電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
O20009
タイトル(和文)
原子力施設における電源設備への高エネルギーアーク故障(HEAF)による熱的影響評価
タイトル(英文)
Evaluation of Thermal Impact of High Energy Arcing Fault (HEAF) on Power Supply Equipment in Nuclear Facilities
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
原子力規制委員会は、保安電源設備の信頼性を向上させる観点から、2017年7月に高エネルギーアーク故障(HEAF)に係る電気盤の設計に関する審査ガイド注)を定め、HEAF火災による電気盤の損壊防止を求めている。HEAF火災シナリオは、過渡事象(筐体や電装部品の破片の飛散を伴うアーク放電による短時間エネルギー放出)と火災事象(HEAF発生後の火災による熱荷重)の2つの事象で構成されるが、HEAF火災発生防止や周辺機器への影響範囲の評価例は少なく、知見の拡充が急務である。
目 的
高・低圧の電気盤や高圧バスダクトを用いた内部アーク試験に基づき、HEAF火災発生防止評価手法や熱的影響範囲(ZOI)の推定手法を確立する。
主な成果
実規模大の高・低圧電気盤や相非分割高圧母線用バスダクト内でアーク放電を発生させる内部アーク試験や、大気環境下で発生させたアーク放電による高温ガスをケーブルに暴露する気中アーク試験[4]を実施し、以下の成果を得た。
1. 高・低圧電気盤のHEAF火災の解明
(1) HEAF火災に至らないアークエネルギーのしきい値の提案
HEAF火災に至る条件はアーク放電時に放出されるエネルギーEarcに依存し、電気盤のタイプや電気盤へのディーゼル発電機(DG)の接続の有無などの電力の供給条件の違いにより、そのしきい値が異なることを明らかにした。
(2) HEAF火災発生防止評価手法の確立
火災に至らないアーク継続時間を、Earcのしきい値と設備形態で決まるアーク電圧やアークが発生した場合の短絡電流から推定する式を求めた。この式に基づいて適切な電源設備の保護協調設計を行うことでHEAF火災の発生防止が可能となる。
2. アーク放電による高温ガス塊に対する瞬時熱エネルギー評価式の提案
大気環境下で発生させたアーク放電による高温ガスの発生形態から、これら高温ガス塊を球状と仮定し、アーク源からの評価点までの離隔距離Earcを用いて、評価点を通過する瞬間的な最大熱エネルギー量(瞬時熱エネルギー量)の推定式を提案した。さらに、電気盤から放出される高温ガス塊に対しても推定式が適用できる見通しを得た。
3. 相非分離高圧バスダクトにおけるZOI(熱的影響範囲)の提案
アーク放電時に発生する溶融金属について、高速度カメラによる画像分析や周辺飛散量の分析を行い、ZOIを頂角30°の円錐状でモデル化できることを明らかにした。さらに、ケーブルの損傷しきい値Edamageを用いて、ZOI設定距離の評価式を提案した。
概要 (英文)
In July 2017, the Nuclear Regulatory Authority in Japan issued a review guide on the design of electrical cabinets subjected to the high energy arcing fault (HEAF) to improve further reliability of the emergency power supplying systems. It is necessary to expand knowledge on the prevention of HEAF fire and the corresponding ZOI (zone of influence) for the surrounding equipment. In response, CRIEPI performed the internal arc tests using a full-scale high-voltage and low-voltage electrical cabinets and a segmented high-voltage bus duct. Based on the test results, the HEAF fire prevention evaluation method was established by clarifying that the threshold value of the arc energy leading to a HEAF fire depends on power supply conditions, such as the type of electric cabinet and whether or not a diesel generator is connected to the electrical cabinet. Furthermore, CRIEPI conducted the atmospheric arc tests in which a high-temperature gas generated by an arc discharge generated in an atmospheric environment was exposed to the fire retardant cable specimen, and proposed the evaluation formula on the damage criteria of the cable subjected to the hot arc ejecta. Finally, CRIEPI executed the internal arc tests using a full-scale high-voltage bus duct and proposed the corresponding ZOI subjected to the HEAF using the cable damage criteria.
報告書年度
2020
発行年月
2021/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
白井 孝治 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
宮城 吏 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
岩田 幹正 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
田坂 光司 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
池 正熏 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
長田 泰典 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
佐多 大地 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
高エネルギーアーク故障 | High Energy Arcing Fault |
電源設備 | Power Supply Equipment |
内部アーク試験 | Internal Arc Test |
影響範囲 | Zone of Influence |
HEAF火災 | HEAF Fire |