電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

O16001

タイトル(和文)

高圧電源盤における高エネルギーアーク故障(HEAF)火災評価試験

タイトル(英文)

Experimental Studies of the HEAF (High Energy Arc Fault) Fire Event for High Voltage Switchgears

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
平成23年3月11日の東日本大震災の際に女川原子力発電所1号機で発生した高圧電源盤(高圧スイッチギア*1)の大規模な高エネルギーアーク故障による火災(以下、HEAF火災)の被害状況を踏まえ、HEAF火災によるリスク低減のための火災影響軽減対策を合理的に実施する必要がある。電源盤内でアーク放電エネルギーが発生した場合、電源盤内の空気が加熱され、その高温空気が電源盤外あるいは隣接する電源盤内へ噴出し、隣接機器へ機械的・熱的影響を及ぼすだけでなく、二次的な火災の進展に至る懸念がある。

目 的
アーク未対策である実物大の高圧電源盤を用いた内部アーク試験を行い、アークエネルギーの発生量やアーク発生後のHEAF火災への進展の有無を評価する。さらに、内部アーク発生時の高温ガスの放出挙動に対する数値解析手法の適用性を評価する。

主な成果
2種類の高圧電源盤(非耐震/耐震, 定格電圧7.2kV, 母線材質:銅, 発弧区画内容積1.11~1.48m3, 開口部無)を用いた内部アーク試験を実施し、以下の知見を得た。

1.内部アーク試験
目標短絡保持時間を0.1~2.0秒、アーク発生(以下、発弧)箇所をケーブル室またはVCB二次側端子として、三相短絡電流条件(18.9/40.0kA)におけるアーク電圧Varcやアーク放電時に発生するエネルギー量(以下、アークエネルギーEarc)を測定した。
Varcは、本試験の範囲では電源盤の種類や発弧箇所にかかわらずほぼ一定の値1.34kVとなる。一方、Earcは短絡保持時間が長くなるにつれて比例的に増大しHEAF火災に進展する場合があり、その最小値は27.6MJであった。なお、遮断器室内でアークを発生させた場合、Earcが40MJを超えると、消火作業が必要な火災事象が発生した。

2.内部アーク発生時の内圧と筐体の破損を考慮した高温ガスの放出解析
高圧電源盤内に発生する圧力や筐体の破損に伴う高温ガスの放出状況を予測可能なCFD(数値流体力学)*2や衝撃解析ツール*3を用いて、内圧上昇量の推定、内圧による筐体の破損形態や周辺への機械的・熱的影響範囲を再現できることを確認し、内部アーク発生時の高温ガスの放出挙動評価に適用できる見通しを得た。

*1 電力系統を保護・制御するためのしゃ断器等の保護継電器と高圧の母線を一緒に金属製筐体に収めたもの
*2 米国ESI Group社製のCFD-ACE+
*3 米国ANSYS社製のAUTODYN

概要 (英文)

Successive fire due to a HEAF (High Energy Arc Fault) event in a high voltage metal-clad switchgear was identified at the Onagawa nuclear power plant after the Great East Japan Earthquake in March 2011. During HEAF event, hot gas heated in the metal enclosure due to the arc flash will be emitted out of the enclosure or to adjacent enclosure, and has a potential to damage the surrounding equipment. In light of this, we executed internal arc tests with full scale high/low voltage metal-enclosed switchgear components (non-arc proof type, copper bus conductor), and evaluated arcing energy, the mechanical damage of the switchgear and the surrounding equipment due to the impulsive pressure and the possibility of successive fire occurrence. In case of high voltage switchgear, when the arcing energy exceeded 27MJ, successive fire was identified. Especially, in the case where the arc flash was discharged in the circuit breaker room, a 2-second arcing duration in a three-phase short-circuit current with 18.9kA (measured arcing energy over 40MJ) caused successive fire which required extinguishment. Furthermore, we analyzed details of enclosure pressure, damage to a metal enclosure and gas emissions from a broken enclosure using CFD (Computational Fluid Dynamics code) and impact analysis code, and investigated their applicability to the numerical approach for the HEAF event.

報告書年度

2016

発行年月

2017/03

報告者

担当氏名所属

白井 孝治

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

岩田 幹正

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

宮城 吏

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

合田 豊

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

南波 宏介

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

田坂 光司

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

キーワード

和文英文
高エネルギーアーク故障 High Energy Arc Fault
HEAF火災 HEAF Fire Event
高圧スイッチギヤ High Voltage Switchgear
内部アーク試験 Internal Arc Test
筐体内圧力 Enclosure Pressure
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry