電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR21007

タイトル(和文)

疲労を損傷モードと想定した弾塑性応答解析に基づく配管系フラジリティ評価

タイトル(英文)

Fragility evaluation of piping system based on elastic-plastic response analysis under assumption that failure mode is fatigue

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 原子力発電所の再稼働後は安全性向上評価 (SAR)が必要となり、確率論的リスク評価 (PRA)を活用したリスクマネジメントが実施される。炉心損傷頻度への影響が大きいため、配管系は重要なものが多い。現在の原子力発電所の配管系のフラジリティ評価では延性破断を想定した弾性ベースの一次応力評価結果より安全係数を算出している。一方で、地震を受ける配管の損傷については、ラチェットを伴う低サイクル疲労であることが明らかとなっており、現在のフラジリティ評価法が損傷に対して大きな保守性を含んでいると言われている。そのため、安全性向上評価に備えて、配管系のフラジリティ評価で現実的な損傷モードや弾塑性特性を適切に考慮できる手法を構築することが重要となる。

目  的
 エルボ配管の加振実験等に基づき弾塑性解析モデルの妥当性を示すとともに、疲労に着目した配管系の弾塑性特性を考慮できる現実的なフラジリティ評価手法を構築する。

主な成果
1. エルボ配管高加速度加振実験
 配管系の変形が集中するエルボ配管を対象に、共振振動台を用いて最大加速度20Gでの加振実験を実施し、損傷モードが疲労になることを確認するとともに高加速度での低サイクル疲労破壊挙動データを得た。加振試験の再現解析結果と実験結果が一致することからモデルの妥当性を示した。解析結果を用いて、ひずみベースの疲労評価を実施して疲労線図上へプロットした結果、多数の静的実験から作成された疲労線図の加振実験への適用性を確認した。

2. 配管系の現実的な損傷モードを考慮したフラジリティ評価法の構築
 1で得たデータで検証した弾塑性解析手法を用い、確率疲労線図を適用することで、疲労による配管本体の損傷を考慮したフラジリティ評価法を提案した。

3. 模擬配管系を用いたフラジリティの試評価
 旧財団法人原子力発電技術機構の設計確認配管試験で用いられた配管系を対象に、提案手法を適用して疲労を損傷モードと想定した弾塑性応答解析に基づくフラジリティ評価を実施した。提案手法による評価結果は、延性破断を想定した従来手法の評価結果と比較して、フラジリティ曲線が高加速度側に評価されることを示した。

今後の展開
 提案手法を多様な配管系のフラジリティ評価に適用し、検証事例を蓄積した上で公知化し、日本原子力学会標準に反映するとともに各社SAR等への活用に資する。

概要 (英文)

When designing and evaluating the strength of the piping system of a nuclear power plant, ductile rupture or plastic collapse is often assumed to be the limit state. However, previous studies have reported that the primary failure mode of piping systems is fatigue. Therefore, it is important to conduct a fragility assessment of the piping system under the assumption that the failure mode is fatigue. In this study, a method for calculating the strength distribution characteristics of piping system based on material characteristics is proposed. The linear cumulative damage is considered as the damage assessment index to conduct a fragility assessment under the assumption that fatigue occurs. To investigate the proposed method, the fragility evaluation of the piping system was conducted by the proposed method. The strain occurring in the piping system was calculated by finite element analysis (FEA). The linear cumulative damage corresponding to the number of cycles was evaluated based on the strain using the Probabilistic Strain-N curve (P-Strain-N curve). The results were compared with those calculated by using the Zion method. The fragility curve obtained by the proposed method was higher acceleration than that obtained by the Zion method.

報告書年度

2021

発行年月

2022/08

報告者

担当氏名所属

嶋津 龍弥

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

酒井 理哉

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

大野 陽平

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

キーワード

和文英文
地震フラジリティ Seismic fragility
損傷モード Failure mode
エルボ配管 Elbow pipe
疲労 Fatigue
弾塑性 Elasto-plasticity
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry