電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Q19006
タイトル(和文)
オーステナイト系ステンレス鋼SUS304のクリープ特性に及ぼす冷間加工の影響 -第1報:クリープ構成式及び破断延性モデルの開発とボイラチューブ曲げ部に対する適用-
タイトル(英文)
Effect of Cold Working on Creep Properties of Type 304 Austenitic Stainless Steel - 1st Report: Development of Creep Constitutive Law and Ductility Model and Their Application to Boiler Tube Bend -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
オーステナイト系ステンレス鋼は、高温域におけるクリープ破断強度や耐食、耐酸化性がフェライト鋼よりも優れていることから、火力発電プラントのボイラチューブをはじめ、様々な機器の構造材料として使用されている。これらの構造材料は、機器の製造やプラントの建設時において冷間加工により塑性ひずみが導入されることが少なくない。塑性ひずみが導入されたオーステナイト系ステンレス鋼のクリープ破断寿命は、高応力条件では延伸されるが、実機のような低応力条件では塑性ひずみが導入されていない材料よりも短くなる可能性がある。曲げ加工部では、引張と圧縮の両方の塑性ひずみが材料に導入された後、熱処理をせずに使用されることがあるため、機器の適切な寿命管理のためには、長時間のクリープ特性に及ぼす引張と圧縮の塑性予ひずみの影響を明らかにし、冷間加工ままの部位に対する寿命評価法を整備する必要がある。
目 的
SUS304鋼を対象に、予め室温で引張及び圧縮の塑性ひずみを導入した材料に対して、クリープ試験を実施し、長時間クリープ特性に及ぼす冷間加工の影響を明らかにする。また、実機の冷間加工ままの部位に対するクリープ損傷評価法を整備する。
主な成果
1. クリープ特性に及ぼす冷間加工の影響の把握
引張及び圧縮予ひずみ材の600℃、高応力でのクリープ破断寿命は、受入まま材に比べ大きく延伸し、予ひずみ量が大きいほど長寿命となった(図1)。10%予ひずみ材について、破断データが得られている範囲では、圧縮予ひずみ材の方が引張予ひずみ材よりも若干短寿命になる傾向がみられた(図1)。高応力域における引張及び圧縮予ひずみ材の最小クリープひずみ速度は受入まま材よりも顕著に小さく、予ひずみ量が大きいほどその傾向が顕著であった(図2)。ただし、低応力域では両者の差が小さくなる傾向がみられた(図2)。クリープ破断延性は、ひずみ速度が小さいほど低下し、また、引張予ひずみ材では予ひずみ量が大きいほど低下する傾向が確認されたが、圧縮予ひずみ材では10%と20%で大きな差はなく、飽和する傾向がみられた(図3)。
2. 冷間加工ままの部位に対するクリープ損傷評価法の検討
上記の実験結果に基づき、最小クリープひずみ速度を応力と塑性予ひずみ量の関数で表現したクリープ構成式について検討した(図2中の線)。また、クリープ破断延性をクリープひずみ速度と塑性予ひずみ量の関数で定式化した(図3中の線)。これらを使用して、ボイラチューブの冷間曲げ加工部に対するクリープ損傷評価を実施した。評価対象部位の応力は70~100MP程度であり、実験データが得られている領域から外挿した領域での評価ではあるが、ボイラチューブ曲げ部では、冷間加工による予ひずみを考慮した場合、考慮しない場合よりもクリープ損傷が大きく加速される結果となった(図4)。
今後の展開
予ひずみ材の長時間クリープデータを取得し、クリープ損傷評価法の精度向上に資する。また、クリープ破断試験片の組織観察や硬さ試験を実施し、金属組織等に基づくクリープ損傷評価について検討する。
概要 (英文)
Creep rupture life of austenitic stainless steel after cold working is extended under high stress conditions but might be shorter than that of unprocessed materials under low stress conditions. Therefore, in order to assess the remaining life of cold worked austenitic stainless steels in high temperature component, it is important to obtain long-term creep rupture data at low stress for pre-strained materials. In this study, creep tests including low stress conditions at 600C were conducted on type 304 stainless steels with tensile and compressive pre-strains in order to clarify the effects of cold working on creep deformation and rupture life. A creep constitutive model was developed as a function of stress and the amount of plastic pre-strain. A creep ductility model was also developed as a function of the creep strain rate and the amount of plastic pre-strain. Using these models, creep damage evaluation was performed on the bended portion of boiler tube. As a result, it was shown that creep damage was greatly accelerated in the bending portion of boiler tube by taking the effect of plastic pre-strain into account.
報告書年度
2019
発行年月
2020/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
茂山 治久 |
材料科学研究所 構造材料領域 |
共 |
高橋 由紀夫 |
材料科学研究所 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
クリープ | Creep |
冷間加工 | Cold working |
オーステナイト系ステンレス鋼 | Austenitic stainless steel |
ボイラチューブ | Boiler tube |
曲げ加工 | Bending |