電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
SE22004
タイトル(和文)
米国におけるDERの活用拡大に向けた卸電力市場の制度設計の課題―PJMのOrder 2222への対応に関する考察―
タイトル(英文)
Issues of regulatory framework to integrate distributed energy resources into wholesale electricity market - Focusing on the response of the Order 2222 in PJM -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
わが国では需給ひっ迫への対応、カーボンニュートラルの実現、およびレジリエンスの向上を目的として、再生可能エネルギーに加えて分散型エネルギー資源(Distributed Energy Resource, 以下DER注) の活用拡大が議論されている。今後は、供給力および調整力の確保に向けたDERの活用が、卸電力市場や系統運用に関わる制度設計の重要な課題の一つである。しかしながら、わが国ではDERの卸電力市場への参加要件の策定など、制度設計において重視すべき論点は十分に明らかにされていない。他方で、米国ではDERを集約したアグリゲーションの活用に向けて、ISO/RTOが運営する卸電力市場の制度設計が進められている。
目 的
米国の電気事業において、小規模なDERを集約するアグリゲーションの活用に向けた卸電力市場の制度設計の論点を明らかにし、ISO/RTOが直面した争点およびわが国への示唆を述べる。
主な成果
1. 米国の卸電力市場におけるアグリゲーションリソースの参加モデルと目的
米国では2020 年に連邦エネルギー規制当局(FERC)がOrder 2222 を発令し、ISO/RTOにDERを集約したアグリゲーションの市場参加モデルの策定を求めている。これを受けて、現在PJMはアグリゲーターがDER を100kW以上に集約したアグリゲーションリソースを卸電力市場に入札可能となるモデルを策定しており(図1)、今後も2026年以降の本格的な取引開始に向けて詳細設計を進める予定である。米国のこうした制度設計の目的は、従来型電源が退出する一方で需要家の所有するDERが普及拡大する状況を踏まえ、これまでISO/RTOで取引対象外だったDERの可観測性を高めることである。
2.アグリゲーションの活用と混雑管理の両立に関する課題
PJMがDERを卸電力市場で活用するうえで直面した課題の1つは、系統運用における混雑管理とアグリゲーションリソースの受け入れの両立である。PJMではDERの活用に伴い、混雑管理の計算量が現在よりも増大するのを防ぐため、単一のノード注) 内でDERを集約することをアグリゲーションリソースのエネルギー市場への参加要件としている(図2)。これについて、アグリゲーターからは多様なDERの確保に地理的制約が課されるため反対もあったが、FERCは混雑管理を重視し、PJMの考えを認めている。
仮に、わが国でもアグリゲーション事業が本格的に発展する場合、送電制約を考慮した混雑管理の実効可能性を検証し、地理的要件の必要性の有無を考慮することが重要と言えるだろう。
3.DERの活用に関する事業者間の調整に関する課題
PJMがDERの本格的な活用を進めるうえで、配電事業者との調整も課題となっている。
PJMではアグリゲーションリソースが卸電力市場へ参加する前に、配電事業者が信頼度および安全性の観点からDERの市場参加の承認を行う。配電事業者の適切な承認手続きが求められるが、配電事業者が配電系統の信頼度維持の観点から、DERの市場参加を承認せず、過度に抑制する可能性が懸念されている。
わが国においてもDERの活用に関しては、系統全体の最適運用および配電系統の最適運用に向けて、利害関係者の対立が生じ得る。送電系統および配電系統の協調的運用のあり方がより重要な課題と言える。
概要 (英文)
The regulatory design to expand the use of distributed energy resources from the perspective of ensuring supply and regulatory capabilities is being considered in Japan. In particular, one of the issues for the use of DER is the removal of barriers to entry into the wholesale electricity market. This report clarifies the key points for designing market requirements to DER in the wholesale electricity market by referring to the U.S. cases. In 2020, FERC issued the Order 2222, which removes barriers to entry so that aggregation resources of 100 kW or greater could be traded in the wholesale power market, and PJM has designed rules in compliance with the Order 2222 to allow any technology types of DER to participate in the market.
On the other hand, it was found that there was a geographic market participation restriction that required aggregation of resources at a single node from a congestion management perspective. In addition, prior approval from the distribution utility is necessary for DERs to participate in PJM's market. There is concern that distribution utilities may limit DERs' participation in the wholesale electricity market in order to ensure an over-reliable level of service.
Although the use of DERs in the power system is expected in Japan in the future, it is necessary to design market participation requirements in coordination with stakeholders in terms of congestion management and grid reliability.
報告書年度
2022
発行年月
2023/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
澤部 まどか |
社会経済研究所 |
共 |
古澤 健 |
社会経済研究所 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
分散型エネルギー資源 | Distributed Energy Resources |
卸電力市場 | Wholesale Electricity Market |
オーダー2222 | Order 2222 |
アグリゲーション | Aggregation |
系統運用 | Grid Operation |