電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Q20008
タイトル(和文)
経年塗装鉄塔における塗膜劣化診断法の現場適用性の向上(その2) -塗膜劣化評価に及ぼす気温および降雨の影響-
タイトル(英文)
Improved Field Evaluation Method for Degradation of Paint Film on Painted Steel Towers - Effect of Temperature and Rainfall on Evaluating Degradation of Paint Film -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
経年塗装鉄塔において、塗膜劣化は目視により評価されているが、鉄塔の重要度によっては、目視で劣化を評価するよりも早く劣化の兆候を評価できる手法を提供できることが望ましい。当所では、交流インピーダンス測定法による塗膜劣化評価手法の検討を進めてきた。さらに、屋外の実鉄塔の現場で適用するため、軽量な可搬性汎用機を用いたインピーダンスZによる塗膜劣化評価を提案し、測定手法の改良を行った。しかし、環境が制御されていない屋外では、塗膜表面に治具(電極)を取り付けて行う測定に誤差が生じる懸念があるため、環境条件(気温や降雨)の影響を把握して、塗膜劣化評価の信頼性を向上させる必要がある。
目 的
塗膜劣化診断法の現場適用性向上のため、塗膜劣化評価に及ぼす気温や降雨の影響を明らかにする。また、得られた結果より、現場測定に向けた適用条件を示す。
主な成果
1. 塗膜劣化評価に及ぼす気温の影響
夏季(気温30~35 ℃)に屋外で測定した塗装試験板の表面温度を参考に、恒温槽内(45, 65, 75 ℃)で塗装試験片のインピーダンス測定を行った(図1)。表面温度45 ℃では、塗装鋼板と治具とのすき間の有無に関わらず、測定初期の1 kHzでのインピーダンス Z1kHzは10時間以上維持され、温度の影響を受けずに測定が可能であった。表面温度65 ℃以上において、すき間がある場合は、Z1kHzが数時間で測定初期よりも1桁以上高くなり、すき間を通じて電解液が蒸発して有効電極面積が減少したと考えられる(図2)。一方、すき間がない場合には、測定初期のZ1kHzは10時間以上維持されたことから、気温の高い夏季に塗膜劣化評価を行う際は、塗装鋼板と治具とのすき間がないように設計された治具を適用することが必要である。
2. 塗膜劣化評価に及ぼす降雨の影響
屋外で雨の日と雨の翌日以降にZ1kHzを測定した結果、雨の日に塗膜が含水した状態では、翌日以降の乾燥時よりもわずかにZ1kHzは低くなったが、塗膜劣化判断に影響を及ぼす有意な差ではなかった(図3)。また、恒温恒湿槽内(15 ℃)において、塗装試験片の純水浸漬(塗膜へ含水)後に、塗装表面の付着水分を除去した条件や少ない条件では、多い条件と比べて湿潤時(95 %)と乾燥時(35 %)のZ1kHzの差が少なかった(図4)。
したがって、本試験の塗装仕様においては、治具周辺の付着水分を除去すれば降雨後にも信頼性の高い測定が可能であることが明らかとなった。
概要 (英文)
The degradation of paint film on steel towers has been investigated using an AC impedance technique. The reliability of measurements used to evaluate the degradation of paint film on outdoor steel towers must be improved. Accordingly, the effect of the outdoor environment (temperature and rainfall) on evaluating the degradation of paint film was investigated. In an environment simulating a sunny area in summer, impedance at 1 kHz Z1kHz of painted steel was higher than the initial value within a few hours due to electrolyte evaporating from a gap between the painted steel and the jig on the high surface temperature of the painted steel. Thus, the jig attached to a painted steel surface without gaps needs to be used for impedance measurement. Furthermore, Z1kHz of painted steel on a rainy day was slightly lower than that in a dry environment. The difference in Z1kHz between wet and dry environment with little attached moisture and without moisture on the surface was smaller than that with much attached moisture around the jig on the surface. It is revealed that measurements can be reliably performed after raining by removing moisture from the surface of the painted steel.
報告書年度
2020
発行年月
2021/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
前田 真利 |
材料科学研究所 電気化学領域 |
共 |
安本 憲司 |
企画グループ |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
塗装鉄塔 | Painted steel tower |
塗膜劣化 | Degradation of paint film |
交流インピーダンス法 | AC impedance technique |
インピーダンス | Impedance |
水膜 | Water film |