電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Q20005
タイトル(和文)
固体高分子形水電解を利用した常圧・高圧水素製造システムの効率検討
タイトル(英文)
Efficiencies of ordinary- and high-pressure hydrogen production system with polymer electrolyte membrane water electrolysis
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
水電解による水素製造には、水素サプライチェーンの形成や再生可能エネルギーの有効活用に加え、電力系統安定化への寄与が期待されている。水電解には材料に貴金属を必要としない特長を有するアルカリ形(AWE:Alkaline Water Electrolysis)と負荷変動適用範囲が広いという利点がある固体高分子形(PEMWE:Polymer Electrolyte Membrane Water Electrolysis)の二つのタイプがある。前者は既に事業段階にあり、当所はこれまでに常圧水素製造システムの効率を報告している[1]。一方後者は現在実証段階にあり、高効率な電気化学ポンプ1)機能を活かして高圧水素を効率的に製造可能とされており期待されている。PEMWEの実適用の可能性を評価するためには、その水素製造システムとしての効率を正しく評価する必要がある。
目 的
PEMWEの常圧でのシステム効率を計算し、AWEのそれと比較する。また、PEMWEについて二つの高圧システムを想定し、それらのシステム効率を比較し、優劣を検討する。
主な成果
1.PEMWEの常圧でのシステム効率
既往研究[1]で用いた、要素毎の熱・物質収支に基づいた計算手法に基づき、設備の規模と放熱を考慮しない条件等の下でPEMWEの常圧でのシステム効率を計算した。その最大値は83%で、AWEの常圧でのシステム効率の最大値と同等であった(図1(a))。PEMWE常圧システムでは効率を維持したまま電流密度を3 A/cm2程度まで高くすることができ(図1(b) )、AWEの常圧システム(効率を維持できる電流密度の上限が約0.5 A/cm2)と比較して、6倍の水素製造能力が期待できるとの試算結果を得た。
2.PEMWEの高圧でのシステム効率
PEMWEの高圧システムとして、常圧水電解し機械式圧縮する方式(機械式システム)、電気化学ポンプで圧縮する方式(差圧式システム)を想定した。これらのシステム効率を上記のシステム計算と条件で試算した水素圧1 MPa(貯蔵タンクを想定)では差圧式システムの効率の方が高く、水素圧20 MPa以上(輸送容器や水素スタンドの蓄圧器等)では機械式システムの効率の方が高かった。
この原因を特定するために、電解および水素圧縮に要するエネルギーを比較した。水素圧縮エネルギーは水素圧によらず機械式と差圧式との差は小さかったが、電解エネルギーは水素圧の増大につれて機械式の変化は小さく、差圧式は増加した。差圧式では高圧化による電解エネルギーの増加が大きく、水素圧の増大に伴いシステム効率が低下することが分かった。
概要 (英文)
It is thought that hydrogen productions by water electrolysis plays an important role to the formation of hydrogen supply chain and effective utilization of renewable energy in hydrogen economy. Two types of water electrolysis are being mainly developed in Japan. One is the alkaline water electrolysis (AWE), and another type is the polymer electrolyte membrane water electrolysis (PEMWE). We already reported the efficiencies of hydrogen production systems by AWE. In the present study, the efficiencies of the ordinary-pressure hydrogen production system with PEMWE were calculated using the highest electrolysis performance, and we discussed its advantages.
When hydrogen gas is stored, it is usually pressurized by a mechanical compressor. It, thus, is necessary to discuss not only the production efficiency but also the pressurization power. Because PEMWE can be operated under pressurized conditions, the pressurized hydrogen gas can be directly obtained from the electrolytic bath. There are three ways of the pressure hydrogen gas production system using PEMWE : (1) The combination system with water electrolysis under ordinary pressure and a mechanical compressor and (2) The system of high differential pressure electrolysis cell with electrochemical hydrogen pump. In the present study, efficiencies of three high-pressure hydrogen production and storage systems with PEMWE are discussed.
報告書年度
2020
発行年月
2021/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
森 昌史 |
材料科学研究所 |
共 |
李 坤朋 |
材料科学研究所 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
固体高分子膜 | Polymer electrolyte membrane |
水電解 | Water electrolysis |
水素製造 | Hydrogen production |
水素貯蔵 | Hydrogen storage |
システム効率 | System efficiency |