電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
NR22006
タイトル(和文)
確率論的リスク評価(PRA)のための 機器信頼性データ収集実施ガイド
タイトル(英文)
Component reliability data collection guide for probabilistic risk assessment
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
東京電力福島第一原子力発電所事故以前の日本の確率論的リスク評価(PRA)では、原子力安全推進協会(JANSI)の運営する原子力施設情報公開ライブラリー(NUCIA)の原子力機器トラブル情報を用いて推定した国内機器故障率/故障確率(機器信頼性パラメータ)が使われていた。当時、日本の原子力プラントの炉心損傷頻度は欧米プラントのそれよりも数桁程度小さい傾向にあり、その主な要因は機器故障率や故障確率の低い値にあると考えられていたことから、日本ではPRAで考慮すべき機器故障情報が適切に収集されていないのではないか、との疑念の声が国内外専門家から聞かれることがあった。しかしながら、NUCIAの入力基準はPRAに必要な情報を考慮して設定されているわけではないことなどから、PRAに必要な機器信頼性データ(機器の故障や運転経験の情報)が国内プラントからもれなく収集されているかどうかを明確な証拠で示すのは困難であった。
目 的
日本のPRA用として説明性の高い機器信頼性パラメータを推定するために、日本の個別原子力プラントの設計・運転・不具合情報から直接PRAに必要な機器信頼性データを収集する方法を定めたガイド文書を策定する。
主な成果
1. PRAのための機器信頼性データ収集実施ガイドの策定
国内原子力プラントについて説明性の高い機器信頼性パラメータを推定するため、従来の機器信頼性データ収集方法のなかで、特にPRA対象機器母集団の定義やデータ収集情報源などの不確かであった部分を改善し、その内容をPRAのための機器信頼性データ収集実施ガイドとしてまとめた。具体的には、まず、個別プラントPRAにおいてモデル化されている基事象を基に、機器故障データの収集対象とする機器母集団を定義する。データの収集手順としては、各プラントで品質保証体制の下に管理されている不具合情報源から、PRA機器故障に関係のない情報を除外し、PRA対象機器が安全上の要求機能を発揮できない事象を抽出する。また、信頼性評価に必要な機器起動/作動デマンド数や継続運転時間/露出時間を発電所の設計・運転保守情報から収集する。新旧データ収集方法における母集団の違いの概念を図1に、新しいデータ収集方法の手順を図2に示す。
電力各社が適切な管理体制の下、本実施ガイドに従ってPRA用機器信頼性データを収集することにより、収集したデータの網羅性が保証され、したがって、これらのデータから推定された国内の機器信頼性パラメータの技術的妥当性を確保することができる。
今後の展開
機器信頼性データの収集は今後も継続的に更新し、機器信頼性パラメータの充実と妥当性向上を図っていく。また、共通原因故障をはじめとするPRAに必要なその他のパラメータ全般についても整備を進めていく。
概要 (英文)
Abstract
The NRRC has developed a new data collection guide for component reliability for Japanese utilities' probabilistic risk assessment (PRA).
The Japanese conventional data collection procedure did not assure the adequacy of the component failure data because its data source NUCIA is not designed for PRA and does not necessarily cover PRA components. The procedure also had a significant uncertainty in the component populations and the exposure data because the collection scope was irrelevant to the specific PRA models.
The new guide defines component failure and exposure data necessary for PRA based on the plant PRA models and adapts a procedure to collect those data directly from the plant maintenance records. This data collection procedure assures and improves the quality of the obtained data and the estimated component reliability parameters.
報告書年度
2022
発行年月
2023/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
吉田 智朗 |
原子力リスク研究センター |
共 |
岩谷 泰広 |
原子力リスク研究センター リスク情報活用推進チーム |
共 |
桐本 順広 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
確率論的リスク評価 | Probabilistic Risk Assessment |
機能喪失 | Loss of Function |
露出データ | Exposure Data |
機種・故障モード | Component Failure Mode |
機器バウンダリ | Component Boundary |