電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

R15002

タイトル(和文)

オフィスを対象とした執務者の便益評価手法の検討-(その1)温熱環境が疲労時の作業効率に及ぼす影響-

タイトル(英文)

Study on the method of benefit evaluation of the worker in the office environment -Part1 The effect of the thermal environment on work efficiency of the fatigue condition-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

オフィスの温熱環境の悪化が、疲労の影響因子になることが定性的に分かりつつあることから、適切な温熱環境の調整が、疲労軽減や作業効率の向上といった執務者の便益向上に寄与すると考えられる。しかし、温熱環境、疲労、作業効率の相互影響は解明されておらず、適切な温熱環境の調整に必要な便益評価手法も確立されていない。
そこで、便益評価手法の確立へ向けた第一段階として、異なる温熱環境が疲労時の作業効率に及ぼす影響を被験者実験により検討した。
主な成果は、以下のとおりである。
1. 被験者実験の手法の考案
異なる温熱環境における疲労状態の被験者に対し、作業効率を決定する主要因である認知機能を測定する実験手法を考案した。特徴は、以下のとおり。
・オフィス業務に必要と考えられる3つの認知機能(遂行機能の評価、記憶能力の評価、長時間の集中の評価)を、オフィス作業に近いPC操作によって測定することで、よりオフィスの業務実態に近い実験条件を設定していること。
・認知機能の低下の要因を把握するため、認知機能と同時に、生理量(皮膚温、発汗量等)と心理量(温冷感、快適感等)を測定すること。
・疲労時の作業効率への影響を評価対象とするため、睡眠不足による疲労状態の被験者を対象とすること。
2. 異なる温熱環境が疲労時の作業効率に及ぼす影響
中温条件(28℃/50%)と高温条件(32℃/50%)の2条件で21名の青年男性による被験者実験を実施し、両者の結果を比較することで、以下の知見を得た。
・高温条件の方が、各部位の皮膚温が高く、発汗量は有意に多くなった(P<0.01)。また、暑い側、不快側の申告割合が高くなった。
・遂行機能と記憶能力の評価に条件間の差はなかった。長時間の集中の評価ではSection1の後半に高温条件の正答率が有意に低く(P<0.05)、Section2の後半で同様の傾向となった。
以上のとおり、認知機能の測定によって、高温環境時の生理心理量の変化に伴う被験者の作業効率の低下を明らかにした。この結果から、温熱環境が疲労時の作業効率に及ぼす影響を評価することが可能であると考えられる。
今後の課題は、今回の結果を基に、被験者数や疲労条件等について再検討し、温熱環境と疲労、作業効率の関係をより明確にする。

概要 (英文)

The present study aimed to clarify the effect of the thermal environment on work efficiency of the fatigue condition by measuring the cognitive performance. Twenty-one Japanese healthy men participated in the experiment. Subjects were exposed to two thermal conditions (28oC/RH50% and 32oC/RH50%) at different experimental days in a climate chamber. The skin temperature, the amount of sweating, the thermal sensation, and the thermal comfort sensation were also measured as physiological and psychological responses. We examined the effects of thermal environment on working efficiency by measuring the performance of three cognitive tasks.
The skin temperature of the 32oC condition was higher than that of the 28oC condition. And the amount of sweating of the 32oC condition was significantly larger than that of the 28oC condition. The thermal sensation and thermal comfort sensation of the 32oC condition were hotter and more discomfort than those of the 28oC condition, respectively. From the result of the cognitive performance, the task which requires sustained attention was influenced by high temperature.
The present study has illustrated the possibility that it could evaluate the effect of the thermal environment on work efficiency of the fatigue condition by measuring the cognitive performance.

報告書年度

2015

発行年月

2016/05

報告者

担当氏名所属

安岡 絢子

システム技術研究所 需要家システム領域

岩松 俊哉

システム技術研究所 需要家システム領域

宮永 俊之

システム技術研究所 需要家システム領域

都築 和代

産業技術総合研究所 人間情報研究部門

武田 裕司

産業技術総合研究所 自動車ヒューマンファクター研究センター 認知システム研究チーム

キーワード

和文英文
オフィス Office
温熱環境 Thermal Environment
疲労 Fatigue
作業効率 Work Efficiency
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