電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Q20006

タイトル(和文)

ミニチュアC(T)試験片を用いた上部棚破壊靭性の評価 ―塑性拘束の評価および寸法効果補正手法の提案―

タイトル(英文)

Upper-Shelf Fracture Toughness Evaluation using Miniature C(T) Specimen -Plastic Constraint Evaluation and Proposal of Specimen Size Effect Correction Method-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
原子炉の運転期間延長に伴う追加の監視試験(注1)要求を満たすため、1回の監視試験で消費される試験片数を減らして監視試験を実施できる回数を増やしつつより合理的に評価する方策が求められている。上部棚温度域(注2)での健全性評価において、シャルピー衝撃試験(注3)に代えて破壊靭性試験(注4)を実施すれば、直接的かつ保守性を低減した評価が可能となる。ここで使用する破壊靭性試験片として、1個のシャルピー衝撃試験片から新たに8個製作できる板厚4 mmのミニチュアC(T)試験片(Mini-C(T)試験片)を用いれば、試験済みのシャルピー衝撃試験片を活用して上部棚破壊靭性を実測できる。しかし既報[1]にて、Mini-C(T)試験片程に小さな寸法では上部棚破壊靭性の測定値における試験片寸法依存性が無視できない可能性が示されており、その原因を把握するとともに、これを適切に補正する手法の開発が望まれる。
目  的
国産圧力容器鋼SQV2Aを対象とし、大きさの異なるMini-C(T)、0.5T-C(T)(板厚12.7 mm)、1T-C(T) (板厚25.4 mm)試験片で延性亀裂進展試験(注5)を実施することで上部棚破壊靭性の寸法依存性を明らかにする。また、有限要素法による弾塑性変形解析を行い、試験中の亀裂先端の塑性拘束の変化を推定することで、塑性拘束の影響を明らかにするとともに、試験片寸法の影響を受けにくいJ積分(注6)評価式を検討する。
主な成果
1. 亀裂進展抵抗曲線に及ぼす試験片寸法の影響
亀裂進展抵抗曲線の試験片寸法依存性は試験規格(ASTM E1820(注5))の有効範囲内では見られなかったが、有効範囲を超えた領域では顕在化した(図1)。1T-C(T)試験片に比べ0.5T-C(T)試験片、さらにはMini-C(T)試験片の亀裂進展抵抗(J積分)は低くなった。
2. 亀裂先端の塑性拘束の定量的評価
 図2に示すように試験中のMini-C(T)試験片の正規化した荷重レベルは0.5T-C(T)試験片や1T-C(T)試験片のものに比べて高く、それに伴って亀裂先端の塑性拘束の度合いを表すパラメータQ(注7)が低下した。一般に拘束が低下すると破壊靭性は逆に増加するため、Mini-C(T)試験片の寸法効果の原因は塑性拘束の変化ではないことが確認された。
3. 試験片寸法依存性の小さいJ積分評価式の提案
 ASTM E1820に規定される塑性J積分評価式には、亀裂進展量が大きくないことを前提に亀裂進展に伴いJ積分を補正する項が含まれており、この項が有効範囲を超えた領域で試験片寸法依存性をもたらす要因と推定された。そこで亀裂進展量に制限のないクリープJ積分(注8)と同様に微分形で亀裂進展を表す考えに基づいてこの項を省略した代替式(図3左)を用いる手法を考案した。本手法によりASTM E1820の有効範囲を超える領域で試験片寸法依存性が大幅に低減した亀裂進展抵抗曲線が得られた(図3右)。

概要 (英文)

To meet the additional surveillance test requirements connected to the long term operation of the reactor, the use of a miniature compact tension (Mini-C(T)) specimen with a thickness of 4 mm is expected to constitute one of the promising solutions to reduce the consumption of a limited amount of surveillance specimens. The objective of this study is to investigate the specimen size effect on the upper-shelf fracture toughness evaluation and propose a method to eliminate this effect for allowing the use of Mini-C(T) specimen in the surveillance test. Ductile crack growth tests have been performed on Mini-C(T), 0.5T-C(T), and 1T-C(T) specimens made of a Japanese pressure vessel steel SQV2A. Consequently, the crack growth resistance (in J-integral) of the Mini-C(T) specimen became lower than that of larger specimens, particularly in the region beyond the valid range determined by ASTM E1820. The evaluation of a plastic constraint parameter Q clarified that the plastic constraint at the crack tip in the Mini-C(T) specimen during the test was lower than that of the 0.5T-C(T) and 1T-C(T) specimens due to larger plastic deformation. However, the lower plastic constraint does not explain the smaller crack growth resistance in the Mini-C(T) specimen. On the other hand, the crack growth correction term included in the plastic J-integral evaluation formula given in ASTM E1820 is likely to be a major cause of the specimen size dependency. Finally, based on the concept of creep J-integral evaluation, a modified J-integral evaluation formula was derived to eliminate the specimen size effect. It has been demonstrated that the crack growth resistance curve obtained by the Mini-C(T) specimen became nearly identical to that obtained by the 1T-C(T) specimen by using this formula.

報告書年度

2020

発行年月

2021/04

報告者

担当氏名所属

信耕 友樹

材料科学研究所 構造材料領域

山本 真人

材料科学研究所 構造材料領域

高橋 由紀夫

材料科学研究所

キーワード

和文英文
監視試験 Surveillance program
上部棚破壊靭性 Upper-shelf fracture toughness
原子炉圧力容器鋼 Reactor pressure vessel steel
ミニチュアC(T)試験片 Miniature C(T) specimen
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