電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
SS22005
タイトル(和文)
海塩粒子の付着に起因する金属部材表面の濡れと大気腐食の観測・評価技術に関する調査
タイトル(英文)
Survey of outdoor observations and fundamental experiments about atmospheric corrosion and wetting induced by sea salt particle deposited on metal surface
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
暴風等に起因する飛来塩分は送電用鉄塔等の電力流通設備に腐食を引き起こすので、設備の維持管理においては効率的な点検のために、部材の腐食傾向の把握が重要となる。当所では送電用鉄塔の腐食劣化を対象として、飛来海塩量や気温、相対湿度などの環境因子を基に腐食傾向の全国規模あるいは鉄塔の部材局所での現状把握を進めている。鉄塔の補修時期の判断のためには、より精緻な腐食速度の評価が求められる。腐食は液滴の下で進行するため、塩分が空気中の水分を吸収する潮解により生じる部材表面の濡れの詳細(付着した液滴の体積・形状の分布など)を考慮することで腐食速度の定量評価につながり、そのためには腐食・濡れに関する要素技術の調査が必要である。
目 的
現状の腐食傾向の観測・推定技術、および環境制御下における腐食・濡れに関する基礎実験の調査結果を取りまとめる。
主な成果
腐食・濡れに関する国内外の学術誌を対象に文献調査を実施し、下記の知見を得た。
1. 腐食・濡れの環境因子に基づく推定と屋外での観測手法
現状の腐食・濡れ評価の取り組みは、気温、相対湿度、付着塩分量などの環境因子を基にした腐食・濡れの推定と、屋外にセンサを設置する直接観測とに大別される。濡れについては主に有無のみが濡れ時間として取り扱われている。
2. 理想条件下での腐食速度のモデル
濡れの詳細は、例えば液面から金属表面への酸素供給が律速要因の一つであるように、腐食速度に影響を与える。腐食速度の評価に対して、既往研究で広く使われているTomashovモデルでは、個別の液滴を取り扱わずに液滴の面平均厚み(体積)のみ考慮している。一方、Jiangらのモデルでは、金属表面・液滴・空気からなる固気液三相の接触線(液滴の縁)の長さを変数として、液滴形状の考慮も可能としている。
3. 理想条件下での濡れに関するモデル
環境因子の年平均値が同じ条件であっても、時々刻々の履歴や日当たり、部材表面の傾きなどの局所的な条件によって濡れは変化する。詳細な濡れの予測・評価には、相対湿度履歴や液滴形状の変化、複数液滴の移動・合体の統計的な取り扱いが必要である。
今後の展開
腐食速度モデルを実環境に適用するために、濡れの可視化観察や腐食速度の計測を実施し、濡れの詳細に基づいた腐食速度と局所的な条件との関係を明らかにする。
概要 (英文)
Atmospheric corrosion due to sea salt particle deposited on transmission towers degrade their metal surface, so for efficient maintenance of them, corrosion rates of their surface were required. CRIEPI estimated the corrosion rates relatively in all Japan area or at local parts of the transmission tower basing on atmospheric factors such as amount of airborne sea salt, temperature, relative humidity and so on. Corrosion reacts under electrolyte, so details of wetting due to deliquescence on metal surface helps quantitative estimation of corrosion rate. In this report, outdoor observation and fundamental experiments under controlled condition about atmospheric corrosion and wetting phenomena due to sea salt particle deposited on metal surface were surveyed, following states were founded. (1) Corrosion rate and wetting were estimated by atmospheric factors and were directly measured by sensors. Wetting was usually evaluated only by its existence and treated as time of wetness. (2) corrosion rate under electrolyte was determined by oxygen diffusion from liquid-gas interface to the metal surface. In Tomashov model, corrosion rate changes as thickness of electrolyte surface; in model of Jiang et al., corrosion rate changes with droplet shapes. (3) Volume of electrolyte due to sea salt particle was affected by relative humidity hysteresis and components of sea salt; shape of electrolyte was affected by droplet dynamics and contact angle hysteresis.
報告書年度
2022
発行年月
2022/09
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
竹山 真央 |
サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門 |
共 |
須藤 仁 |
サステナブルシステム研究本部 研究統括室 |
共 |
北野 慈和 |
サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門 |
共 |
服部 康男 |
サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
大気腐食 | Atmospheric corrosion |
送電用鉄塔 | Transmission tower |
付着海塩 | Deposited sea salt |
濡れ | Wetting |
液滴 | Droplet |