電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

R18001

タイトル(和文)

短い時間領域の現象を含む電力系統の動特性解析手法の開発-数値的安定性に優れたETDRK法の適用-

タイトル(英文)

Development of Dynamic Simulation Method for Power System Including Short Term Electric Phenomena -Application of ETDRK Method with Superior Numerical Stability-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
近年,再生可能エネルギー電源等の高速な制御動作をもつパワーエレクトロニクス機器の系統連系が増加しており,電力系統の実効値動特性解析もより短い時間領域を含む現象に対応していく必要がある。当所のY法1)では数値積分手法として4段4次の陽的ルンゲクッタ(RK4)法が用いられているが,上記のような速い動特性を含む系統を解析対象とする場合においては,時間刻みが大きいと物理的には収束すべき数値解が発散してしまう性質(数値的不安定性)がある。そのため,時間刻みを小さく設定する必要があるが,その結果として計算量が増大し,計算時間が膨大となる欠点がある。
目 的
短い時間領域の現象を含む電力系統を数値的安定かつ効率的に解析可能な新たな動特性解析手法を開発する。
主な成果
1. ETDRK法を用いた系統解析手法の開発
近年注目されている数値積分手法であるETDRK法2)(表1)を用いた新たな電力系統の動特性解析手法を開発した。開発手法では,電力系統の微分方程式を線形項と非線形項に分離し,ETDRK法を適用して線形項を厳密に取り扱うことにより,数値的安定に積分計算できる。また,微分方程式の変数変換を行うことにより,電力系統の定態安定度解析で用いられる固有値を活用して,ETDRK法で必要となる行列指数関数を容易に計算できるアルゴリズムとしている(図1)。
2. シミュレーションによる検証
電気学会EAST10機系統モデル3)を用いて,小さい時間刻みでのRK4法での解析結果をリファレンス4)として,①時間刻みを変更した場合の数値解の精度と,②時定数の短い制御を含むPVがある系統の動特性解析への適用性を検証した。①では,0.002秒~0.1秒の時間刻みでのRK4法とETDRK4法(4段4次のETDRK法)の結果の誤差を比較した(図2)。その結果,ETDRK4法はRK4法と同等以上の精度であり,時間刻みに関わらず数値的安定に計算できることが分かった。②では,解析する時間刻みよりも短い時定数を含むPVをEAST10機系統に連系した場合について両者の解析結果を比較した(図3)。RK4法はシミュレーション開始直後に数値的不安定となり解が発散するのに対し,ETDRK4法はリファレンスと概ね解析結果が一致しており,数値的安定に計算できることが分かった。また,シミュレーション計算時間の比較より,ETDRK4法はRK4法に比べて,同じ時間刻みでは計算時間が少し増えるが,短い時定数を含む場合には時間刻みを小さくせずに効率的に計算できる。

概要 (英文)

Conventionally, an explicit method such as the classical Runge-Kutta method has been used in dynamic simulation. In recent years, power electronic devices with fast control response such as renewable energy sources are increasingly introduced to power system. When it is simulating these short term electric phenomena in Root Mean Square (RMS) simulation domain, numerical instability can be the problem. This paper describes a new RMS simulation method improved numerical stability using Exponential Time Differencing Runge-Kutta (ETDRK) method. The ETDRK is a class of exponential integrators, where the linear term of a differential equation is treated exactly, while the non-linear term is numerically integrated. The effectiveness of the proposed method verified by numerical simulation using the IEEJ EAST-10 benchmark power system model. The results showed that the proposed method is outperformed the classical Runge-Kutta method in terms of numerical stability and precision.

報告書年度

2018

発行年月

2019/07

報告者

担当氏名所属

河村 集平

システム技術研究所 電力システム領域

小関 英雄

システム技術研究所 電力システム領域

内田 直之

東京理科大学 工学部 電気工学科

キーワード

和文英文
数値積分手法 Numerical Integration Method
動特性解析 Dynamic Simulation
数値的安定性 Numerical Stability
ルンゲクッタ法 Runge-Kutta Method
固有値 Eigenvalue
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