電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Q18006
タイトル(和文)
亀裂深さ分布の裾野の形状がPFM評価に及ぼす影響
タイトル(英文)
Effect of tail of crack depth distribution on PFM evaluation
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
確率論的破壊力学(PFM)は,破壊の駆動力および破壊抵抗が統計的なばらつきや不確実性を有していると考え,これらを確率分布によりモデル化し確率変数として扱うことで,破壊の発生する頻度を定量的に評価しようとする学問体系である.PFMは従来の決定論的評価と比較して,過度な保守性を排除した合理的な評価が可能であることから,国内外において注目されている.確率分布によりモデル化されるばらつきは物理的な上下限を有しており,分布の裾野のどの位置に上下限を設定するのかが議論されている[1].一方で,確率分布によって裾野の厚さは異なっており,裾野の厚さがPFM評価結果に及ぼす影響についてはこれまで十分に議論されてこなかった.
目 的
PFM評価において確率変数として扱われる初期亀裂深さのばらつきを正規分布や裾野の厚い分布として知られる安定分布でモデル化し,その評価結果への影響を調べる.
主な成果
1. 亀裂深さの実測値のばらつきのモデル化
国内の沸騰水型軽水炉プラントの再循環系配管溶接部において検出された応力腐食割れ(SCC)亀裂の深さ分布を,正規分布または安定分布としてモデル化し(図1, 2),これを初期亀裂深さ分布と仮定してPFMによるSCC亀裂進展評価を実施した.その結果,運転時間0年から30年頃までは,安定分布を用いた結果の方が正規分布を用いた結果と比較して高い亀裂貫通確率で推移していた(図3).これは安定分布の裾野が正規分布のそれと比較して厚く,安定分布の方が深い亀裂が多数サンプリングされたためと考えられる.
2. 亀裂発生を考慮したPFM評価から得られる亀裂深さのばらつきのモデル化
亀裂発生頻度を運転開始から線形に増加し,10年目以降は線形に減少する三角分布でモデル化し,PFM評価を実施して供用期間中に発生・成長した亀裂の深さ分布を調べた.同分布を正規分布または安定分布としてモデル化し(図4),これを初期亀裂深さ分布と仮定してPFM評価を実施した.その結果,上記1の結果と同じく安定分布を用いた結果の方が高い亀裂貫通確率で推移していた(図5).これらから,亀裂深さのばらつきを表す確率分布の裾野の厚さは亀裂貫通確率に大きく影響していると言え,裾野をどのように表すのかがPFM評価を行う上で重要となる.
概要 (英文)
Probabilistic fracture mechanics (PFM) is a promising structural integrity assessment methodology capable of quantitatively evaluating fracture frequency by comparing applied force with material's strength. Inputs for PFM calculation are given as random variables with a median value and certain distribution. Normally the shape of distribution is determined based on the available data source, whose number of data points are not necessarily sufficient to ensure the distribution in the tail region. It is known that different kinds of distributions, normal, log-normal and exponential for example, will give different shaped tails, and possibly affect the failure probability in a low probability region, which is important in PFM evaluation. For instance, stable distribution with a shape parameter of less than 2 is a "fat tail," in which the probability of failure in the tail region exceeds that in normal distribution. The effect of the tail on the through-wall cracking probability was investigated between two types of distributions; normal or stable. Although both distributions showed a fairly good match with the actual crack depth data, the resulting probabilities differed, and we obtained a higher probability with the fat tail (stable distribution). This result simply indicates that the rare sampling of deep flaws still impacts on the probability of failure in a marked manner.
報告書年度
2018
発行年月
2019/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
永井 政貴 |
材料科学研究所 構造材料領域 |
共 |
三浦 直樹 |
材料科学研究所 |
共 |
山本 真人 |
材料科学研究所 構造材料領域 |
共 |
野本 明義 |
材料科学研究所 構造材料領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
確率論的破壊力学 | Probabilistic Fracture Mechanics |
構造健全性評価 | Structural Integrity Assessment |
裾野の厚い分布 | Fat Tailed Distribution |
安定分布 | Stable Distribution |
応力腐食割れ | Stress Corrosion Cracking |