電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
NR24003
タイトル(和文)
過酷事故時の沸騰水型原子炉建屋下層階における水素挙動評価 ー下層階天井窪み部の解析モデル体系の構築と感度解析ー
タイトル(英文)
Evaluation of Hydrogen Behavior in the Lower Level of Boiling Water Reactor Building under Severe Accident Conditions - Development of Analytical Model and Sensitivity Analysis of Ceiling Depression in Lower level -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
原子力規制委員会では、福島第一原子力発電所(1F)3号機の水素爆発は原子炉建屋の最上階(オペレーションフロア)ではなく原子炉建屋下層階での水素爆発が起点になったと認識された注 )。また、原子力エネルギー協議会およびBWR事業者も、1F事故から得られた知見の重要性を踏まえ、自主的安全性向上に向けた様々な水素防護対策を検討することをアクションプランとして提示しており注 )、「水素滞留・拡散挙動の評価手法構築・評価」については、電中研研究と連携して取り組むこととされた。
目 的
アクションプランに示された過酷事故時の原子炉建屋下層階の天井窪み部等における水素の滞留・拡散挙動の評価手法の構築に向け、下層階フロア領域の解析モデル体系の構築、各種パラメータの感度解析、影響の大きい物理的な要因の特定を行う。
主な成果
1. 原子炉建屋下層階フロア領域の解析モデル体系の構築
実機のプラントウォークダウンのデータや安全解析評価結果等を基に、水素が滞留する可能性のある下層階天井窪み部の寸法形状や伝熱特性、および漏洩気体の流体特性を整理し、汎用熱流体解析コード GOTHIC注 ) を用いて、実機プラントの原子炉建屋の寸法形状や流体・伝熱特性の代表値をベースケースとする解析モデル体系 を構築した(図1)。
2. 天井窪み部の水素濃度に対する各種パラメータの感度解析
1. で構築した解析モデル体系を用いて、天井窪み部の水素の滞留・拡散挙動に関する形状・流体・伝熱の各種パラメータの感度解析を実施した結果、天井窪み部における水素濃度に対して、⑤漏洩箇所から天井までの高さと⑥天井窪みまでの水平距離のパラメータの感度が高いことがわかった。漏洩箇所から天井までの垂直距離が短くなるほど水素濃度が増加し、また、天井窪み部までの水平距離が短くなるほど水素濃度が増加した。これは、漏洩箇所から天井窪みまでの距離が長いほど周囲の空間に水素が拡散するため天井窪み部の水素濃度が減少し、反対に距離が短いほど拡散せずに天井窪み部に滞留し水素濃度が増加したため である(図2)。
3. 天井窪み部の水素濃度に影響を与える物理的な要因の特定
2. で得られた各種パラメータの感度解析結果の分析から 、天井窪み部の水素濃度が増加する物理的な要因として、(a) 漏洩気体密度の上昇による吹抜空間で発生する対向流の循環流量の減少、(b) 漏洩気体が下層階で空間中に拡散する量の減少、(c) 天井窪み部の寸法の減少、の3種に大別されることが明らかとなった(表1)。今後、これらの要因を考慮可能な、天井窪み部の水素濃度の予測評価式を構築する予定である。
概要 (英文)
The Nuclear Regulation Authority recognizes that the hydrogen explosion at Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Unit No. 3 originated not on the operating floor but on the lower level of the reactor building. This study aims to obtain knowledge on hydrogen behavior by examining analytical conditions under severe accident conditions to develop a general-purpose evaluation method for the retention and diffusion behavior of hydrogen leaked into the lower level of the reactor building, which represents a BWR plant in Japan. Based on the plant walk-down data and the results of the safety analysis evaluation of the actual plant, the dimensional shape and heat transfer characteristics of the floor area where hydrogen may leak and the fluid characteristics of the leaking gas were organized, and an analytical model was developed using representative parameters as basic conditions. The results of the analytical model with the basic conditions as parameters showed that the hydrogen concentration in the ceiling depression was higher than in the other locations and that hydrogen was retained in the ceiling depression. The results of the sensitivity analysis of the various parameters indicate that there are three main factors that increase the hydrogen concentration in the ceiling depression.
報告書年度
2024
発行年月
2024/09
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
湯淺 朋久 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
斎藤 海希 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
共 |
米田 公俊 |
原子力リスク研究センター |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
沸騰水型原子炉 | Boiling Water Reactor |
原子炉建屋 | Reactor building |
過酷事故 | Severe accident |
水素 | Hydrogen |
熱流動解析 | Thermal-hydraulic analysis |