電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR22009

タイトル(和文)

大気開放条件下の高エネルギーアーク故障(HEAF)評価試験 による熱的影響範囲(ZOI)評価手法の提案

タイトル(英文)

Proposal of an Evaluation method for Zone of Influence (ZOI) Induced by Thermal Impact of High Energy Arcing Fault (HEAF) Based on Open Arc Tests

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
電力中央研究所は、既報において低・高圧電気盤や相非分離高圧母線用バスダクトの内部アーク試験を行い、アークエネルギーE_arc(アーク電圧とアーク電流のそれぞれの瞬時値の積をアーク継続時間にわたり積分した値)や周囲に到達する瞬間的な熱エネルギーE_total,IEを取得し、銅導体を対象としたHEAFによる熱的影響範囲(ZOI)評価手法を提案した。一方、アルミニウム使用機器で発生するHEAFを対象としたE_total,IEやZOIの評価例は少なく、導体材質の違いが及ぼす影響についても、知見が十分でない。
目  的
大気開放条件下のアーク試験(気中アーク試験)を行い、E_arcやE_total,IEの導体材質依存性を実験的に評価するとともに、導体材質依存性を考慮したZOI評価手法を提案する。
主な成果
 垂直対向配置の棒導体(材質:アルミニウム[Al]または銅[Cu],導体間距離:300 mm)を用いた単相短絡電流条件下の気中アーク試験(表1)を実施し、以下の成果を得た。
1. E_total,IEの導体材質依存性
目標アーク継続時間t_arcを最大1.4秒とし、単相短絡電流条件(35 kA)におけるアーク電圧とアーク電流や銅板の温度を測定し、E_arcやE_total,IEを求めた。本試験の範囲でE_arcが最大となった評価条件において、棒導体からの離隔距離d 0.6 mで測定したE_total,IEは、Al棒導体で2.08 ∼ 9.35 MJ/m2となり、Cu棒導体(1.21 ∼ 5.32 MJ/m2)の約1.7 ∼ 1.8倍となった。
2. HEAFの導体材質依存性を考慮したZOI評価手法の構築
(1)点熱源近似に基づくアークの伝熱係数k_h(図1)
 気中アーク試験の測定値を用いて、k_h(-)の依存性を評価した。なお、k_hはE_arcのうちE_total,IEとして伝達される割合である。各導体材質で得られたk_hの最大値は、Al導体で1.51、Cu導体で0.51となり、その比は約3倍となった。
(2)導体材質依存性を考慮したZOI評価手法
 HEAF発生時のE_arcとk_hの導体材質依存性を考慮し、ZOI設定距離D_allowable(m)の評価手法を構築した(式(1))。なお、E_damage(MJ/m2)は評価対象物(ケーブル等)の機能喪失を対象とした損傷しきい値である。高圧電気盤のHEAF評価シナリオを対象として、式(1)によるD_allowableの評価手法を適用した結果、現行の画一的な評価方法(HEAFの発生条件に依らず、電気盤の正背面から水平0.9 m,電気盤の天板面から垂直1.5 m等のZOIを設定する方法)と比べて、ZOIが大幅に低減される見通しを得た。
D_allowable=((k_h∙E_arc) ⁄ (4π∙E_damage))^(1/2) ……………式(1)

概要 (英文)

Worldwide operating experience has shown that high energy arcing fault (HEAF)s pose a potential to cause extensive damage to the safety operation of nuclear facilities. Due to characterization of more realistic HEAF zone of influence (ZOI), experiments aimed at providing additional data to improve a HEAF ZOI modeling involving aluminum. The open arc tests were performed under a variety of conditions believed to influence the arc energy characteristics. These parameters included conductor material type and arc duration. The test consequences such as arcing current, voltage, and external incident energy were measured surrounding the initial arc location. The arcing energy with copper conductors and aluminum conductors where was discharged in 1.45 s and 1.35 s using shingle-phase short-circuit current with 35.0 kA reached to 27.6 MJ and 28.0 MJ, respectively. The external incident energy with copper and aluminum reached to over 5.0 MJ/m2 and 9.0 MJ/m2 at horizontal distance 0.6 m from the vertical electrodes in open arc test device. The difference suggested the possibility where HEAF events involving aluminum more severe thermal impact to surrounding equipment damage. By using the test data, we proposed an semi-empirical formula to predict the HEAF ZOI for considering electrode materials involving copper and aluminum.

報告書年度

2022

発行年月

2023/05

報告者

担当氏名所属

田坂 光司

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

宮城 吏

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

永井 大地

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

白井 孝治

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

岩田 幹正

グリッドイノベーション研究本部

キーワード

和文英文
高エネルギーアーク故障 High Energy Arcing Fault
気中アーク試験 Open Arc Test
アルミニウムHEAF Aluminum HEAF
影響範囲 Zone of Influence
HEAF ZOI モデリング HEAF ZOI Modeling
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry