電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
R17006
タイトル(和文)
需給調整市場導入下における需給制御に関するシミュレーション検討 -LFC及びEDCの課題整理とコスト低減効果-
タイトル(英文)
A simulation study of balancing control under the balancing market - Technical challenges and cost reduction effect of LFC and EDC -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
現在,我が国における周波数制御及び需給バランス調整には,一般送配電事業者が公募調達した調整力が用いられているが,より効率的かつ経済的な調整力の調達・運用を目的とし,2020年を目途に需給調整市場の創設が予定されている。需給調整市場導入下において,低廉かつ安定した需給運用を実現するためには,技術課題を事前に抽出・整理する必要がある。
目 的
需給調整市場の導入により大きな変化が想定される負荷周波数制御(LFC)及び経済負荷配分制御(EDC)を対象とし,需給制御の課題やコスト低減効果について,実系統をモデル化したシミュレーション1)により明らかにする。
主な成果
電力広域的運営推進機関(広域機関)等における議論や欧州の検討事例等2)を参考に,需給調整市場導入下におけるLFC及びEDC3)の課題として表1の項目を抽出し,シミュレーションにより以下を明らかにした。
1. メリットオーダーに基づくLFCによるコスト低減効果及び技術課題
LFCによる地域要求量(AR)配分を単純なメリットオーダー(MO)で行った場合4), 現行(出力変化速度比例配分)よりLFC調整単価5)は低減する(表2)。一方,単純なMOのLFCにおける課題として,1回の制御でARを配分する発電機台数の減少により,発動されるLFC調整力の合計変化速度が低下し,ARは現行より増大することが挙げられる(表2,図1)。この対策として,変化速度を考慮したMO6)でLFCを行うと,ARを現行と同程度に抑制しつつ,LFC調整単価を現行より低減できると考えられる(表2)。
2. 発動までの応動時間の長いEDC調整力(EDC-L)に関する技術課題
EDC調整力の調達・運用においてEDC-Lの比率が増すと,EDC制御残が増大し,それに伴いARが増大する(表3,図2)7)。更に,このAR増大によりLFC発動量が増加するため(表3),各調整力の価格次第ではコストの増大が懸念される8)。このため,EDC調整力の調達・運用ではLFC調整力も含めた価格や応動時間等の考慮が重要となる。
3. EDC調整力を対象とした広域需給調整によるコスト低減効果
EDC調整力を対象とした2エリア間における広域需給調整のシミュレーションを行った結果9),エリア単体でEDCを行った場合と比べ,連系線潮流基準値の変更に伴うARの増大はほとんどなく,広域大でのEDC調整力の発動量及び単価が低減された(表4)。
注1)本研究では中部電力提供のデータを使用したため,中部エリアを対象に発電計画の作成から実運用段階における需給制御までをシミュレーションするモデルを構築し,各季節の代表月における1週間を対象に検討を実施した。
2)例えば以下の文献では,欧州各国において,LFCをメリットオーダーで行った場合の検討例が示されている。
E-Bridge, “Impact of Merit Order activation of automatic Frequency Restoration Reserves and harmonized Full Activation Times”, 2016-2.
3)「第21回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料3」では,EDC調整力として発動までの応動時間が5分のEDC-Hと15分のEDC-Lが示されている。
4)ARが増(減)方向の場合,kWh単価の安い(高い)LFC対象機から順にARを最大限配分するとした。
5)ここでの調整単価は,調整力の使用に対する精算に用いられるkWh単価(上げ下げ別)を意味する。
6)制御1回当たりのAR配分可能量を減らすことで,ARを配分する発電機台数を増加させ,発動されるLFC調整力の合計変化速度の向上を図った。
7)ここでは極端なケースとして,EDC-HとEDC-Lのどちらか一方のみでEDCを行った場合を想定し,それぞれの発動までの応動時間(EDC-H:5分,EDC-L:15分)をEDCの制御周期としてシミュレーションを実施。
8)EDC-Lの調達価格が安価な場合でも,LFC発動量増加により,運用コストを含めた総コストは増大する恐れがある。
9)「第24回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 資料4」に記載の広域需給調整の概要に基づき,シミュレーションを実施。
概要 (英文)
In Japan, a balancing market is going to be established in 2020. In order to secure stable energy supplies and to cut electricity prices, it is important to identify the technical challenges of balancing control under the balancing market beforehand. In this report, the technical challenges and the cost reduction effect of LFC (Load Frequency Control) and EDC (Economic load Dispatch Control) under the balancing market are investigated using supply and demand balancing simulation.
As for LFC, the impact on AR (Area Requirement) quality and the cost of a transition from a pro-rata activation scheme to a merit-order activation scheme is studied. The simulation results show that the transition will increase AR, although it will reduce average LFC activation price. The main reason for AR quality decline after the transition to a merit-order activation scheme is that fewer LFC units are selected and activated to deliver the requested LFC volume whereas in a pro-rata activation scheme all LFC units are selected and activated to deliver the same LFC volume.
As for EDC, the technical challenges of utilizing the slow EDC units and the cost reduction effect by cross-border balancing are studied. The simulation results show that the EDC units with a FAT (Full Activation Time) of 15 minutes make AR larger than those with a FAT of 5 minutes, and cross-border balancing reduces the activation volume of EDC and average EDC activation price.
報告書年度
2017
発行年月
2018/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
徳光 啓太 |
システム技術研究所 電力システム領域 |
共 |
花井 悠二 |
システム技術研究所 電力システム領域 |
共 |
天野 博之 |
システム技術研究所 電力システム領域 |
共 |
寺尾 良輔 |
中部電力株式会社 電力ネットワークカンパニー 系統運用部 給電計画グループ |
共 |
中山 友輔 |
中部電力株式会社 電力ネットワークカンパニー 系統運用部 給電計画グループ |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
需給調整市場 | Balancing market |
広域需給調整 | Cross-border balancing |
負荷周波数制御 | Load frequency control |
経済負荷配分制御 | Economic load dispatch control |