電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

N19002

タイトル(和文)

腐食した送電用鉄塔鋼管部材の耐荷性能に関する検討

タイトル(英文)

Study on load resistant capacity of corroded members in a transmission steel tower

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
近年、社会基盤設備では経年化への対応が課題となっており、2025年には約半数が経年50年を迎える送電用鉄塔も同様である。経年事象のうち腐食現象が鉄塔部材の耐荷性能に及ぼす影響については、実験や解析などから評価手法が提案されているが標準的な手法は確立されていない。また、実機鉄塔の部材については様々な接合方式が採用されているが、既往検討では端部をピン固定とした事例が多く、固定条件も含めて耐荷性能の実態を分析した事例はほとんど見られない。

目的
鉄塔鋼管部材の耐荷性能に対して腐食特性と端部の固定条件が及ぼす影響を解明する。

主な成果
1. 載荷実験に基づく耐荷性能への影響分析
腐食を有する鋼管部材を対象とした単調圧縮試験に基づき、腐食特性や試験体の固定条件が最大耐荷力や変形性能に及ぼす影響を分析し、以下の知見を得た。なお、本研究では、腐食で穴があいた場合のみを対象としている。
(1) 腐食特性が及ぼす影響
断面の腐食量などの5つの腐食特性に着目した模擬腐食を試験体に与え、単調圧縮試験を実施した結果、管軸方向の腐食位置は鋼管端部に近いと耐荷力への影響が小さくなる傾向を示した。また、管軸方向に2つの腐食箇所がある場合には、腐食量の大きい側が耐荷力の低下に対して支配的となる特性を示した。
(2) 固定条件が及ぼす影響
試験体の端部固定条件をピン固定と実機固定の2種類とした実験の結果、最大耐荷力はほぼ同一となった。しかし、断面の腐食量が小さい場合、端部の固定条件により腐食箇所周辺で塑性化の進み方が変わり、変形性能の面で差異が生じる傾向が見られた。
2. 有限要素解析による再現
有限要素解析に基づく実験の再現解析の結果、使用する要素やモデル化の範囲によらず、得られた最大耐荷力は実験値と概ね一致した。一方、変形性能の評価ではモデル化範囲の影響が大きく、継手部やボルトなどの細部までモデル化することが必要である。以上より、今後実施するパラメトリックスタディへの有限要素解析の適用性を確認した。

今後の展開
断面内の腐食個数など、実験で扱わなかった条件を検討するため、有限要素解析を用いたパラメトリックスタディを行い、腐食特性が及ぼす耐荷性能への影響解明を進める。

概要 (英文)

In this study, load resistant capacity which a corroded member of a transmission steel tower has was discussed. In recent years, it has been required that maintenance methods were more rationalized because of a number of aging infrastructures increasing. In terms of load resistance capacity of a transmission steel tower, evaluation methods of a corroded member load resistance were proposed based on experimental and analytical researches. However, a standard evaluation method of the member with corrosion was not established. Therefore it was necessary that evaluation of corrosion characteristics on the load resistant capacity of the tower member was fully investigated. For this purpose, compressive strength tests of corroded tower members were conducted in order to investigate effect of the corrosion characteristics and the support conditions on the load resistant capacity. As the experimental results, effects of corrosion characteristics, namely corrosion size, corrosion position in a tower member, a number of corrosions on the tower member and etc., on the load resistant capacity were clarified. In addition, the tower member with two gusset plate jointed ends exhibited better deformability than the member with pinned ends. Moreover, comparison between experiments and analytical results show a ratio of tower member buckling forces, with and without corrosion, was an almost constant not depending on used element type, shell or sloid.

報告書年度

2019

発行年月

2019/11

報告者

担当氏名所属

佐藤 雄亮

地球工学研究所 構造工学領域

石川 智已

地球工学研究所

キーワード

和文英文
送電用鉄塔 transmission steel tower
経年 aging
腐食 corrosion
耐荷性能 load resistant capacity
有限要素解析 finite element analysis
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