電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Q18005

タイトル(和文)

海外水素調達時の水素キャリア候補の比較(2018年度調査)

タイトル(英文)

Comparison of the feasibility of various hydrogen carriers transported from overseas for massive quantity and long distances(FY2018)

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
2017年12月に閣議決定された「水素基本戦略」注1)では、水素を“我が国の一次エネルギー構造を多様化させ大幅な低炭素化を実現する手段”と位置づけ、2050年を視野に入れた大きな方向性やビジョンとともに、2030年までの行動計画が示された。水素の供給、輸送/貯蔵、利用を結ぶ水素チェーンのグローバルな枠組みとして、海外の一次エネルギーを利用し、大型船舶により長距離・大量輸送し、国内での火力発電用燃料に利用する構想がある。この水素調達量として、2030年には年間30万t(1GW発電相当)が目標値として掲げられている。水素は長距離輸送・大量貯蔵する上で、重量密度は高いが体積密度に劣る欠点があり、そのため多くの水素キャリアが提案されている。大量に安定して安価に調達することが不可欠な火力発電用燃料に利用する場合の課題を、水素キャリア毎に抽出し、混焼発電利用など早期実用化の可能性を明らかにする必要がある。
目 的
現在、実証または事業検討の段階にある水素キャリアについて、火力発電用燃料として海外調達水素を利用するケースを総合的に比較し、早期実用化の可能性を評価する。
主な成果
対象水素キャリアは、液化水素(LH2)、メチルシクロヘキサン(MCH)、アンモニア(g-NH3注2))、メタン(g-CH4注2))とした。既往研究論文、調査報告を整理・分析し、考察を加え、輸送効率(体積・重量水素密度)、水素エネルギー利用割合注3)、経済性、取扱い容易性(輸送・貯蔵性)、既存インフラ技術利用の評価項目により、各水素キャリア間の優劣を比較・評価した(表1)。
1.水素チェーン実証事業注4)が先行するLH2およびMCHの課題と早期実用化可能性
LH2は、液化、輸送・貯蔵、荷役などの技術開発と大規模化のための新規インフラ整備が必要である。調達元で液化の投入エネルギーは大きいが、利用時にエネルギー投入不要のためポテンシャルは高く、長期的視点では最有力候補である。
MCHは脱水素が必須で、利用時にエネルギー投入が不可欠なため、水素エネルギー利用割合が低下する。しかし400℃程度の排熱が利用できる場合には、取扱い容易性や既存インフラ技術が利用できるため、条件付きで早期実用化の可能性がある。
2.g-NH3の課題と早期実用化可能性
各水素キャリアともに他の水素キャリアを凌駕する高優位性の評価項目があるが、総合的にg-NH3のバランスが良く、早期実用化の可能性が高い。この結果は火力発電で混焼可能との前提があり、直接燃焼による水素への再変換効率低下回避、現状の流通から既存インフラ技術の利用可能が主な判断根拠である。但し、直接燃焼時には水素に比べ利用エネルギーは減少することに留意が必要である。また、調達元での水素からアンモニア製造時の効率向上と直接燃焼時のNOx低減の技術開発が必要である。
3.g-CH4の課題と早期実用化可能性
g-CH4の合成には原料としてCO2が必要である。CO2の調達元での入手と利用(発電)後のCO2回収、固定化は本質的な課題である。バイオマス起源などカーボンニュートラルCO2の調達または、CO2再利用による排出クレジット低減制度などが確立できれば、天然ガス火力の既存インフラが利用できるため、早期実用化の可能性は高い。

概要 (英文)

The feasibility of four promising hydrogen carrier candidates of liquefied hydrogen (LH2), methylcyclohexane (MCH), green ammonia (g-NH3) and green methane (g-CH4) were evaluated and are expected to be used as energy carriers for massive quantity and long distances from overseas. The hydrogen densities, effective hydrogen application ratio, economy, pumpability / storability and infrastructure were indicated from the perspective of determining the potential for earlier introduction as the thermal power plant fuel. Consequently, g-NH3 is totally a progressive candidate for the reason with no real drawbacks, while LH2 has considerable potential and is the subsequent candidate if the requirement imposed by the new facilities is met. MCH, which is treated as a liquid with wide ranging temperature, is limited for the applied condition to be indispensable at a temperature of about 400C for de-hydrogenation. g-CH4 is necessary for carbon neutral CO2 to synthesize or for post-consumption recovery (generation) of CO2.

報告書年度

2018

発行年月

2019/04

報告者

担当氏名所属

竹井 勝仁

材料科学研究所

山本 博巳

エネルギーイノベーション創発センター テクノロジープロモーションユニット

森 昌史

材料科学研究所

永田 豊

エネルギーイノベーション創発センター カスタマーサービスユニット

市川 和芳

企画グループ

西 美奈

エネルギー技術研究所 エネルギープラットフォーム創生領域

池川 洋二郎

地球工学研究所 地圏科学領域

西田 啓之

エネルギー技術研究所 次世代火力発電領域

泰中 一樹

エネルギー技術研究所 エネルギープラットフォーム創生領域

キーワード

和文英文
水素キャリア Hydrogen Carrier
液化水素 Liquefied Hydrogen
メチルシクロヘキサン Methylcyclohexane
アンモニア Ammonia
メタン Methane
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry