電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
N17001
タイトル(和文)
物質移行‐化学反応連成解析を用いた石英の溶解挙動の評価-溶解速度式の変動要因に関する一考察-
タイトル(英文)
Estimation of quartz dissolution using reactive transport modeling - A cause of variation in previous dissolution rate laws -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
放射性廃棄物処分施設で用いられるベントナイトの長期変質挙動の予測のためには、物質移行-化学反応連成解析等による解析的な評価が必要であり、その予測精度を高めるためには、入力に用いる溶解速度などのパラメータを適切に定める必要がある。ベントナイトの主要構成鉱物のひとつである石英の溶解速度は、間隙水中のSi濃度に影響を与えるため、モンモリロナイトの溶解速度や間隙中の二次生成物の沈殿に影響を与え、結果として、ベントナイトの透水性ならびに膨潤性に影響を及ぼす。そのため、著者らは、これまでに石英の溶解速度とその経時変化を実験的に明らかにしてきた[1]。しかし、その実験で得られた溶解速度式や既往の溶解速度式にはバラつきがあるため、解析による予測の精度向上のためにその変動要因を明らかにする必要がある。
目 的
物質移行-化学反応連成解析(CrunchFlow)を用いて著者らが示した石英の溶解実験[1]の再現解析を反応比表面積に着目して実施し、既往の溶解速度式の変動要因を明らかにするとともに、必要に応じて実験方法の改善点を提案する。
主な成果
1.再現解析:幅広いpH範囲を対象に既往の溶解速度を取りまとめているBrantley et al. (2008) [2]の溶解速度式を用いて、著者らの実験結果の再現解析を行った。その結果、石英の反応比表面積を3種類仮定した方が1種類のみを仮定した場合より、実験結果を精度良く再現できた(図1)。前者の仮定の妥当性は、試料の走査型電子顕微鏡観察の結果、比較的大きな粒子の他に、石英の微細粒子や反応性の高い破断面を有するものが観察されていることで裏付けられた(図2)。
2.溶解速度式の変動要因:既往の溶解速度式の変動要因のひとつとして、十分考慮されていなかった試料に含まれる石英の微細粒子の存在が影響している可能性がある(図3)。
3.実験方法の改善点:解析パラメータである溶解速度式を取得する実験的検討では、微細粒子や破断面の正確な比表面積を精度良く評価することが困難であることから、これらを除去する等の前処理を行った試料を用いるなどの工夫が必要と考えられた。また、微細粒子を含む場合には、それが溶解するまで実験期間を長くするなど別途工夫が必要と考えられた。
今後の展開
鉱物の溶解挙動と同様に重要な解析パラメータである二次生成物の沈殿に関する検討を行うとともに、締固めベントナイトの変質挙動を実験・解析の両手法から評価する。
概要 (英文)
One dimensional reactive transport modeling was used to reproduce the experimental data of quartz dissolution reported by Watanabe and Yokoyama (2016) to investigate the behavior of quartz dissolution and discuss the reasons for the variation of the previous rate laws. In the modeling, the rate laws given by Brantley et al. (2008) were used. To reproduce the experimental data using the rate law, it was necessary to implement three fractions with their respective reactive surface areas. From the results, it is inferred that (1) the sample used by Watanabe and Yokoyama (2016) consisted of at least three quartz fractions with different reactive surface areas and/or reactivity and that (2) the dissolution of the fine fraction contained in the bulk sample affected the true steady-state Si concentration, which is basic to calculate the quartz dissolution rate. Consequently, one of the reason for the variation of the previous rate laws is the existence of a particle size distribution in the quartz sample. Therefore, in order to reduce the variation of the rate laws, it is suggested to remove the finest fraction(s) by a sample pretreatment.
報告書年度
2017
発行年月
2017/10
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
横山 信吾 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
共 |
渡邊 保貴 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
溶解速度 | Dissolution Rate |
pH依存性 | pH Dependence |
粒度分布 | Particle Size Distribution |
物質移行-化学反応連成解析 | Reactive Transport Modeling |
石英 | Quartz |