電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Q11020
タイトル(和文)
全固体型リチウムイオン電池の開発(VII)-正極のサイクル特性改善に向けた劣化要因の特定と改良-
タイトル(英文)
Research and Development of all solid-state lithium batteries (VII)- Identification of degradation factors for and improvement in charge-discharge cycling performance of cathode capacity-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
高分子固体電解質(SPE)は揮発性成分を含まないため、SPEを用いた全固体型リチウムイオン電池は高い安全性を有する。そのため電力貯蔵用蓄電池として期待されている。この電池をMWh級蓄電池として用いる場合、求められる電池寿命(サイクル特性)は約10年程度となる。当所で開発しているリチウムイオン電池のサイクル特性は目標値まで遠く及ばず、そのサイクル特性の改善が必要である。リチウムイオン電池には正極に酸化物、負極にグラファイトを用いているため、正負極個別にその劣化因子を見出し、それらの因子を減らすことが求められる。正極を用いたセルでのサイクル特性は、概ね1000サイクル程度となり、更なるサイクル特性の改善が必要である。本報告書では、容量低下因子を特定し、その影響を抑制することで正極セルのサイクル特性の改善を試みた。劣化したセルを解体して、形態観察、元素分析を行った。これまでリチウム塩として二種類のリチウム塩LiN(SO2CF3)2(LiTFSA)、LiBF4を使用してきた。LiTFSAが充放電によって電極剥離に影響を及ぼしていることがわかった。そこで、LiBF4のみで作製したセルを用いると、100サイクルあたりで容量が急激に低下した。これは負極界面でのデンドライト(樹脂状)リチウムの成長によって、セルが短絡したためと考えられる。そこで、負極界面でSPEと金属リチウムとの接合性を高め、金属リチウムが均一に析出できるように工夫すると、デンドライトリチウムの偏析を抑制することができた。そのため、LiBF4のみを用いたセルで、1500サイクルまで充放電可能となった。またこのセルを解体し、FTIRとH-NMR分析を行った。高分子の主鎖であるCH-O結合の一部が切断され、アルデヒド基を有していることが推定された。セルの劣化因子の一つとして、SPEの酸化分解が挙げられる。一方同じ正極を用い有機電解液を使用して充放電試験を行った結果、SPEを用いたセルの充放電サイクル特性とほぼ同程度の特性を示したことから、SPEが容量低下を加速させていることはなく、あくまで有機電解液と同様な劣化傾向を示した。
概要 (英文)
Solid polymer electrolyte (SPE) can make lithium-ion battery to improve the safety because the SPE hasn't the volatile components. The battery for stationary power storage is required for about a decade year of battery life. The capacity cycling performance of our battery with the SPE must be improved to decrease the degradation factors. Previously, lithium salts, LiBF4 and LiTFSA were used for both polymers, for which was used to help lithium-ion to conduct in the electrode, and for which was used to separate between cathode and anode. SEM images and EDX analysis show that both lithium salts were mixed in the electrode after charge-discharge. In this study, both lithium salts were used for the latter polymer each other. The discharge capacity decreased gradually using LiTFSA, while its capacity dropped drastically around 100 cycle using LiBF4. The reason why the capacity dropped using LiBF4 was considered to be the rough contact at the anode interface. The cell improved interfacial contact by the non-cross linkable polymer shows the more excellent discharge capacity cycling performance. The degradation factor for the capacity cycling performance was estimated by FTIR and H-NMR analysis. The Oxidative decomposition of polymer was found to be one of degradation factor for the cycling performance in the cell.
報告書年度
2011
発行年月
2012/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
小林 剛 |
材料科学研究所 エネルギー変換・貯蔵材料領域 |
共 |
庄野 久実 |
材料科学研究所 エネルギー変換・貯蔵材料領域 |
共 |
田渕 雅人 |
材料科学研究所 エネルギー変換・貯蔵材料領域 |
共 |
小林 陽 |
材料科学研究所 エネルギー変換・貯蔵材料領域 |
共 |
宮代 一 |
材料科学研究所 エネルギー変換・貯蔵材料領域 |
協 |
大野 泰孝 |
株式会社 電力テクノシステムズ |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
全固体型電池 | All solid-state battery |
高分子固体電解質 | Solid polymer electrolyte |
充放電サイクル特性 | Charge-discharge cycling performance |
劣化 | Degradation |
酸化分解 | Oxidative dissolution |