電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
N17012
タイトル(和文)
高解像度・長期気象・気候データベースCRIEPI-RCM-Era2における地面近傍の強風の時空間構造および極値の再現性
タイトル(英文)
Reproducibility of high-resolution and long-term meteorological data CRIEPI-RCM-Era2 for spatio-temporal structure and extreme value of strong wind near ground
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
送電設備の耐風設計において,台風時などの強風時の風荷重算定に用いる風向別極値風速マップが検討されている.マップの作成には,極値を推定するための長期(数十年程度)にわたる収録期間とマップ化のための高解像度(10km程度)の空間分解能を有する地上風速データが必要となる.一般的に,長期間収録されている気象官署位置での観測データが利用される.各気象官署位置の間隔が10kmより大きいため,空間内挿処理が併用される.空間内挿処理への活用が期待される高解像度長期気象気候データベースとして,当所ではCRIEPI-RCM-Era2を完備し,風速の再現性について,全気象官署の年平均値が観測値に対して1.2ms-1の差異に収まることを確認している[1].しかし,推定極値に関する観測への整合には未解の部分を残している.
目 的
送電設備の耐風設計用極値風速マップ作成への活用を視野に,CRIEPI-RCM-Era2の推定極値について観測に基づく値との整合を明らかにする.
主な成果
1. 台風時の強風の時空間構造の再現性
極値推定に利用する風速データとして,CRIEPI-RCM-Era2の台風時の地表面近傍の風速の時空間構造の再現性を調べた.顕著な強風被害を伴った主要台風(2004年台風16号・18号)を検討対象とした.空間解像度・計算結果保存時の時間間隔の異なる2つのデータセット(D01:15km・3hr, D02:5km・1hr)を用いることで高解像度化の効用を論じた.地上風速の空間分布およびウェーブレット解析による時系列データの精査から,D02の風速において,山岳域などの地形起伏を捕捉する5km空間解像度による空間分布だけでなく,台風の大きさと移動速度から定まる経時変化を捕捉する1hr時間間隔により期間最大値にも再現性の向上が確認された.
2. 極値の再現性
データセットD02について53年にわたる日本全域の地上風速を対象に風向別極値推定を行った.推定された極値は官署位置において観測値に基づく推定値に対して正の相関を呈すること,相関係数は0.100.58となり,季節(高温季/低温季)や風向に依存性を有すること,を確認した.また,その空間分布において山岳部風下側においても強風となる箇所があることを把握した.
今後の展開
CRIEPI-RCM-Era2の推定極値の不確かさに留意しつつ,山岳部風下側での強風域形成といった特徴的な空間分布も考慮した風向別極値風速マップを検討する.
概要 (英文)
The reproducibility of high-resolution and long-term meteorological data, CRIEPI-RCM-Era2, which was produced by a dynamical downscaling with a numerical weather forecasting and analysis system, NuWFAS, for spatio-temporal structures and extreme values of strong winds near the ground with approaching and passing typhoons was discussed in details. Special attention was paid to the grid dependency. The spatial distributions and spectral analysis for time-series of strong wind speeds showed that the data with the spatial resolutions of 5km, corresponding to horizontal grid spacing of NuWFAS and the time interval of data storing the output from NuWFAS has a capability to grasp the local wind reinforcement due to topological effects and also the peak of unsteady wind speeds (maximum values of 10 min average wind speed). The spatial distribution of estimated extreme values of wind speeds, which agreed with those of observations at the locations of meteorological observation sites, indicated that the local strong wind areas appear in lee-sides of mountainous areas; this is probably caused by meteorological effects, such as stable stratification atmosphere, on vertical structures.
報告書年度
2017
発行年月
2018/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
服部 康男 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
北野 慈和 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
橋本 篤 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
平口 博丸 |
電力中央研究所 |
共 |
野村 光春 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
早田 直広 |
地球工学研究所 構造工学領域 |
共 |
石川 智已 |
地球工学研究所 構造工学領域 |
協 |
須藤 仁 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
協 |
中尾 圭佑 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
協 |
杉本 聡一郎 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
鉄塔 | Transmission tower |
強風 | Strong wind |
台風 | Typhoon |
耐風設計 | Wind resistance design |
数値気象予測 | Numerical weather prediction |