電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
N19007
タイトル(和文)
加振実験による4導体送電線の振動特性の実測とその再現解析による解析モデルの精度検証-3次元非線形有限要素解析コードCAFSSを用いた検討-
タイトル(英文)
Measurements of vibrating characteristics of 4-bundled conductor by excitation experiments and accuracy evaluation of analysis model by its reproductive simulations -Examination with 3-dimensional nonlinear finite element analysis code CAFSS-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
3次元非線形有限要素解析コードCAFSS[1]を用いた解析は,送電線のギャロッピング応答振幅の評価に広く利用されている。解析により送電線の基本的な振動特性が再現可能なことが確認されているが,固有振動数・減衰比やその振幅依存性等の定量的な精度検証,および検証結果を踏まえた解析モデルのさらなる精緻化の余地がある。また,検証に必要な試験データが十分ではないため,新たに取得する必要がある。
目 的
CAFSSの精度検証に必要な振動特性データを4導体送電線の加振実験から取得するとともに,数値シミュレーションにおける振動特性の再現性を確認する。
主な成果
1. 加振実験による振動特性に関する実測データの取得
当所の釧路試験線を対象として実験から振動特性を把握した。並進振動では固有振動数の振幅依存性はみられなかったが,捻回振動では応答振幅の増加に対して固有振動数が低下していた。減衰比は,並進振動より捻回振動の方が大きい傾向にあった。
2. 実験と解析の比較による解析モデルの精度検証
釧路試験線を対象とし,その架線条件および物性値を反映して,CAFSSにより加振実験をシミュレーションした。このとき,要素分割,境界条件,構造減衰の設定は既往の手法[1]に倣った。並進振動,捻回1ループ*1振動では,実験と解析の固有振動数およびその振幅依存性の傾向がよく一致していたが,捻回2,3ループ振動では両者の固有振動数に差異がみられた。解析モデルの捻回振動の固有振動数にはがいし連の形状が大きく影響している。このことから,捻回振動の特性を再現するには,がいし連のモデルの要素分割や境界条件の詳細な影響評価が必要であることがわかった。
また,捻回1,2ループ振動を除き,空力減衰*2の影響を考慮すると実験と解析の減衰比は近い値となったため,空力減衰を考慮した解析条件下では,電線の構造減衰への過度に高い値の設定は適切でないことが明らかになった。捻回1,2ループ振動では,空力減衰の影響を考慮してもなお,実験と解析の減衰比に差異がある。これは,解析においてがいし連や径間スペーサの構造減衰を考慮していないためであると考えられる。
今後の展開
捻回振動も含めて適切に振動特性を模擬できる解析モデルを構築するため,がいし連や径間スペーサの離散化手法,構造減衰の設定方法を検討する。
注)
*1:「ループ」とは振動の腹の数を表すものである。
*2:準定常空気力のうち物体の速度比例成分が減衰力として働くこと。風速が大きいほどその効果が大きい。
関連報告書:
[1]N10027:送電線のギャロッピング解析コードCAFSSの機能拡張とその適用事例
概要 (英文)
This report examines the accuracy of a finite element analysis code CAFSS in reproducing the vibrating characteristics. Fundamental vibrating characteristics (e.g., natural frequency, damping ratio and their amplitude dependency) were measured by excitation experiments of 4-bundled conductor. The measured data were compared with the results of simulations. The translational vibration and torsional first loop vibration can be simulated accurately because their natural frequencies and tendency of the amplitude dependency in the experiments and simulations showed the good agreements. Natural frequencies of the torsional second and third loop vibration in the simulations were, however, lower than those in the experiments. They are strongly affected by the shape of the insulator in the analysis model. Damping ratios of translational vibrations in the simulations showed good agreement with those in the experiments, if aerodynamic damping effect was concerned. When this effect is taken into account, applying extremely high value to structural damping is not appropriate. On the other hand, it is presumed that damping ratios of torsional first and second loop vibration were not reproduced because structural damping of insulators and line spacer was ignored in the simulations. Detailed investigations on modelling of insulators as well as structural damping of insulators and line spacer is needed to reproduce the vibrating characteristics of transmission lines.
報告書年度
2019
発行年月
2020/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
垂石 早紀 |
地球工学研究所 構造工学領域 |
共 |
松宮 央登 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
松島 宏樹 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
清水 幹夫 |
地球工学研究所 構造工学領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
4導体送電線 | Four-bundled conductor |
ギャロッピング | Galloping |
振動特性 | Vibrating characteristics |
有限要素解析 | Finite element analysis |
加振実験 | Excitation experiment |