電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

N17003

タイトル(和文)

数値流体解析による鉄塔鋼管内部腐食環境の予測(その1)-海塩付着量・分布推定のための気流解析-

タイトル(英文)

Prediction of corrosion environment inside of steel pipe of transmission tower with computational fluid dynamics (part1) - Air flow simulation for estimating deposition of sea salt particles

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
送電設備の維持・管理のため,鋼管鉄塔での鋼管内面の腐食性状の検査が行われる.この検査では,現地における内視鏡観察などに多くの工数を要する場合もあり,合理化が望まれている.合理化につながるものとして,腐食性状の支配因子である海塩粒子の鋼管内表面での侵入域の事前推定がある.事前推定手法の一つに,数値流体解析による気流シミュレーションが挙げられる.海塩粒子の評価鉄塔地点への輸送量を推定した後,鋼管内表面の付着量分布を見積もる手順が考えられる.しかし,海塩粒子の鋼管内面での進入域を定める鋼管内表面のごく近傍の気流性状(壁面せん断応力分布)の再現性には,十分な知見が得られていなかった.

目 的
鋼管内表面の壁面せん断応力分布について,その再現に適した気流シミュレーション手法の選定とともに自然風に見られる風速・風向変動や鋼管端部形状の影響を把握する.

主な成果
鉄塔構造の模擬に適した有限体積法に基づくオープンソースコード(OpenFOAM)を用いて,鋼管端部の継ぎ手構造などを取り扱うための非構造格子の作成手順を整理した後,当所横須賀地区での鋼管暴露試験を対象としたシミュレーションを遂行し,下記の知見を得た.
1. 気流シミュレーション手法の選定
鋼管内表面の壁面せん断応力分布に影響する乱流輸送過程のモデル化に関して,実用事例が豊富な6種類の手法(RANSモデル)の比較において,流入端部近傍での壁面せん断応力の急増への予測に顕著な差異が認められた.鋼管内表面ごく近傍の乱流輸送過程を直接的に取り扱う手法(低Re数型k-e Launder-Sharmaモデルと高解像度格子との組み合わせ)が,実用的な計算負荷と壁面せん断応力分布の再現性を有した.
2. 風の条件や鋼管端部形状の影響評価
鋼管内表面の壁面せん断応力は,周方向に対して,鋼管外部での風向・風速の変動(乱流強度)および防雀板や継ぎ手の有無などの端部形状に依存した分布となった.一方,軸方向に対して,いずれの条件においても,鋼管端部近傍から数十cmでのみ値の急増を呈した.これは,短期間暴露試験での鋼管内海塩粒子付着量が,端部から30cm内部の位置で1/10以下まで急減する観測結果と整合する.

今後の展開
鋼管内面での腐食環境を推定するため,海塩粒子や熱・水分の輸送モデルを開発する.

概要 (英文)

Aiming to develop evaluation methods for corrosion behavior in a steel pipe of a transmission tower, we have performed numerical simulations for air flow inside of a pipe for estimating deposition distributions of sea salt particles on a surface. The special attention was paid to the behavior of shear stress predicted by a turbulence model, which corresponds to the deposition of sea-salt particles with small diameters. First, a benchmark test among 6 turbulence models used in engineering applications was carried out; the Launder-Sharma model, which is a famous low-Re type RANS model has a capability to capture separation flows at the edge of the pipe and rapid increases and decreases in the shear stress of entrance regions with relatively small CPU costs. The simulations with Launder-Sharma model under various wind conditions show that the large values of shear stress appear at the entrance region, whereas the distribution in circumferential directions strongly depends on the wind directions. The shear stress (air flow rate) in the pipe varies with the wind directions and the turbulence intensity included in approach flows near the inlet of the pipe. Also, the attachments of the pipe strongly affect the distribution and also the air flow rate, while the large values of shear stress only appear at the entrance region.

報告書年度

2017

発行年月

2017/11

報告者

担当氏名所属

服部 康男

地球工学研究所 流体科学領域

須藤 仁

地球工学研究所 流体科学領域

中尾 圭佑

地球工学研究所 流体科学領域

平口 博丸

電力中央研究所

長沼 淳

材料科学研究所 電気化学領域

大原 信

環境科学研究所 大気・海洋環境領域

正木 浩幸

環境科学研究所 環境化学領域

谷 純一

材料科学研究所 電気化学領域

堀 康彦

電力技術研究所 高電圧・絶縁領域

石川 智已

地球工学研究所 構造工学領域

足立 和郎

電力技術研究所

布施 則一

電力技術研究所 高電圧・絶縁領域

キーワード

和文英文
鉄塔 Transmission tower
鋼管 Steel pipe
大気腐食 Atmospheric corrosion
海塩付着 Sea salt deposition
数値流体解析 Computational fluid dynamics
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