電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR23006

タイトル(和文)

構造物損傷まで含めた原子力発電所周辺斜面のフラジリティ評価(その1)-評価手順の整備と実施-

タイトル(英文)

Fragility evaluation of surrounding slopes near nuclear power plants including damage of structure (Part 1) -Specifying assessment procedure and practice-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 原子力発電所周辺斜面の地震時損傷については,等価線形解析を用いたすべり安全率評価が行われてきた.しかし,基準地震動が増大しており,現状の評価では,残留変形を評価することができないため,合理的な設計が難しくなる可能性がある.そこで当所では,変形量照査を導入した新しい評価手法の体系化を進めている.
 一方で,安全性向上評価書の作成において,基準地震動を超えたレベルの入力地震動に対する確率論的リスク評価の検討が進められている.原子力発電所周辺斜面崩壊の影響評価に関する既往の研究では,斜面の地震時損傷に加えて,崩落土・岩塊の構造物への到達や,構造物の損傷まで含めた斜面の地震リスク評価フローが提案されている.ただし,既往の研究における斜面のフラジリティ評価では,地震時損傷のみ考慮されているものが多く,斜面崩落土・岩塊の到達や,崩落土・岩塊の構造物への衝突の影響を連続的に考慮した事例は少ない.

目  的
 崩落土・岩塊の構造物への衝突の影響に関する評価手法を具体化するとともに,評価手順の整備を行う.また,仮想の軟岩斜面を対象とした一連の例示解析を実施し,今後の課題を整理する.

主な成果
1. 崩落土・岩塊の構造物への衝突の影響に関する評価手順の整備
 崩落土・岩塊の衝突による建屋外壁を例とした構造物の破壊形態を,局部破壊(貫入,裏面剥離及び貫通)と全体破壊に分けて,評価方法を具体化した.前者は崩落解析結果を基に適用範囲内と判断できれば実験式,前者で実験式の適用範囲外または全体破壊の場合は構造解析を適用することを手順として示した.
2. 仮想の軟岩斜面モデルを対象とした例示解析
 仮想の軟岩斜面モデルに対して,本研究で具体化した評価手法を適用し,評価フローに従って,斜面の地震時損傷から構造物損傷まで含めた斜面のフラジリティ評価を実施した.斜面の崩落土・岩塊の建屋到達に関するフラジリティ評価では,まず有限要素法を用いた動的非線形解析により,崩壊領域を評価した.検討した条件では,解析結果より表層部のみを崩壊領域と判断した.次に,崩壊領域を不連続体によりモデル化し,多数の斜面崩落解析結果を基に,到達確率及び建屋外壁の損傷確率を算出して,フラジリティ曲線を作成した.その結果,崩落土・岩塊の到達や建屋外壁の損傷まで含めて損傷確率を計算した場合,検討した条件では斜面の地震時損傷のみを考慮する時と比べて値が大きく低下した.
3. 課題の整理
 本検討の中で,動的非線形解析を用いた斜面のフラジリティ評価に関して,既往の研究で指摘されていた安定性を評価する際の評価規準の設定等の課題に加えて,地盤材料の強度定数の変化に応じて大きく崩壊領域が変わる場合の取り扱い方法の確立を今後の課題として示した.

今後の展開
 動的非線形解析を導入した地震時損傷に関するフラジリティ評価に取り組む.

概要 (英文)

A safety factor is often used in the evaluation of the seismic stability of surrounding slopes near nuclear power plants. However, evaluating seismic stability based on ground displacement is a more rational approach because the level of the design for earthquake ground motion for nuclear power plants has been increased after the Great East Japan Earthquake. Also, probabilistic risk assessment is utilized for safety enhancement of nuclear power plants. Seismic risk assessment flowcharts for rock slopes have been previously proposed. However, few analyses have been conducted considering the influence of rock reaching to building and wall failure. This research purpose is to specify assessment procedure which evaluate the influence of wall failure from rock impact and show the example of the fragility evaluation of soft rock model according to the flowchart. As a result of it, the failure probability could be decreased because of including the influence of rock reaching and wall failure.

報告書年度

2023

発行年月

2024/07

報告者

担当氏名所属

吉田 泰基

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

石丸 真

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

澤田 昌孝

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

中島 正人

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

栃木 均

サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門

キーワード

和文英文
構造物損傷 Damage of structure
周辺斜面 Surrounding slope
フラジリティ Fragility
動的非線形解析 Dynamic nonlinear analysis
個別要素法 Distinct element method
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