電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

N17009

タイトル(和文)

高解像度・長期気象・気候データベースCRIEPI-RCM-Era2で解析される山岳域風下側における強風域の再現性評価

タイトル(英文)

Evaluation of a Long-Term High-Resolution Reproduction Dataset CRIEPI-RCM-Era2 for Simulating Leeward Extreme Winds in Mountainous Areas

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
送電用鉄塔の耐風設計で参照される基本風速マップは、現行の風荷重指針において、気象官署における観測値から求めた風向別の風速極値により作成される。気象官署地点以外の基本風速は、気流解析により推定されるが、この手法では気象学的要因による風速の増幅を十分に加味できないという課題が挙げられている。そこで当所では、気流解析の代わりに、領域気候モデルを用いた過去の気象場の計算結果(高解像度・長期気象・気候データベースCRIEPI-RCM-Era2)をもとに、基本風速マップを作成する検討を進めている。この計算結果では、観測実績の少ない山岳風下側に高風速域の形成が確認されており、その発生機構の解明と実現象との整合性に関する検証が望まれている。

目的
CRIEPI-RCM-Era2で解析される山岳風下側における主要な強風地点および事例を分析し、さらに、その発生機構を解明する。また、強風の発生位置と強度について評価する。

主な成果
気象庁メソ客観解析データ(MANAL)との比較から、CRIEPI-RCM-Era2に見られる代表的な高風速域として、南アルプス・剱岳・白山(標高3000m程度)を分析し、典型的な強風事象について以下の結果が得られた。
1.強風事例の気圧配置の分析
東風、南東風、南風の強風事象において、それぞれ山岳の南西側、西側、北西側に、台風や急速に発達する低気圧などが存在するという、共通した特徴を得た。
2.強風の発生機構
対象とした山岳風下側の強風地点では、くだり斜面に沿った空気塊の移動や上空における低風速域の形成、風上側に対する風の増速・気温上昇が視認される。これらは他の地域にて報告されているおろし風の特徴と合致しており、おろし風の発生機構による強風が解析されることがわかった。
3.強風の発生位置と強度の評価
山岳風下側における強風域の分布は、CRIEPI-RCM-Era2とMANALで類似する。ただし、その風速値の大きさには差があり、定量性については検証が必要である。

今後の展開
強風の強度の推定について、領域気候モデルの地形に対する感度を精査するなど、より定量的な検証を進める。また、強風の季節性や風向特性を勘案した再現期待値の算定手法を検討し、基本風速マップを改良する。

概要 (英文)

Directional wind load is one of the reference data in the design protocol for transmission towers. Lots of transmission towers are located in mountainous areas, where few ground observatories are operated. It is difficult to interpolate and to estimate the wind speeds in these areas only from the surrounding observational data. One of possible approaches to this problem would be the use of numerical calculation by dynamical downscaling, and the previous study attempted to utilize the long-term high-resolution reproduction dataset CRIEPI-RCM-Era2, which is the meteorological dataset calculated over Japan after September 1957. In this study, we evaluate the reproducibility of extreme wind events in CRIEPI-RCM-Era2 over typical mountains such as the Minami-Alps, Tsurugidake, and Hakusan, compared with mesoscale analysis data (MANAL) by Japan Meteorological Agency. Extreme winds occur when upwind air mass descends along the leeward slope of mountains with the approach of a tropical cyclone or an extratropical cyclone. Furthermore, the spatial distribution of extreme wind speeds has some similarity between the two datasets. These results suggest that extreme wind speeds analyzed relatively record higher values than these surrounding areas.

報告書年度

2017

発行年月

2018/04

報告者

担当氏名所属

北野 慈和

地球工学研究所 流体科学領域

服部 康男

地球工学研究所 流体科学領域

橋本 篤

地球工学研究所 流体科学領域

野村 光春

地球工学研究所 流体科学領域

早田 直広

地球工学研究所 構造工学領域

石川 智已

地球工学研究所 構造工学領域

キーワード

和文英文
基本風速マップ Basic Wind Speed Map
CRIEPI-RCM-Era2 CRIEPI-RCM-Era2
局地風 Local Wind
風向別風速極値 Directional Extreme Wind Speed
数値気象予測モデル Numerical Weather Prediction Model
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry