電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
N07041
タイトル(和文)
高温負荷による普通・低熱ポルトランドセメント硬化体の細孔構造変化とイオン拡散性に及ぼす影響
タイトル(英文)
Changes in Pore Structure of Hardened Ordinary and Low-heat Portland Cement Paste Due to Thermal Load and its Influence on Ionic Diffusivity
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
放射性廃棄物処分では,放射性核種の崩壊熱が人工バリアの核種移行抑制機能に悪影響を及ぼさないよう設計・評価検討が進められている。その影響が有意と認められれば廃棄体の収納や廃棄体容器の設計変更等で対応が取られるものと考えられるが,より合理的な評価を実施するためにも廃棄体に近接する人工バリアへの熱影響を十分把握しておく必要がある。熱負荷の程度によってはセメント系材料を構成するセメント水和物の化学的性質や細孔構造の変化を生じる場合もあり,拡散係数や分配係数といったバリア性能に及ぼす影響を定量評価することが求められている。
本研究では,想定される処分環境を基に設定した温・湿度条件が,普通および低熱ポルトランドセメント硬化体の細孔構造変化に及ぼす影響を実験的に分析評価した。
その結果,湿度が40%RHと比較的低い条件における60℃や80℃の高温負荷は,セメント水和物からの水和水逸散によってセメントペースト供試体のしきい細孔径は大きくなり積算細孔量が増加した。この傾向は,セメントの種類や水セメント比によらず,負荷温度が高いほど,負荷期間が長いほど顕著であった。また,水セメント比35%の場合,水分供給が比較的良い条件(90%RH,水中)での高温負荷では,負荷温度が高いほど,負荷期間が長いほどしきい細孔径は小さくなったが,直径10nm程度以下の径の細孔量が増加し,積算細孔量が増加した。この現象には,高温負荷によるカルシウムシリケート水和物(以下C-S-H)の組織構造変化が影響していることも一因として挙げられるが,高温負荷による水酸化カルシウム含有量の増加,つまり未反応セメントの水和進行が認められたことから,高温下で生成されるC-S-Hの形態が異なるなどセメントの水和反応が関与している可能性が示唆された。一方,水セメント比55%の場合では,水分供給が比較的良い条件においても,高温負荷によりしきい細孔径が大きな径へとシフトする傾向が認められた。
90%RH雰囲気で6ヶ月間高温負荷試験を実施した普通ポルトランドセメント供試体では,高温負荷による積算細孔量の増加が酢酸イオンの有効拡散係数の上昇につながることを明らかにした。また,積算細孔量の増加に対する有効拡散係数の上昇割合は,水セメント比の増大や溶脱による拡散係数の上昇と比較し,高温負荷を受けた場合の方が大きいことを示した。約10nm以下の径の細孔量増加は,その程度の径の細孔を形成するC-S-Hの変質に由来し,セメント硬化体のマトリックスを成すC-S-H自体が高温負荷によって連結性の高い細孔構造を形成してしまうことにより,拡散係数の上昇割合が大きくなったものと考えられた。
今後は,より広範囲の温湿度条件での細孔構造変化を把握し,高温負荷による細孔構造変化が拡散係数に及ぼす影響のモデル化を視野に入れたメカニズムの解明を図る予定である。
概要 (英文)
Exposure tests of hardened ordinary and low-heat Portland cement paste specimens to elevated temperature conditions such as 60 or 80 degrees Celsius were conducted to gain a better understanding of the influence of radioactive decay heat generated in wastes on the performance of a cementitious barrier system for low-level radioactive waste disposal.
The microstructure of cement paste specimens, which were exposed to high temperature conditions, was determined by mercury intrusion porosimetry in order to elucidate the relationship between thermal alteration and the ion diffusivity of the cementitious barrier. It was found that at low humidity such as 40% RH at 60 and 80 degrees Celsius can increase pore volume and result in a shift to larger pore sizes. Even if exposed to higher humidity such as 90% RH or even to water immersion, under high temperatures of 60 and 80 degrees Celsius, it was observed that pore structure was densified due to hydration of unreacted cement but total pore volume increased. Moreover, it was found that the acetate ion diffusion coefficient of cement paste specimens exposed to 60 or 80 degrees Celsius at 90% RH increased compared with that of specimens before exposure.
報告書年度
2007
発行年月
2008/07
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
蔵重 勲 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
共 |
吉田 崇宏 |
原子力技術研究所 放射線安全研究センター |
共 |
千田 太詩 |
原子力技術研究所 放射線安全研究センター |
共 |
廣永 道彦 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
協 |
杉山 大輔 |
原子力技術研究所 放射線安全研究センター |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
放射性廃棄物処分 | Radioactive Waste Disposal |
セメント系材料 | Cementitious Materials |
バリア性能 | Barrier Performance |
熱変質 | Thermal Alteration |
細孔構造 | Pore Structure |