を踏まえた評価対象の絞り込みを行う必要があると考えられる。
2. 火力発電所アセスで記録された重要種の生態的特性
過去の火力発電所アセス資料から、重要種の分布や生息・生育環境を整理した。記録された重要種の大部分は、低地もしくは海岸に分布する種であった。また、市街地や港湾を利用する重要種の割合は、維管束植物や昆虫類では少なかったものの、脊椎動物では比較的多く、特にリプレース事業では96.6%となった。
3. 陸域動植物の簡易影響評価フロー
火力発電所の立地特性および記録種の生態的特性を踏まえて、陸域動植物の簡易影響評価のためのフローを構築した。本フローを計画段階配慮手続きや事業検討段階の机上調査に活用することで、アセスの効率化や簡略化が期待できる。
今後の展開
構築したフローにおいて分布の可能性や生息・生育適地を判定するための重要種のデータベースを充実させ、火力発電所アセスへの適用性の向上をはかる。
概要 (英文)
We analyzed the topography and vegetation around the thermal power plants using public geographical information systems. Most of the power plants were in lowlands with an altitude of lower than 10 m or within 1 km of the coastline. These plants were mostly surrounded by industrial areas and water bodies, and the distributions of forests and wetlands, which serve as important habitats for animals and plants, were limited. We also surveyed the ecological characteristics of regionally important species recorded in the previous assessments. Most of the recorded species of animals and plants are known to be distributed in lowlands or coastal areas, and vertebrate species among them partially utilize urban and artificial harbor areas. Based on the above results, we established an easy-to-use evaluation procedure of the impacts of thermal power plant construction projects on terrestrial animals and plants. This procedure could be applied to preparing documents on primary environmental impact considerations at the early stage of environmental assessment and desk research at the project planning.
報告書年度
2022
発行年月
2023/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
阿部 聖哉 |
サステナブルシステム研究本部 生物・環境化学研究部門 |
共 |
小林 聡 |
サステナブルシステム研究本部 生物・環境化学研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
環境アセスメント | Environment impact assessment |
レッドリスト種 | Red listed species |
地形分布 | Topographic distribution |
生息・生育環境 | Animal and plant habitat |
工場地帯 | Industrial area |