電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Q20001
タイトル(和文)
経年塗装鉄塔における塗膜劣化診断法の現場適用性の向上
タイトル(英文)
Improved Field Evaluation Method for Degradation of Paint Film on Painted Steel Towers
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
塗装された鉄塔の塗膜劣化評価は目視で行われているが、より確実な塗膜劣化評価のためには、目視より効率的に広範囲の情報が得られる画像診断に加えて、塗膜を直接診断できる手法を用いることが有効である。当所では、交流インピーダンス測定法に基づく屋外での塗膜劣化評価が可能な安価で軽量な可搬性汎用機を用いてインピーダンスZを指標として、塗膜の劣化を直接評価する手法の開発を進めてきた。従来の手法では、治具(電極)と塗膜を剥離して露出させた素地との間で回路を形成していたが、既報告で、2つの治具間で回路を形成して塗膜を傷つけない手法を報告した。しかし、実構造物で治具間距離を大きくとる必要がある際の影響が不明である。また、塗膜劣化評価は、事前に電解液を2時間かけて浸透させる必要があることなど、実際の鉄塔における現場で使用するには、いくつか課題が残されている。
目 的
可搬性汎用機を用いた塗膜劣化診断法において、塗膜を剥離しない測定手法の適用条件と測定時間短縮に向けた検討を行う。
主な成果
1. 塗膜を剥離しない測定手法の適用条件の検討
2つの治具を塗膜表面に設置してその間のZを測定する手法(図1)において、60 cm以内では治具間の距離に関わらずほぼ同じ結果が得られることを示した(図2)。しかし、可搬性汎用機では治具を2つ使用することで直列インピーダンスが増大し、高いZの際の測定値が研究用の高精度な機器の測定値と乖離する例が確認された(図3)。LCRメータのような可搬性汎用機を現場で使用する際は、高いZの方がより正確に塗膜劣化を評価できるため、高精度な機器と同程度のZ が得られた1 kHz近傍とすることを推奨する。
2. 測定時間短縮に向けた検討
塗替え目安を短時間で判断できるかを検証するために、電解液の浸透時間tとZの関係を調べた(図4)。その結果、Zがtに大きく依存するグループB(塗膜の劣化が進行)とtに依存しないグループA(塗膜が健全)とC(塗膜が不健全)に分かれることがわかった。さらに、電解液を塗膜面に浸透させて10分以上経過するとlogZとt 0.5は直線的な関係となることが明らかとなった。10分以降、たとえば20分を目安として直線近似を得るのに十分な計測値が得られれば、従来判定に用いてきた2時間後浸透後のZを推定することができる。
今後は、異なる仕様の塗装や劣化度合い(特にグループB)の塗膜状態について多くの事例を検証し、測定時間短縮手法を確立する。
概要 (英文)
To estimate the proper time required to repair the paint films utilized for painted steel towers, a method capable of evaluating film degradation objectively at outdoor sites is needed. We have been studying a means of diagnosing deterioration using impedance Z as indicators via an AC impedance technique, using a commercial LCR meter as reported previously, but using it for outdoor sites proved problematic. It emerged that impedance evaluation between jigs could be performed using two jigs for outdoor sites, and the distance between jigs had almost no influence. We also found that by measuring until the time when the inclination can be determined after 10 minutes of jig installation, the result after two hours, which was the standard, can be estimated and the repainting guideline can be assessed.
報告書年度
2020
発行年月
2021/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
安本 憲司 |
企画グループ |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
塗装鉄塔 | Painted steel tower |
交流インピーダンス法 | AC impedance technique |
インピーダンス(Z) | Impedance, Z |
塗膜劣化 | Paint film degradation |
塗り替え | Repainting |