電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
O20005
タイトル(和文)
InSAR解析に基づく地震時地殻変動の検出 -2018年花蓮地震(台湾)の事例-
タイトル(英文)
Detection of crustal deformation during earthquakes based on InSAR analysis - A case of the 2018 Hualien earthquake, Taiwan-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
断層活動性評価手法の高精度化・合理化に向けて,地表地震断層の性状や既知の活断層との位置関係を明らかにすることは重要である.近年では,合成開口レーダーの差分干渉(InSAR)解析技術の発達により,地震時の地殻変動や地表地震断層の分布を広域かつ面的に把握することが可能となった.日本ではPALSAR-2注1)が,欧州ではSentinel-1注2)が主に用いられているが,同一の地震に対する両者の解析結果を比較した事例は少ない.また,得られた地震時の地殻変動と長期的な変動との関係を検討した例もほとんどないため,今後,地震などの災害時にInSAR解析を活用していくにあたり,これらの留意点を整理する必要がある.
目 的
2018年花蓮地震注3)を例に,地震に伴う地殻変動と地震断層および長期変動との関係を明らかにする.また,変位量の既知現地計測結果を基に,異なる2種類の衛星データを用いた解析結果の比較を通じて,InSAR利用上の注意点を整理する.
主な成果
1.得られた地殻変動と地震断層および長期変動の関係
当所でInSAR解析が実施できる設備を整え,花蓮地震に伴う地殻変動解析を行った.その結果,既往研究と調和的な台地の隆起とMeilun断層に沿った変位の不連続線が示された一方で,長期的な変動傾向とは異なる結果も得られた(図1).これは,同地域において,2018年地震とは異なる震源断層の活動様式が存在することを示唆する.
2.InSAR利用上の注意
InSAR解析結果と既往研究による現地計測結果を比較したところ,Meilun断層に沿った変位量は既往研究によって現地で計測されたものよりも小さく(図2),これは断層を挟む海側の地盤全域に変動が及ぶことに由来するアンラップ注4)エラーが原因と考えられる.半島や海に面する地域でInSAR解析を適用する際は上記の点に留意する必要がある.ただし,現地計測では局所的な変位の計測による過大評価の可能性があるため,より広域的な変動を把握する上ではInSAR解析が有利である.
今後の展開
南北方向の水平変位を捉えることができないInSAR解析の課題を埋める手法(ピクセルマッチング注5))を併用することで,地震時の三次元地殻変動を正確に表現することを可能とする.
概要 (英文)
In February 2018, an M6.4 earthquake occurred near the Hualien area (Meilun tableland) on the east coast of Taiwan, and surface ruptures appeared along the active Meilun fault. We conducted InSAR analysis using images acquired by two different satellites, PALSAR-2 and Sentinel-1, and compared the results of each analysis. We also compared the results of InSAR analysis with the actual surface ruptures along the Meilun fault measured by previous studies. The InSAR results of both satellites reveal fault displacement along the Meilun fault and areal uplift of the Meilun tableland caused by the 2018 earthquake, but there is a slight difference in the range of variation and the absolute value of displacement between the two results. The InSAR results of both satellites underestimated the displacement along the fault compared to the field measurements. In addition, the east coast of Taiwan, including the Hualien area, may have been repeatedly uplifted by two different types of earthquakes. InSAR analysis is an effective tool for understanding the location of surface ruptures and crustal deformation, but it is important to compare the results of each satellite analysis with those of field surveys in order to obtain an accurate understanding of coseismic crustal deformation.
報告書年度
2020
発行年月
2021/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
小村 慶太朗 |
原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム |
共 |
杉本惇 |
株式会社パスコ 衛星事業部 衛星ソリューション部 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
干渉SAR | InSAR |
海成段丘 | Marine terrace |
地表地震断層 | Surface rupture |
地形判読 | Geomorphic observation |
2018年花蓮地震 | 2018 Hualien earthquake |