電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
O19007
タイトル(和文)
プールスクラビング時の気液二相流動に対するガス種の影響 -窒素・ヘリウムを用いた基礎検討ー
タイトル(英文)
Effect of Gas Species on Gas-Liquid Two-Phase Flow During Pool Scrubbing - Preliminary Consideration Using Nitrogen and Helium -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
原子炉過酷事故時(SA)対策の一つであるプールスクラビング注1)では、核分裂生成物(FP)を含むガスが水と接触することによるFP除去効果が期待できる。この効果は気液二相の界面積密度、即ち気泡径等が強く影響することがわかっている。そのため、FP除去効果の予測には、二相流動に関する精緻な知見が必要である。既存のSA解析コードでは、窒素や空気をFP搬送ガスとした実験データを基に開発されたFP除去モデルが採用されている。しかし、実際のSA時のFP搬送ガスは、水素等の多種のガスを含むことが想定され、二相流動はガス組成に影響を受けることも示唆されている。このため、既存のプールスクラビングモデルの実際のSA条件への適用性を確認する観点から、プールスクラビング体系におけるガス組成の流動への影響を評価する必要がある。
目 的
ガス組成の流動への影響評価のための基礎検討として、単一気泡体系及び実機模擬条件となる体系における多次元二相流動計測システムを開発し、実験データを取得する。さらに、得られたデータからガス組成の影響を評価する。
主な成果
1. ガス組成の流動影響評価のための多次元二相流計測システムの開発
窒素、ヘリウム(水素の模擬ガス)、及び任意の割合から成る混合ガスを試験部に供給可能な、単一気泡体系と実機模擬体系における二相流計測システムを開発した。計測にはマルチカメラやワイヤメッシュセンサ(WMS)を用いた独自の多次元的な画像及び信号解析を取り入れ、精緻な流動データを取得した。
2. ガス組成の流動への影響についての評価
(1) 窒素、ヘリウム、二酸化炭素において単一気泡の形成・離脱・上昇挙動を計測した結果、ガス組成による変化はないことがわかった。
(2) 実機模擬の気泡群条件では、ヘリウム供給時に比較的大きな気泡成分が多いことが判明した。これに伴い、ボイド率はヘリウムの混合割合と共に減少した。大きな気泡成分は、浮力による気相の上昇速度が増加することでガスの液中滞在時間が短くなり、ボイド率が低下すると考えらえる。このため、ガス組成の流動への影響としては、気泡径の違い、即ち気相の合体・分裂頻度の差であることが示唆された。また、(1)で述べたように、単一気泡条件ではガス組成による水に対する表面張力や異なる密度での挙動の差はないことがわかった。そのため、ガス組成の影響は、気泡同士の相互作用等が存在する複雑な流動様式の場合に、物性値のわずかな違いが全体の流動に顕著に現れることが推定された。
概要 (英文)
Pool scrubbing is one of the fission product (FP) removal mechanisms in nuclear severe accident (SA) countermeasures. Conventionally, pool scrubbing models have been developed using experimental results with air, nitrogen, or steam as the FP carrier gas. However, recent studies suggest there being a considerable quantity of hydrogen produced during an accident. In order to achieve a realistic assessment of SA, there is a need to evaluate the applicability of such models to cases where mixed species of gases exist. In pool scrubbing, FP removal is largely associated with flow regimes of the gas-liquid two-phase flow. This study aims to gain a deeper understanding of the effect of gas compositions on flow characteristics by performing a series of two-phase experiments, regarding single bubble and churn-turbulent regimes. Using helium and nitrogen (and their mixtures of several volumetric ratios), experimental data on two phase behaviors were obtained using cameras and wire-mesh sensors. From which, it was found that single bubbles showed little or no behavioral differences, while in a churn-turbulent flow condition, hold-up, void fraction, and bubble size distribution differed with gas compositions. More specifically, two-phase flow with a larger fraction of helium was found to contain a sizable fraction of relatively large bubbles, resulting in lower hold-up and void fractions compared to those with nitrogen. This report also discusses future research aspects in order to acquire a complete physical understanding behind the effect of gas species on gas-liquid two-phase flow.
報告書年度
2019
発行年月
2020/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
斎藤 海希 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
金井 大造 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
西村 聡 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
西 義久 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
プールスクラビング | Pool Scrubbing |
気液二相流 | Gas-Liquid Two-Phase Flow |
ワイヤメッシュセンサ | Wire-Mesh Sensor |
多視点画像解析 | Multi-View Image Analysis |