電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

L11017

タイトル(和文)

職位と組織風土が個人の安全意識・行動への影響要因に及ぼす差異の検討(その2)-安全活動等の水平展開は一律の効果をもたらすか-

タイトル(英文)

A Study on a Difference of Influential Factors on Individual Safety Consciousness and Behavior by Duty Position and Organizational Climate: Part II

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

昨今の企業では安全意識・行動を向上させる取組み(教育や安全活動等)として、職位を問わず全社的にe-ラーニングを導入したり、他企業や社内のある事業所で効果の高かった施策を水平展開する場合が多い。しかし同じ施策でも期待通りの効果が得られない場合がある。これは、職位や職場の組織風土が異なると個人の安全意識・行動に対する影響要因やその因果構造が異なることに起因している可能性を前報にて示唆したが、この知見は一企業のみを対象とした検討に基づくものであった。そこで本研究では1) 他企業でも職位や職場の組織風土によって影響要因の因果構造に差異が認められるか、2) 職位や職場の組織風土が同じであれば、企業が異なっても影響要因の因果構造は共通か、を解明し、上述のような施策の展開方法の妥当性を検討した。
電力会社二社(A社:1604名、B社:1910名)および化学業C社(4497名)の技術系職員を対象とした質問紙調査データを用い、A、B、Cの各社において職位(a. 管理職とb. 一般職)あるいは職場の組織風土が異なる場合(c. 組織風土得点注2・低群とd. 組織風土得点・高群)の影響要因の因果構造を推定した。推定したモデルを企業ごとに比較したところ、上記1)についてはいずれの企業でも職位あるいは職場の組織風土によって因果構造が異なることが確認された。次に、a.から d.の集団別で各社の影響要因の因果構造を比較し、上記2)を検討した結果、いずれの集団でも因果構造全体(影響要因間の全ての因果関係)が三社で共通しているケースは認められなかった。
これらの結果から、個人の安全意識・行動の向上を企図した取組みの実効性向上に対して得られた示唆は以下のとおりである。①企業、職位、職場の組織風土によって個人の安全意識・行動への影響要因の因果構造が異なるため、他企業あるいは他の職位、職場で効果を挙げた取組みを水平展開しても同様の効果が期待できない場合がある。②安全施策が個人の安全行動の向上に寄与するとは限らず、情報共有の方が有効な場合もある。③安全に対する取組み(安全施策や情報共有)には組織風土が影響する場合があるため、実施時には配慮が必要である。

概要 (英文)

Recently a lot of companies introduce a company-wide safety education and measures regardless of employees' duty position and workplace characteristics. However, it is not always true that such efforts bring reasonable results. In our former report, it was suggested that what made a difference in the results was a difference of causality among influential factors on individual safety consciousness and behavior depending on employees' duty position (managers / general employees) and organizational climate of their workplace (general employees in low / high group based on average scores of question items related to organizational climate in their workplaces). The purpose of this report was (1) to verify such a difference of causality can be observed plural companies, and (2) to clarify whether the causal relations were common among employees in same duty position or workplaces with resemble organizational climate in different companies. The covariance structure analysis was applied to questionnaire data for two electric power companies (company A; N=1604, company B; N=1910) and a chemicals manufacturing company (N=4497) for estimation and comparison of models representing causality among influential factors. As for (1), the difference of causality could be observed in each company. As for (2), the causal relations were not common among same aggregations. The result also suggested some practical implications for enhancing effects of safety education and measures.

報告書年度

2011

発行年月

2012/06

報告者

担当氏名所属

長谷川 尚子

原子力技術研究所 ヒューマンファクター研究センター

キーワード

和文英文
安全意識 Safety consciousness
安全行動 Safety behavior
職位 Duty position
組織風土 Organizational climate
共分散構造分析 Covariance structure analysis
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry