電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
M19002
タイトル(和文)
円筒形セルを用いた溶融炭酸塩形ダイレクトカーボン燃料電池の基礎特性
タイトル(英文)
Basic performance of tubular molten carbonate-type direct carbon fuel cells
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
低炭素社会の実現に向けて、バイオマス等の有効利用技術が求められているが、既存のバイオマス発電システムでは数十kW規模での発電効率は最大30%程度に留まる。また、近年カーボンリサイクル技術開発が推進されており、将来的に固体炭素が燃料として製造される可能性がある。一方、数十kW以下の小規模かつ高効率な発電技術としてダイレクトカーボン燃料電池(DCFC)が期待されているが、固体炭素燃料の供給や発電性能などに課題があり、実用化に至っていない。
目 的
燃料供給などの従来の課題を解決しうる新たなDCFCとして、円筒形溶融炭酸塩形DCFC(円筒形DCFC)を作製し、基礎的な発電特性を評価する。
主な成果
1. 円筒形DCFCの作製
当所独自の技術である円筒形溶融炭酸塩形燃料電池(円筒形MCFC)の製造法をもとに、発電装置を構成する燃料槽への挿入が可能となる円筒形DCFCを作製した。これにより、固体炭素燃料および酸化剤ガスの連続供給が可能となった。
2. 円筒形DCFCの基礎発電特性評価
円筒形DCFCの基礎発電特性を評価するため、活性炭を固体炭素燃料としてLi/Na炭酸塩と混合した燃料混合物を用いて発電試験を行った。
得られた円筒形DCFCの性能をMCFC性能パラメータをもとに解析した結果、MCFCと比較してアノード過電圧が大きいものの、電流密度100 mA/cm2での電圧効率注1)は74.6%とセル性能は十分に高いことがわかった。
800℃において連続発電試験を行い、円筒形DCFCは既往のDCFC(セル電圧0.4-0.95 V程度、出力密度20-70 mW/cm2程度)よりも高い1.0 V、約100 mW/cm2の出力で、24時間安定して発電できた。
3. 円筒形DCFCの発電効率試算
円筒形DCFCの発電効率(直流発電端)を試算したところ、消費された固体炭素の発熱量(100%)に対して、26.6%であった。本試算から、発電反応以外に吸熱反応によりCOが発生し、固体炭素が消費される課題が明らかとなった。
今後の展開
円筒形DCFCにおいて、温度等運転条件の最適化によるCO発生反応の抑制などによって発電効率の向上を目指す。
注1) 電圧効率 = セル電圧 / 開回路電圧 × 100 [%]
概要 (英文)
Direct carbon fuel cells (DCFCs) are expected to be useful devices that effectively utilize carbon resources. In this study, a tubular and molten carbonate-type DCFC (TMC-DCFC) was conceived and its basic performance was investigated. A way of manufacturing TMC-DCFC was established. The result of performance analysis for TMC-DCFC suggested that anode overvoltage was especially large compared with that of planar MCFC. However, the voltage efficiency of TMC-DCFC at 100 mA/cm2 was 74.6%, which was relatively high for energy conversion. Continuous power generation tests were conducted at 800C. Stable power generation of about 1.0 V and 100 mW/cm2 for 24 hours was achieved. A lot of CO was detected at the outlet of the anode. It is considered that CO was generated by the reverse Boudouard reaction between the solid carbon in the fuel and the CO2 generated at the anode. As a result of calculation based on the consumed carbon, the electrical efficiency of the TMC-DCFC was 26.6%. These results are current states of TMC-DCFC and cell performance will be improved.
報告書年度
2019
発行年月
2020/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
井戸 彬文 |
エネルギー技術研究所 エネルギープラットフォーム創生領域 |
共 |
河瀬 誠 |
エネルギー技術研究所 エネルギープラットフォーム創生領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
ダイレクトカーボン燃料電池 | Direct carbon fuel cell |
円筒型セル | Tubular cell |
溶融炭酸塩 | Molten carbonate |
バイオマス | Biomass |
廃棄物転換 | Waste to energy |