電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
L20006
タイトル(和文)
漏えい燃料における離散的な二次水素化の発生メカニズムの推定
タイトル(英文)
Estimation for generation mechanism of a discrete secondary hydriding occurred at a leaking fuel
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
2008~2010年頃に国内のPWRで、55GWd/ tU高燃焼度燃料集合体において燃料漏えいが頻発した。一次破損の原因については既に明らかにされ、対策を講じることにより再発が防止されている。ただし、大飯4号機の漏えい燃料を用いた照射後試験から、一次破損を起点にして、複数の燃料棒軸方向位置で二次水素化が発生していることが確認された。このように離散的に発生する二次水素化についての研究は進んでおらず、メカニズムの解明が必要とされている
目 的
燃料挙動解析コードを用いて二次水素化発生時の燃料状態を把握し、解析から推定される被覆内面温度を含む広い試験条件で、水素吸収特性に関する基礎データを取得する。さらに、試験データ等を基に離散的な二次水素化の発生メカニズムを推定する。
主な成果
1. 燃料漏えいが発生した燃料棒の状態把握
燃料挙動解析コードFEMAXI-8を用いて、大飯4号機のガドリニア添加燃料の燃料状態を計算した結果、線出力及び燃焼度が低いため、燃料漏えいが発生した第2サイクル末期の被覆管内面温度と燃料棒内圧は低く、ペレット被覆管ギャップ(PCギャップ)が開いていることが示された(図1)。
2. ジルカロイ‐4(Zry-4)の水素吸収特性に関する基礎データの取得
板材の水素吸収試験及び被覆管材に水蒸気を封入し酸化反応により高圧水素を発生させた二次水素化模擬試験を実施し、Zry-4の水素吸収特性に関して以下を明らかにした。なお、これらのZry-4に対して得られた結果は、微量添加物が異なるZrを主成分とする被覆管材に広く適用できると考えられる。
- 乾燥H2ガス雰囲気(2.5ppmH2O)では潜伏期間(急激な水素吸収が開始するまでの時間)後に急激な水素吸収が開始する。湿潤H2ガス雰囲気(2600ppmH2O)では、340℃以上で急激な水素吸収が開始するが、試験中に追加形成される酸化膜により水素吸収は抑制される(図2)。また、<0.1m程度の極薄い酸化膜でも有意な潜伏期間が生じ、酸化膜厚さの増加に伴い潜伏期間が延長する。
- 二次水素化模擬試験より、被覆管内面酸化膜の水素吸収抑制機能が最も低下した位置で二次水素化が発生する現象が再現された。急激な水素吸収が発生してから水素化物層が被覆管外面に到達し、貫通孔が発生(図3)するまでに5~15h程度を要することが判った。また、急激な水素吸収が発生した位置は、最高温度になる被覆管軸方向中央部付近になるとは限らなかった。これは相対的に酸化膜が厚い中央部付近の水素吸収抑制効果が高いことに原因があると考えられる。
3. 離散的な二次水素化発生のメカニズムの推定
被覆管内面温度の計算値は、一次破損孔から1m以上離れればPCギャップに水の液相は存在せず、どの位置でも二次水素化が発生し得ることを示した。一次破損孔が比較的大きな燃料棒において冷却材が複数回に分けて燃料棒内へ浸入し、下記の(a)、(b)の過程を繰り返すことにより、離散的な二次水素化が発生するメカニズムを推定した。(図4)
(a) 一次破損孔から浸入した冷却材が水蒸気になり被覆管内面で酸化反応を起こし、進行中の二次水素化が停止すると同時に、その位置の酸化膜の水素吸収に対する保護機能が回復する。その後、酸化反応が比較的長時間をかけて進行し、徐々にPCギャップ内の水蒸気はH2に置換される。
(b) 照射、高温水素等の効果で新たに損傷した酸化膜を水素が透過し、異なる位置で二次水素化が発生し、比較的短時間で進行する。この後、PCギャップは冷却材圧力より低くになり、一次破損孔から浸入した水蒸気により、二次水素化が再び停止する。
概要 (英文)
Several commercial PWR in Japan had experienced leaking fuel rods during normal operation in 2008-2010. One of leaking fuel rods, which was a gadolinia doped fuel discharged from Ohi-4 NPP, generated a discrete secondary hydriding at four axial positions. Generation and development mechanism of a secondary hydriding phenomenon was proposed as a common knowledge. However, a discreteness mechanism of secondary hydriding has not been clarified yet.
Outline of fuel conditions when leaking fuel occurred at end of second cycle in Ohi-4 NPP were calculated by the fuel performance code FEMAXI-8. Hydrogen absorption properties of Zircaloy-4 were investigated at wide range of temperature, H2/H2O ratio and oxide film thickness which include same condition as an actual secondary hydriding phenomenon. These test results show that a very thin oxide film less than 0.1m protects Zircaly-4 alloy from massive hydrogen absorption. Simple simulation tests of secondary hydriding phenomenon suggest that massive hydriding occurs though an oxide film on cladding inner surface where has a lowest protective function for hydrogen absorption. Finally, we proposed a discreteness mechanism of secondary hydriding as follows,
- decreasing of H2/H2O ratio in a pellet-cladding gap terminates massive hydrogen absorption for the first time, and a damaged oxide film on cladding inner surface was recovered by oxidation,
- massive hydrogen absorption for the second time generates though a different position on cladding inner surface with a new damage oxide film.
報告書年度
2020
発行年月
2021/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
北島 庄一 |
原子力技術研究所 燃料・炉心領域 |
共 |
中村 勤也 |
原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
二次水素化 | Secondary hydriding |
被覆管 | Cladding |
水素吸収 | Hydrogen absorption |
漏えい燃料 | Leaking fuel |
PWR | PWR |