電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR22007

タイトル(和文)

がいしへの降灰付着解析モデルの開発と付着特性の評価

タイトル(英文)

Simulation model development and parametric evaluation of volcanic ash deposition on insulator

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
降下火山灰(降灰)は大気中を広域的に移流・拡散するため、がいし等に付着してその電気絶縁性能を低下させる可能性がある。送変電設備での降灰リスクや原子力発電所での外部電源喪失頻度を評価するためには、降灰量(層厚、荷重)とがいしへの火山灰付着量との関係や付着量とがいし耐電圧特性との関係を明らかにする必要がある。当所ではこれまで実火山灰試料を用いたがいしへの付着試験、耐電圧試験を行ってきた。がいしの種類、火山灰の粒径、風向等の影響を網羅的に評価するためには、試験を補完するための数値シミュレーション技術の開発・援用が必要となる。

目的
がいしへの降灰付着現象を再現する数値シミュレーションモデルを開発し、火山灰物性、環境条件およびがいし条件が降灰付着特性に与える影響を評価する。

主な成果
1. 数値シミュレーションモデルの開発
乾燥火山灰粒子が重力と風の作用によりがいしに向かって直進し、その付着率が衝突角と安息角に依存すると仮定して、降灰付着現象の数値シミュレーションモデルを開発した。その妥当性を既往人工試験で得られた付着量特性結果によって確認した。
2. 降灰付着特性への影響評価
標準懸垂がいしを対象として、火山灰物性(安息角・粒径)、環境条件(気中質量濃度・風速・風向)およびがいし条件(がいしの種類・傾き角)をパラメータとした数値シミュレーションを行った。その結果、安息角・風速・風向・がいしの種類(形状)・がいしの傾き角が火山灰付着量や付着形状に顕著な影響を与えることが判明した。 また、いずれの場合でも火山灰付着体積は地面降灰厚さに対し一定値に飽和した。
3. 火山灰付着機構に関する考察
安息角はがいし表面に堆積する火山灰の高さに影響を及ぼし、がいしの形状や傾き角は火山灰堆積の土台(水平に近いがいし表面)の面積に影響するため、火山灰付着量を左右する。また、大きな風速は火山灰が垂直に高く堆積することを妨げ、風向は火山灰粒子の飛来経路に影響を及ぼすため、火山灰付着量や付着形状が変化する。

今後の展開
火山灰付着現象への湿潤の影響や安息角への粒径の影響等を考慮できるように本シミュレーションモデルを拡張し、各種がいしでの火山灰付着特性を網羅的に評価する。また、火山灰によって汚損した各種がいしの耐電圧特性を試験によって評価する。

概要 (英文)

We have developed a numerical simulation model to reproduce the dry volcanic ash deposition phenomenon on the surface of electric insulators. The deposition characteristics were numerically studied with variations in the physical properties of the volcanic ash (angle of repose, particle size), environmental conditions (volcanic ash concentration in the air, wind speed, wind direction), the configuration of insulators, and inclination angle of insulator using a standard suspension-type insulator installed horizontally as a reference case. In the scope of the parameters studied in this report, it was found that the factors that significantly affect the amount of volcanic ash deposition are the repose angle of volcanic ash, wind speed, wind direction, insulator type (configuration), and insulator inclination angle. The angle of repose affects the height of the volcanic ash deposited on the surface of the insulator, while the configuration and inclination angle of the insulator affect the surface area of the insulator, which is horizontal enough for the volcanic ash to deposit on. Wind speed and wind direction affect the volcanic ash flux direction in combination with the ash falling speed, determining whether or not volcanic ash can reach the horizontal insulator surface. These physical mechanisms revealed in this study allow us to understand the quantitative and qualitative characteristics of volcanic ash deposition on insulators.

報告書年度

2022

発行年月

2023/04

報告者

担当氏名所属

江口 譲

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

本間 宏也

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

三好 雅仁

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

竹内 晋吾

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

土志田 潔

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

キーワード

和文英文
がいし Insulator
火山灰 Volcanic ash
付着 Deposition
数値シミュレーション Numerical simulation
影響評価 Parametric evaluation
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