電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

SS21007

タイトル(和文)

鉄塔腐食評価のための部材表面付着海塩に対する雨洗効果の把握 -画像解析による亜鉛メッキ鋼板表面での雨滴挙動の解明-

タイトル(英文)

Understanding Rain Wash Effect of Sea Salt on Metal Surface for Assessment of Aged Transmission Towers -Analysis of Raindrop Behavior on Galvanized Steel Surface by Image Processing-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
高度経済成長期に集中的に整備された送電用鉄塔の高経年化は,電力安定供給と保守管理の適正化にあたり深刻な問題となっている.当所は,保全実務を支援し効率的な管理に資するために,広域評価と局所評価に大別される腐食評価技術を構築してきた.鉄塔腐食を支配する海塩について,気中濃度マップや鉄塔部材表面での付着量に基づく腐食速度評価式を整備している.一方,部材に付着した海塩が降雨イベントごとに洗い流される効果(以下,雨洗効果)の把握を課題としている.

目  的
雨洗効果の推定法の現状と国内の送電用鉄塔を対象とした場合の留意点を整理する.鉄塔に広く使用される亜鉛メッキ鋼板を対象に,雨洗効果の要因となる降雨条件下での鋼板表面における雨滴挙動を解明する.

主な成果
1. 他分野における雨洗効果推定法のレビュー
碍子の急速汚損や定期メンテナンス時期に関する検討,橋梁の設計ガイドライン等の現状を調査し,多くの分野で降雨量と塩分残存割合の対応を指数関数式で推定していることを確認した.同式の主要なパラメタは雨洗効果が発揮される最低雨量Riと雨洗の効きやすさKであり,これらは部材上の雨滴滑落量と対応することを把握した.
2. 国内の送電用鉄塔を対象とした雨洗効果推定法の留意点の整理
日本では総降水量数mm程度の降雨イベントが季節によらず頻発することから,少雨による雨洗効果の有無の推定が長期腐食の評価において重要であることを明らかにした.送電用鉄塔の部材を対象とする場合の留意点として,部材表面の傾きに伴う雨水供給量減少(雨洗抑制)・滑落量増加(促進)を考慮する重要性を示した.
3. 雨洗効果が発揮される最低雨量の推定に資する部材表面の液滴挙動の把握
少雨下に設置した鋼板表面の映像から,機械学習により雨滴個数・粒径を定量化する画像解析法を開発し,雨水供給・滑落が平衡すると雨滴個数・粒径が維持されほぼ定常となることを明らかにした.さらに,定常時の雨滴情報と鋼板の傾きから,雨洗効果が発揮される最低雨量Riを推定できる見込みを得た.

今後の展開
腐食が進行した亜鉛メッキ鋼板や塗装面への適用,理論やラボ試験等による降雨量の感度調査を通し,より多様な濡れ性・降雨条件への知見の一般化を進める.塩分残存割合と雨滴滑落との対応を定量化し,雨洗の効きやすさKの推定法についても検討する.

概要 (英文)

Maintenance of old transmission towers constructed during the period of rapid economic growth is a challenge in Japan. Past studies in our group have developed a series of assessment techniques for the maintenance of aged transmission towers; however, the current method cannot properly consider the rain wash effect, which is essential to quantify surface contamination. In this study, we reviewed rain wash evaluation methods for other infrastructures and clarified issues associated with the application of these methods to transmission towers in Japan. We also investigated a method to evaluate rain wash parameters for transmission towers.
Surface contamination exponentially decreases with the amount of rainfall, and one of the important parameters of rain wash effects is the minimum rainfall required for rain wash Ri, which is sensitive to weak rainfall. Our statistical analysis suggested that weak rainfall events of less than a few mm occur throughout the year regardless of the season in Japan; therefore, a detailed evaluation of Ri is important. We also suggested that the inclination of surfaces should be carefully treated because transmission towers are mainly composed of diagonal members. To estimate Ri, we developed an image processing method to quantify rain drop behaviours on inclined metal surfaces exposed to weak rainfalls. We found that rain drop numbers and sizes reach a quasi-equilibrium state after sufficient rainfall, and Ri may be estimated from the volume of rain drops on the surface under the quasi-equilibrium state.

報告書年度

2021

発行年月

2022/05

報告者

担当氏名所属

北野 慈和

サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門

服部 康男

サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門

キーワード

和文英文
送電用鉄塔 Transmission tower
雨洗 Rain wash
機械学習 Machine learning
画像処理 Image processing
雨滴 Rain drops
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry