電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
O19009
タイトル(和文)
原子炉過酷事故時におけるエアロゾル粒径評価 -過飽和水蒸気環境における模擬FP粒子の粒径拡大の測定-
タイトル(英文)
Evaluation of aerosol diameter during reactor severe accident -Measurement of particle size growth of simulated FP particles in supersaturated steam environment -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
過酷事故(SA)時の核分裂生成物(FP)の放出量をより現実的に評価するためには、その発生から、原子炉容器、格納容器、原子炉建屋を経て環境に至るまでのFP移行挙動の予測精度を向上する必要がある。ここで、環境放出量が大きいエアロゾル状FPの挙動に対しては粒径が大きく影響するが、エアロゾルの粒径はナノメートルからサブミリメートルのオーダーまで広範囲に変化するため(図1)、その挙動予測の精度が十分でないのが現状である。特に、マイクロメートルの粒径領域は、エアロゾル挙動に対する影響が大きく、評価精度の向上が望まれる。この領域において、エアロゾルは吸湿と凝結により拡大するが、吸湿では最大で数 μm程度まで拡大可能である。過飽和水蒸気環境では、凝結による粒径拡大が支配的となり、数10 μm程度まで拡大できる。SA解析コードのMAAPでは、吸湿による粒径拡大は考慮されているが、凝結による粒径拡大に関する知見は僅少であるため、現状ではモデル化されていない。したがって、同コードでのエアロゾルの最大粒径の予測値は2 μm程度である。MAAPコードの粒径成長モデルに対し、凝結による粒径拡大を反映すれば、より現実的なFP放出量評価が可能となる。このためには、過飽和水蒸気環境におけるエアロゾル粒径に関する実験データが必要である。
目 的
過飽和水蒸気環境におけるエアロゾル粒径を計測するための実験装置を構築し、凝結を考慮したエアロゾル粒径拡大モデルの構築に資する実験データを取得する。
主な成果
1. 過飽和水蒸気環境におけるエアロゾル粒径計測のための実験装置の構築
温度勾配管により、SA時の原子炉格納容器や原子炉建屋において想定される過飽和水蒸気環境を再現し、顕微カメラにより、凝結による粒径拡大を直接的かつ非接触で計測可能な実験装置を構築した(図2)。
2. 凝結によるエアロゾル粒径拡大に関する実験データ取得とその評価
凝結核濃度、過飽和度(温度勾配管入口と出口の絶対湿度差)及び滞在時間がエアロゾル粒径拡大に影響し、初期粒径0.25 mのエアロゾルは凝結により粒径約10 mまで拡大することを確認した(図3)。過飽和分の水が凝結核に分配されるとした場合、理論上の最大粒径は13 mである。また、エアロゾルの体積は、過飽和雰囲気での滞在時間に対して線形的に増加する傾向を示し、絶対湿度差が大きい場合、エアロゾル粒径拡大が早い結果を得た。さらに、凝結核の物性は、凝結による粒径拡大に影響はなく、疎水性粒子であっても凝結により粒径が拡大することが分かった。
概要 (英文)
To improve the accuracy of fission product (FP) release into the environment during a severe accident (SA), it is important to expand knowledge on FP transfer behavior. FP takes various forms such as gaseous form and particulate form (aerosol), and FP transfer behavior depends on the form. So far, it has been found that the aerosol-like FP has a large amount of release into the environment, but the accuracy of its behavior prediction is insufficient and conservative evaluation has to be performed. For more realistic evaluation of FP release amount, it is desired to improve the evaluation accuracy of aerosol behavior (particularly particle size). Due to the condensation of water vapor into the condensation nucleus in the supersaturated state, the aerosol particle size grows to nanometer to sub millimeter. In particular, the micrometer particle size region has a large influence on the aerosol behavior. In this study, we have obtained experimental data about particle size growth of simulated FP particles in supersaturated steam environment.
報告書年度
2019
発行年月
2020/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
金井 大造 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
西村 聡 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
エアロゾル | Aerosol |
粒径 | Particle diameter |
過酷事故 | Sever accident |
過飽和水蒸気環境 | Supersaturated steam environment |