電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
N07012
タイトル(和文)
地下水年代測定評価技術の開発(その6)-低透水性岩盤における地下水抽出法の提案-
タイトル(英文)
Research and development on groundwater dating (Part 6)-Extraction of pore water from low permeability rocks-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
透水性の低い岩盤において、地下水の特性を評価するためには、岩石の間隙水として存在する地下水を何らかの方法で抽出する必要がある。岩石から間隙水を抽出する手段として、圧縮抽水法は最も有効な方法の一つと考えられる。しかし、抽出の過程において、地下水の組成が変化する可能性がある。このため、圧縮抽水を実際の地下水評価のために用いるには、圧縮圧力と地下水水質の関係および水質が変化するメカニズムを明らかにする必要がある。
本研究では、地下水に溶存する主要イオンであり、岩石への吸脱着がほとんど起こらない塩化物イオンを対象に着目し、圧縮抽水における濃度変化について詳細な情報を取得し、濃度変化のメカニズムを明らかにする。これによって、岩石試料への圧縮抽水法の適用性向上を図った。具体的には、天然の岩石試料や人工的に間隙水を置換した標準試料を圧縮抽水し、抽出された間隙水の塩化物イオン濃度や圧縮抽水後における岩石中のスメクタイトの構造を分析した。
上記の分析の結果、下記の知見を得た。
1. 圧縮圧力に伴う塩化物イオン濃度の変化
天然岩石試料と標準試料ともに、圧縮抽水で得られる間隙水中塩化物イオン濃度は圧縮圧力の増大に従って減少することを明らかにした。最も影響が顕著な場合、同じ岩石から得られた間隙水でも、塩化物イオン濃度に約3倍もの差が生じた。
2. 塩化物イオン濃度減少メカニズムの解明
以下に挙げる3つの実験事実から、圧縮圧力の増加に伴い塩化物イオン濃度が減少するメカニズムは、抽出されたスメクタイト層間水による原間隙水の希釈であることを明らかにした。
(1)圧縮圧力とスメクタイト層間距離の関係
X線回折による測定結果から、圧縮抽水における圧力の増大に従って、岩石に含まれるスメクタイトの層間距離が減少することがわかった。
(2)スメクタイト含有率と塩化物イオン濃度の減少の関係
スメクタイト含有率の異なる岩石試料を圧縮抽水した結果、スメクタイト含有率が大きい試料ほど、圧力増大に伴う塩化物イオン濃度の減少が顕著であった。さらに、スメクタイトを全く含まない試料においては、圧力が増大しても抽出された塩化物イオン濃度は変化しなかった。
(3)ベントナイト標準試料における定量的な検証
ベントナイト粉末を塩化物イオン濃度既知の水に分散させて、圧縮抽水用ベントナイト試料を作製した。この試料におけるスメクタイト層間距離と圧縮圧力の関係から算出した塩化物イオン濃度の計算値は、実際に得られた間隙水の評価値とよく一致した。
3. 間隙水塩化物イオン濃度を正確に評価するための圧縮抽水法
間隙水塩化物イオン濃度を正確に評価するためには、測定に十分な量の間隙水が得られる圧力のうち、最も低い圧力で圧縮抽水することが重要である。スメクタイトの層間水が排出されるより低い圧力で間隙水の抽出が可能な場合、間隙水の塩化物イオン濃度をほぼ正確に評価することが可能である。高圧でしか十分な量の間隙水が得られない試料では、スメクタイト含有量と層間距離から、層間水の影響を定量的に議論することが可能である。
概要 (英文)
The squeezing method is one of the most promising methods to obtain the pore water from rock cores. However, in previous studies, ion composition of squeezed water was found to have dependency on squeezing pressure.
In this study, squeezing method was applied to both natural and artificial standard samples and concentration of Cl ion in squeezed water and basal spacing of smectite included in samples were investigated as a function of squeezing pressure. Furthermore, bentonite sample was prepared by suspending the bentonite powder in NaCl solution and supplied for squeezing. The relation between concentration of Cl ion in squeezed water and the amount of inter-layer water squeezed from smectite was discussed quantitatively, for this bentonite sample.
The concentration of Cl ion in squeezed water was found to decrease with increase of squeezing pressure. The inter-layer water from smectite is assumed to be one of the most effective cause of the decrease of Cl ion with increase of squeezing pressure, because of following 3 reasons; 1) Basal spacing of smectite included in rocks decreased with increase of squeezing pressure, 2) The decrease of Cl ion strongly depended on the amount of smectite included in rocks and no decrease was observed in glass filter sample in which no smectite is included, 3) The agreement between concentration of Cl estimated from obtained pore water and that calculated with basal spacing and amount of pore water was obtained in bentonite sample. These results indicated squeezing pressure should be limited so that basal spacing of smectite do not change during squeezing to estimate the concentration of Cl in pore water precisely.
報告書年度
2007
発行年月
2007/12
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
中田 弘太郎 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
共 |
大山 隆弘 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
共 |
東原 知広 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
共 |
長谷川 琢磨 |
地球工学研究所 バックエンド研究センター |
共 |
橘川 貴史 |
セレス |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
地下水 | groundwater |
間隙水 | pore water |
圧縮抽水 | squeezing |
塩化物イオン | chloride ion |
スメクタイト | smectite |