電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

O20007

タイトル(和文)

液状化強度の空間的なばらつきが砂地盤の地震時挙動に及ぼす影響

タイトル(英文)

Effects of spatial variation in liquefaction strength on behavior of sand ground during earthquake

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 近年、原子力発電所の耐震性検討において、地盤の液状化の影響を考慮した数値解析により、構造物の安定性評価を実施するケースが増加している。耐震安全性を高める上では、地盤物性(特に、液状化強度)のばらつきとその保守性を適切に考慮する必要があるが、液状化強度試験の数量は限られることから、液状化強度の下限値を用いた評価が行われる場合もある。しかしながら、液状化強度の下限値を用いた数値解析が合理的な評価である保証はない。したがって、液状化の影響を考慮した数値解析を行う場合の、合理的なパラメータ設定の確立が望まれている。

目  的
 局所的に小さな液状化強度を有する地盤模型を用いた遠心力模型実験を行い、液状化強度のばらつきが地震時の地盤挙動に及ぼす影響を把握する。また、実験結果の再現性の観点から、数値解析における合理的なパラメータ設定の方針を提示する。

主な成果
(1) 局所的に小さな液状化強度を有する地盤模型の遠心力模型実験
 細粒分の少ない砂を用いて、Case 1(相対密度Dr103%の均質地盤模型)、Case 2(Case 1に対してDr70%を部分的に約2割混在)の2種類の地盤模型を作製し、遠心加速度50G場で同程度の入力波を与えた振動実験を実施した。その結果、Case 2の方が加振中の過剰間隙水圧の上昇がやや早く、また加振後の水圧消散は遅い傾向が認められたものの、Dr70%を約2割混在しても全体的な地盤挙動に与える影響は限定的であった。
(2) 遠心力模型実験Case 2の再現解析
 液状化強度を参照して、C1~C4の4通りの条件を設定した(C1: Dr103%の平均値、C2: Dr103%と70%の混在割合に基づく加重平均値、C3: Dr70%の平均値、C4: Dr70%の下限値)。数値解析の結果、C1とC2は実験結果を良好に再現できた。一方、C3とC4は過剰間隙水圧の上昇が実験より早く、加速度振幅と地表面の水平変位振幅は実験よりも過小評価となった。これはDr70%の物性ではサイクリックモビリティが再現できないことに加え、地盤深部から激しく液状化したことにより、上部に伝わる応答が減衰したためと推測された。以上より、局所的な弱部のみに着目した設定は必ずしも合理的な評価になっておらず、全体を占める割合の大きな物性に重点をおいた設定が合理的と考えられる。

今後の展開
 今後は構造物影響の観点から、合理的かつ設計上必要な保守性を含む地盤物性設定に関して検討を行う。

概要 (英文)

In recent years, it has become necessary to consider the spatial variations in physical properties of the ground as well as their conservativeness when evaluating the stability of the ground from the standpoint of the influence of liquefaction. Evaluations employing the lower limit values of liquefaction strength may be performed, but these are not always rational.
In this study, to confirm the effects of spatial variation in liquefaction strength on the ground behavior during earthquakes, centrifugal model tests were conducted using sand ground models with varying relative densities of sand. Moreover, numerical simulations of the centrifugal model test were run using four types of input parameters based on the variations in liquefaction strength. Subsequently, the results of each numerical analysis were compared with the model test results; the analyses employing the parameters based on the lower limit values of liquefaction strength were found to underestimate the accelerations and displacements of the model test. On the contrary, the analyses employing parameters that emphasize the ground physical properties, which account for a large proportion of the sand ground model, were able to reproduce the model test results.

報告書年度

2020

発行年月

2021/04

報告者

担当氏名所属

石丸 真

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

沢津橋 雅裕

地球工学研究所 地震工学領域

キーワード

和文英文
液状化 Liquefaction
地盤物性 Ground physical property
ばらつき Variation
遠心力模型実験 Centrifugal model test
有効応力解析 Effective stress analysis
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