電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Q19010

タイトル(和文)

遠心鋳造ステンレス鋼に対するフェーズドアレイ超音波法の開発-第3報:群速度に基づいた探傷条件の設定-

タイトル(英文)

Development of Phased Array Ultrasonic Techniques for Centrifugally Cast Stainless Steel- Part 3: Calculation of Focal Laws Based on Group Velocity-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
遠心鋳造ステンレス鋼(CCSS)は,加圧水型軽水炉の一次系配管に用いられており,その溶接部は,定期的に超音波探傷試験を実施する対象となっている.しかしながら,柱状晶などの粗大結晶粒による超音波の散乱および減衰,組織の異方性による超音波伝搬経路の屈曲により,CCSSに対する超音波探傷試験(UT)は他の材料に比べて難度が高い.同材料に対するUT技術として,フェーズドアレイ超音波法(PAUT)が有望視されている.既報では位相速度の異方性に基づいたPAUTの遅延時間の計算方法を提案したが,位相速度だけではなく群速度も考慮すれば,より超音波エネルギーを集束させることができ,探傷精度の更なる向上が期待できる.
目  的
群速度と位相速度を用いたPAUTの遅延時間の計算法を開発し,その遅延時間に基づいた探傷結果と位相速度のみを用いた場合の結果を比較する.
主な成果
1. 群速度と位相速度を用いたPAUTの遅延時間の計算法
アレイ探触子から放射された超音波が試験体内において設定方向に伝搬し,設定位置に集束するように,スネルの法則および,群速度と位相速度の方向がなす角度を用いたPAUTの遅延時間の計算法を開発した.柱状晶組織を有するCCSSに対し,開発した方法と位相速度のみを用いた方法でそれぞれ求めた遅延時間を比較した結果,両者間の差の大きさが柱状晶成長方向に依存しており,いずれも等方性と見なした場合と異なることが分かった.
2. 異なる遅延時間による探傷結果の比較
上述の遅延時間をPAUT探傷装置に入力し,柱状晶成長方向が正と負のCCSS試験体に対し,それぞれ探傷を行った.その結果,いずれの遅延時間を用いても欠陥識別性が等方性と見なした場合より優れていた.また,柱状晶成長方向が正のとき,群速度と位相速度を考慮した遅延時間を用いた場合の欠陥識別性が位相速度のみを考慮した遅延時間を用いた場合に比べて向上した.それに対して,柱状晶成長方向が負のとき,両遅延時間による探傷結果において顕著な差異がなかった.これらの結果から,遅延時間などの探傷条件を設定する際,柱状晶成長方向を考慮する必要があることが分かった.
今後の展開
柱状晶成長方向を非破壊的に測定する方法を開発し,CCSSに対する超音波探傷精度をさらに向上させる.

概要 (英文)

Cast stainless steel (CSS) is widely used in nuclear power plants, particularly PWR primary coolant systems. The JSME Fitness-for-Service Code requires periodic in-service inspection of welds in such systems by ultrasonic testing (UT), but anisotropy and heterogeneity of CSS hinder flaw detection and sizing. Phased array ultrasonic technique (PAUT) is considered as the most promising technique to overcome such difficulties. In the previous study, the calculation method of focal laws based on phased velocity was proposed. In this study, we proposed a method to calculate focal laws based on group rather than phased velocity to make PAUT more accurate. Experimental wave propagation and inspection were carried out for group-based and phase velocity-based focal laws, respectively and the results were compared. A comparison shows that the performance in inspection using focal laws based on group velocity depended on crystal orientation and ultrasonic beam. When they have the same inclination, focal laws based on group velocity performed better than those based on phase velocity, but performances for two types of focal laws were equivalent when the inclination is opposite.

報告書年度

2019

発行年月

2020/04

報告者

担当氏名所属

林 山

材料科学研究所 構造材料領域

東海林 一

材料科学研究所 PDセンター

キーワード

和文英文
非破壊検査 Nondestructive Examination
遠心鋳造ステンレス鋼 Centrifugally Cast Stainless Steel
柱状晶 Columnar Crystals
群速度 Group velocity
フォーカルロー Focal Laws
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry