電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
O20010
タイトル(和文)
2008年岩手・宮城内陸地震時のKiK-net一関西の基盤入射波に及ぼす深部地盤の影響
タイトル(英文)
Effects of deep subsurface velocity structure on the incident seismic wave at KiK-net Ichinoseki-Nishi during the 2008 Iwate-Miyagi Nairiku earthquake, Japan
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2、深さ8 km)では、震源近傍のKiK-net一関西観測点(IWTH25)の地表で最大加速度4022 cm/s/s(三成分合成値)を観測した。この大加速度記録の要因については、表層地盤や観測小屋の影響が指摘されている。一方、地中260 mの岩盤内観測点(Vs=1.81 km/s)においても1000 cm/s/sを超える強震動が記録された。その要因については、震源が浅いことのほか、サイト周辺の地盤構造の影響が考えられるが、詳細な検討がなされていない。内陸地殻内地震における震源近傍の基盤地震動を評価・予測するうえで、震源特性のみならず地盤構造が基盤入射波に及ぼす影響を評価することは重要な課題である。
目 的
KiK-net一関西観測点(IWTH25)地中観測記録の分析と物理探査による詳細な地盤モデル化およびシミュレーションにより、2008年岩手・宮城内陸地震時の基盤入射波に及ぼす深部地盤の影響を評価する。
主な成果
1. IWTH25地中および周辺の岩盤観測記録の分析
本震時のIWTH25地中記録の加速度応答は、10Hz以上の高周波数帯域で振幅が大きい。震源近傍の2つのダム岩盤地点に対するIWTH25地中の本震のスペクトル比は、ともに10 Hz以上の高周波数帯域で振幅が全体的に大きくなる傾向が見られた。地点が異なる岩盤地点に対して共通に見られることから、この傾向はIWTH25地中記録の特徴と考えられる。
2. 物理探査に基づく2次元地盤モデルの構築
IWTH25の深部地盤構造を把握するために、東西方向約4 kmの反射法・屈折法地震探査を実施した。深さ4 kmまでの速度については、反射面と震源分布との対応、および近傍における既往の長い測線での反射・屈折法地震探査結果と整合するように決定した。深さ約1 kmまでの速度構造は、屈折法の波形インバージョン解析により高精度な結果が得られ、IWTH25検層データに見られる高速度の中間層をモデル化できた。
3. 2次元解析による深部地盤の影響評価
構築したモデルでIWTH25地中地震計位置における基盤入射波に着目した2次元解析を実施した。その結果、地震基盤相当層(Vp=6 km/s)における入力波に対するIWTH25地中地震計位置における基盤入射波の倍率は、10 Hz以上の高周波数帯域において、1次元速度構造で1.5倍、2次元速度構造で1.7~1.8倍と評価された。
以上の結果から、IWTH25地中記録の大加速度の要因の一つとして、本震記録で顕著に増幅している10 Hz以上において、深部地盤の不整形性が影響を及ぼしている可能性が明らかとなった。
今後の展開
3次元地下構造のモデル化とそれに基づくグリーン関数による震源モデルの高精度化によりIWTH25地中本震記録の説明性向上を図る。
概要 (英文)
During the 2008 Iwate-Miyagi Nairiku Earthquake (M7.2), the acceleration of 4022 cm/s/s was observed at the surface and 1078 cm/s/s at the borehole (GL-260 m) of the KiK-net Ichinoseki-Nishi station (IWTH25) near the epicenter. We modeled 2D subsurface velocity structure based on the geophysical surveys at and around IWTH25 and estimated the effects of irregular subsurface velocity structure on the IWTH25 borehole station by using the finite-difference method. From the 2D simulation, it was found that the upward wave was amplified by a factor of 1.5 relative to the input motion, while the downward wave was complicated by the high-velocity zone and the heterogeneity of the medium in the shallow part. The snapshots of the upward seismic wavefield showed that the wavefront bending occurred at an abrupt change in the eastward tilt of the layer boundaries at depths below the IWTH25 borehole site, and that the arrival time was accelerated and the amplitude was amplified relative to the 1D analysis. The Fourier spectral ratios of the upward wave to the incident wave showed that the amplification was about 1.5 times for the 1D velocity structure and 1.7 to 1.8 times for the 2D velocity structure in the high-frequency band above 10Hz.
報告書年度
2020
発行年月
2021/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
東 貞成 |
原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム |
共 |
佐藤 浩章 |
原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム |
共 |
芝 良昭 |
原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
2008年岩手・宮城内陸地震 | The 2008 Iwate-Miyagi Nairiku earthquake |
物理探査 | Geophysical survey |
深部地盤 | Deep subsurface velocity structure |
基盤入射波 | Incident seismic wave |
地震動シミュレーション | Seismic simulation |