電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

N19001

タイトル(和文)

高解像度の長期気象・気候データベースCRIEPI-RCM-Era2による濡れ時間マップの整備

タイトル(英文)

Development of map for time of wetness based on reanalysis climate data base with long term and high resolution, CRIEPI-RCM-Era2

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
架空送電設備の維持・管理計画の立案に際して,各鉄塔の腐食進展度合いを推定するための大気腐食環境マップの整備が望まれている.大気腐食環境の指標の一つである濡れ時間について,算定に必要となる相対湿度および気温の日変化を考慮しうる時系列データを蓄積している観測地点は少ないことから,国際規格(ISO9223)は,相対湿度および気温の年平均値による間接的な算定法(間接法)を提示している.しかし,この算定法は,四季で気象の特徴が顕著に変化する日本では大きな誤差を含み,その改良を課題としていた.一方,当所では,高解像度で長期の気象を再現したデータベースとして,CRIEPI-RCM-Era2を作成している.本データベースは,水平方向5km解像度で気温・相対湿度を1時間毎で保有しており,相対湿度および気温の日変化を考慮しうる時系列データにより直接的に算定した濡れ時間のマップ整備の可能性を有する.

目 的
CRIEPI-RCM-Era2の相対湿度および気温の時系列データにより直接的に算定(直接法)される濡れ時間の再現性を把握し,日本全域を対象としたマップを整備する.

主な成果
1. 濡れ時間の再現性把握
CRIEPI-RCM-Era2による地上(2m)気温,相対湿度および濡れ時間年間累積値の気象官署地点での20年間平均値を観測データによる値と比較した.両者の相関係数が,地上気温で0.99,相対湿度で0.73,濡れ時間で0.65となり,いずれも正の相関を有すること, 緯度に依存した増減などの空間分布にも整合を有すること,を把握した.
2. 濡れ時間マップの整備
日本全域(南西諸島を除く)を対象に濡れ時間の空間分布を把握するためのマップを整備した.海塩粒子の飛散量の季節依存性[2]も勘案して,年間だけでなく季節ごとの値も対象とした.濡れ時間は,季節に依存し冬季において小さな値となること,その傾向が高緯度域でより顕著となることを明らかにした.間接法による算定は,この冬季の乾燥状態を再現することができず,腐食量推定の誤差要因となることを確認した.

今後の展開
これまでに検討を進めてきた海塩飛散量マップなども用いて送電設備を対象とした腐食量推定および腐食実態との整合を分析する.また,濡れによる腐食が顕著な鋼管内面を対象とした評価手法への拡張を目指す.

概要 (英文)

Aiming to develop evaluation methods for estimating corrosion rate of transmission towers, we have supplied a map for temporal and spatial characteristics of time of wetness, which is an important parameter on an atmospheric corrosion environment. The reproducibility of high-resolution and long-term meteorological data, CRIEPI-RCM-Era2, which was produced by a dynamical downscaling with a numerical weather forecasting and analysis system, NuWFAS, for spatio-temporal distributions of time of wetness (TOW) was discussed in details. The special attention was paid to the effectiveness of introduction of a direct estimation for TOW by using the data of time-series of air temperature and relative humidity in CRIEPI-RCM-Era2 with temporal resolution of an hr. The estimated values of the TOW agreed well with those with observation data at the meteorological stations, i.e., the correlation coefficient between the value with CRIEPI-RCM-Era2 and observations was 0.65. Also, the indirect estimation with the annual average temperature and relative humidity which was proposed by the ISO, apparently gave over-estimation of TOW, especially in the northern region of Japan in winter, which yields severe corrosion environment with sea salt particles.

報告書年度

2019

発行年月

2019/07

報告者

担当氏名所属

服部 康男

地球工学研究所 流体科学領域

平口 博丸

地球工学研究所

橋本 篤

地球工学研究所 流体科学領域

須藤 仁

地球工学研究所 流体科学領域

中尾 圭佑

地球工学研究所 流体科学領域

北野 慈和

地球工学研究所 流体科学領域

谷 純一

材料科学研究所

堀 康彦

電力技術研究所 気体絶縁・放電現象領域

キーワード

和文英文
鉄塔 Transmission tower
鋼管 Steel pipe
大気腐食 Atmospheric corrosion
濡れ時間 Time of wetness
数値気象予測 Numerical weather prediction
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