電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
N17015
タイトル(和文)
北海道道東の単導体送電線における雪害事象観測-2008~2015年度冬季の観測結果-
タイトル(英文)
Snow accretion observations of a single-conductor transmission line in eastern Hokkaido: Observation results for the winter seasons of 2008-2015
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
降雪が多い地域の単導体送電線では,電線への過大な着雪による支持物損壊やギャロッピングによる短絡被害を防ぐために,難着雪リング,カウンタウェイト,相間スペーサなどの対策品が用いられている.ただし,着雪は稀にしか発生しないため,対策品の効果を明確に示すデータは十分に取得されておらず,雪害につながる各事象の実態およびその発生条件自体にも未解明な点が残る.そこで,当所では電力各社の協力の下,全国各地での観測を行い,強い風を伴う湿型着雪が発生し易い北海道A線では,異なる対策品設置径間の比較観測を,2008~2015年度の8冬季にわたり実施してきた.
目 的
北海道A線の観測データに基づき,単導体送電線での雪害事象の実態を把握し,着雪発生時やギャロッピング発生時の気象条件,および,各種対策品の効果を明らかにする.
主な成果
1. 湿型着雪条件下の単導体送電線で起こり得る事象の把握
8冬季にわたる長期観測により,21件の湿型着雪事例(最大着雪量:1.6kg/m)を観測した.また,これまで実測された前例がほとんどない,湿型着雪条件下でのギャロッピングを捉えた多数のデータ(最大鉛直変位全振幅:4.3m)や,落雪時のスリートジャンプ(最大電線跳ね上がり量:3.5m)などの特徴的な事象に関するデータも蓄積できた.
2. 着雪発生時やギャロッピング発生時の気象条件
着雪成長時の気温と相対湿度は,当所で提案した雨雪判別式に基づく着雪タイプ区分チャートにおいて,湿型着雪が発生し易いとされる気温帯と整合することを確認した.また,ギャロッピングは電線に直交する風速が7m/s程度以上となる場合に発生しており,その風速条件下では風速の増加に伴い応答振幅が大きくなること,着雪量が0.1kg/m未満と少なくても大振幅となり得ること,を示した.
3. 各種対策品設置径間での着雪量低減効果およびギャロッピング抑制効果
電線のねじれを抑制するカウンタウェイトや相間スペーサを難着雪リングと併用することで,最大着雪量が低減されることを確認した.これは,電線がねじれ難いことで着雪が一方向に発達して,脱落し易くなることに起因している.一方で,着雪が一方向に発達することで,カウンタウェイト設置径間ではギャロッピングの発生が助長されるが,相間スペーサ設置径間ではカウンタウェイト設置径間に比べて振幅が抑制されることを確認した.強い風を伴う湿型着雪が発生する地点では,着雪およびギャロッピングの両者を見据えた対策が重要となり,難着雪リングと相間スペーサの併用が最も対策効果に優れることを示した.
概要 (英文)
The field observation results of wet-snow accretion and galloping on a single-conductor transmission line in eastern Hokkaido are described. We compared the snow accretion amount and oscillation amplitude of the lines with different countermeasures by combining snow-resistance rings, counterweights, and interphase spacers. During the winter seasons from 2008 to 2015, a total of 21 wet-snow accretion events were observed. These events included snow accretion with an amount of up to 1.6 kg/m, galloping with a vertical oscillation amplitude of up to 4.3 m, and a sleet jump with a height of 3.5 m. The observed results indicate that the combination of air temperature and relative humidity during wet-snow accretion agree well with those predicted by the method based on the concept of precipitation type classification. Furthermore, galloping occurs when wind speed is more than 7 m/s, and the amplitude of the response increases with wind speed. Galloping with a large amplitude can occur even if the snow accretion amount is low. We investigated the effect of each countermeasure. The amount of snow accretion was significantly reduced for the lines with the counterweight and interphase spacer, which suppressed the rotation of the conductor. The amplitude of galloping for the line with the interphase spacer was suppressed by approximately 40% compared with the line on which the counterweight was installed.
報告書年度
2017
発行年月
2018/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
松宮 央登 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
市川 英治 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
麻生 照雄 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
守護 雅富 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
西原 崇 |
企画グループ |
共 |
清水 幹夫 |
地球工学研究所 構造工学領域 |
共 |
杉本 聡一郎 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
協 |
松島 宏樹 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
架空送電線 | Overhead transmission line |
着雪 | Snow accretion |
ギャロッピング | Galloping |
観測 | Field observation |
単導体 | Single conductor |