電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR22012

タイトル(和文)

居住性喪失に至る原子力発電所中央制御室火災発生時の対応に関する検討 -VRを用いた運転員の認知行動に関する知見収集-

タイトル(英文)

A Study on the action to a Fire in Main Control Room of NPPs Leading to Loss of Habitability - Collection of knowledge on the cognition and behaviors of operators using VR-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
火災時の人間信頼性解析(Fire Human Reliability Analysis:火災HRA)では,原子力発電所の中央制御室火災(中操火災)が発生し,熱や煙による居住環境の悪化(Loss of Habitability: LOH)のために運転員が中操から退避せざるを得ない場合がある。火災モデリングによりLOHの基準は明確に記されているが,中操火災は稀有な事象であり,シミュレータ訓練もできない事象である。そのため,実際に運転員がLOHの基準通りに退避するのかは定かではない。さらに,退避までの運転員の認知や判断,プラント対応に関する知見も乏しく,LOHに至る中操火災に関するHRA上の知見拡充が急がれている。
目  的
火災HRAの向上に資するべく,LOHに至るような中操火災をVRにて模擬した上で,退避に至るまでの運転員の認知や判断,プラント対応に関する知見を収集する。
主な成果
1. 中操火災を模擬したバーチャル環境の開発
VRにて模擬した中操とABWR型プラントシミュレータより成るシステムに,BRI2-CRIEPIで予測した火災性状を組み込み,中操火災により煙が降下する状況を再現した。
2. VRを利用した実験による知見の収集
(1) 収集方法
副長クラス以上の運転技量保有者11名(経験年数平均4.8年)に対し,1.のバーチャル環境を用い,条件(①統制条件(給水流量の全喪失事象のみが発生),②火災のみ条件(通常運転中,中操裏盤より火災が発生,排煙は可能。手動スクラムのタイミングを調査するために実施),③退避条件(給水流量の全喪失+RCIC故障+火災発生+HPCF(B)表示消灯+けが人発生+排煙不足といった多重事象が発生)の3条件)を変えてプラント対応(操作指示や運転方針の周知等)を実施させた。プラント対応中の発話内容はパフォーマンスとして逐語化した。各条件終了後にはストレスを計測する心理指標に回答させ,全実験終了後にはインタビューを実施した。
(2) 中操火災発生時の運転員の認知・判断,プラント対応
上記(1)で取得した火災対応時のデータ(条件②,③)より,以下の知見を得た。
① 心理指標ならびにインタビュー結果より,統制条件に比べ,火災が発生する2条件でストレスの上昇がみられた。
② 手動スクラム指示は初期消火失敗「前」か「後」のいずれかかのタイミングに二分されており,退避指示は「排煙不足発生」時が最も多かった。
③ 全参加者ともLOHの基準よりも早く退避を実施した。
④ 退避・スクラムとも,半数の参加者がその判断タイミングにためらいを持っていた。
⑤ 中操火災発生から退避までの全体的な対応には大きな個人差が見られた。
本知見は,火災HRAにおける聞き取り調査時の質問項目作成に活用可能である。また,中操火災時手順書への明確な退避・スクラム基準の追記が重要であることが分かった。

概要 (英文)

In the human reliability analysis (HRA) of the fire probabilistic risk assessment on nuclear power plants, NUREG-6850 provides criteria for the concentration of smoke (visibility) or room temperature causing the main control room (MCR) abandonment due to loss of habitability (LOH); however, because MCR fire events are extremely rare and cannot be simulated in conventional MCR simulators, it is difficult to collect data on cognitive processes during MCR fires including the actual timing of MCR abandonment. This study aims to collect such data through experiments using a virtual reality (VR) nuclear power plant MCR simulator with an MCR fire. Eleven operators, sub-shift manager level and above, participated and responded to accidents in the VR environment. The results showed that more than half of them decided to abandon MCR once visibility became insufficient due to smoke. Also, the timing of manual scram was divided into either "before" or "after" the initial fire suppression failure. In all cases, MCR abandonment was performed earlier than the LOH visibility criteria provided by NUREG-6850. About half of them made abandonment and scram decisions while wondering when to do so. Furthermore, there were large individual differences in the overall response to MCR fire. These findings suggest the need to add objective criteria for abandonment and manual scrum to the MCR fire procedures.

報告書年度

2022

発行年月

2023/06

報告者

担当氏名所属

廣瀬 文子

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

武田 大介

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

野々瀬 晃平

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

田坂 光司

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

キーワード

和文英文
中央制御室火災 Main Control Room Fire
中央制御室放棄 Main Control Room Abandonment
居住性喪失 Loss of Habitability
火災HRA Fire Human Reliability Analysis
VR Virtual Reality
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