電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
NR21006
タイトル(和文)
非線形ソリッドモデルに基づく鉄筋コンクリート構造物のフラジリティー評価ツールの拡張-原子炉建屋への適用を視野に入れて-
タイトル(英文)
Extension of seismic fragility evaluation program for reinforced concrete structures based on nonlinear solid model - Application to nuclear reactor building -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背景
2011年の福島第一原子力発電所の事故を契機に、構造物群全体を俯瞰して、設計想定を超える自然災害に対する弱部を把握することの重要性が認識された。これを受けて、異なる構造物間、および地震や津波といった事象間での損傷のしやすさの相対比較を可能とする確率論的リスク評価が注目され、それに資するフラジリティー(作用の大きさと損傷確率の関係)評価の実用性の向上が求められている。当所では、設計用の梁質点モデルより詳細に損傷を表現できる三次元ソリッドモデルに基づきながらも、評価工程の自動化を通じて効率的にフラジリティーを導出できる環境の構築に取り組んできた。しかし、プロトタイプ[1]で取り上げた評価例は、実際の建屋の複雑な形状を十分反映していない、非線形性を考慮する範囲が限られているなど、まだ改善の余地があった。
目的
材料非線形性を考慮した三次元ソリッドモデルの有限要素解析に基づく地震フラジリティー評価ツールを拡張し、より現実的な建屋を対象とした試評価を行う。
主な成果
1. 非線形ソリッドモデルによるフラジリティー評価ツールの拡張
コンクリートと鉄筋が別個の要素として実装されている有限要素解析プログラムE-FrontISTR[2]の使用を想定して、解析モデルへの鉄筋要素の配置を支援するプログラムを開発した。これにより、鉄筋列の位置が複雑化している原子炉建屋のような構造物でも、非線形解析用モデルを作成できるようになった。また、前報[1]で開発したフラジリティー評価ツールを当所の大型計算機に移植した。その際、多数の構造解析ケースの実施順、および同時進行する出力処理の制御を見直し、評価の高速化を図った。
2. 現実的な建屋を対象としたフラジリティーの試評価
実機公開データを参照して原子炉建屋-地盤連成系ソリッドモデルを作成した。そして、建屋、地盤、両者の境界面それぞれの非線形性を考慮し、ステップ数1200の地震波形を与える解析48ケースに基づいてフラジリティーを算定する試評価を行った。解析の開始からフラジリティーの表示までに要した時間は1日であり、実用的なレベルと考えられる。梁質点モデルの場合と比較したところ、損傷確率の上昇する入力加速度レベルがやや大きくなり、合理的なフラジリティーを得られる可能性が示された。
今後の展開
解析精度の検証を進めるとともに、原子炉建屋の構造的冗長性を考慮できる評価基準を検討し、より一層現実的な地震時挙動に基づく評価法を提案する。
概要 (英文)
The conventional model used in seismic fragility evaluation of nuclear buildings is so-called stick model which was constituted of beam elements and concentrated mass. Finite element models, especially three-dimensional solid models considering material nonlinearity, not only can simulate damage more closely, but also extend the applicability to complex shaped structures and external actions other than earthquake. However, this approach is not realized for fragility evaluation yet because of the excessive computational load and lack of support environment for pre/post processing of multi-case analyses and fragility derivation. Then, in the previous report, the authors have developed the prototype for the automation platform of fragility evaluation which is combined with the FEM program available in a parallel computer. In the present report, the trial calculation for more realistic building-ground coupled system was conducted after the expansion of operating environment from a PC cluster to the supercomputer in CRIEPI and the development of a rebar arrangement tool for reinforced concrete structures with complicated shapes. As for the model of 270,000 nodes, the time required from the beginning of 48 analysis cases considering uncertainty to the display of the resulting fragility curves was 10 days with the PC cluster and 1 day with the supercomputer. Comparing with the result based on a stick model, the input acceleration for the damage probability to rise became large in the solid model. Although the material model used here is still necessary to be verified, it implies the possibility to rationalize the fragility.
報告書年度
2021
発行年月
2022/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
宮川 義範 |
原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム |
共 |
澤田 昌孝 |
原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
原子力発電所 | Nuclear power station |
材料非線形性 | Material nonlinearity |
並列計算 | Parallel computing |
多点拘束 | Multiple point constraint |
確率論的リスク評価 | Probabilistic risk assessment |