電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

L11014

タイトル(和文)

気泡追跡法による個別気泡の三次元気泡速度計測手法の開発

タイトル(英文)

Development of Three-Dimensional Individual Bubble-Velocity Measurement Method by Bubble Tracking

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

1. はじめに

1.1 国産解析コードの導入
原子炉、ボイラをはじめとした各種プラントにおける最も重要な技術課題は、安全性・経済性の向上を図ることである。原子力の分野においては,原子炉想定事故やシビアアクシデント時の炉心熱流動特性を評価する安全解析精度の向上が最重要課題の一つとして挙げられる。しかしながら、我が国における原子炉安全解析は、これまで主として米国で開発された解析コードを用いて行われてきた。さらに、2009年6月に米国エネルギー省は、放射線挙動解析コードであるMCNPについて、輸出規制対象に含めた。これら解析コードの最新版ソースコードは非公開となり、コードの改造や改良はできなくなった[1]。これは、我が国における原子力技術開発や安全性評価技術の向上において、大きな障害となる可能性がある。このように、原子力解析コードの国産化は、原子力発電の技術基盤を確立するために重要であるだけでなく、我が国の原子力産業の国際進出を支える上で、早急に取り組まなければいけない課題である。

1.2 現在の最適評価コードの課題
原子炉をより適切に評価できる最適評価コードは世界標準となりつつあり、我が国でも独自に最適評価コードの開発を進める予定である[2]。最適評価コードでは、圧力容器内の三次元的取り扱い、二流体モデル、二相流動パターンに依存する構成方程式群が組み込まれており、最も厳密なモデルの一つとされている。しかし、現在の最適評価コードでは大空間内二相流など多次元性および過渡性の強い二相流挙動を高い精度で予測できない場合があるといった報告がある。現在、数値モデルの高精度化のために、気液二相流について、その流動メカニズムを詳細に見積もろうとする解析的、実験的研究が従来から盛んに行われている[3]。

1.3 界面輸送方程式の導入と課題
時間的・空間的に複雑な挙動を示す二相流を取り扱うため、数値解析では、時間的・空間的に平均化した物理量を対象とする二流体モデルが一般的に用いられている。二流体モデルでは、平均化された気液速度等を表現する基礎方程式を求め、間欠的・過渡的な特性は構成方程式により補正できる。二流体モデルでは、相間の質量、運動量、エネルギーのそれぞれの輸送が気液界面を通して行われるため、単位体積当たりの気液界面積が重要となる。
現在、界面面積の生成・消滅項を気泡の合体・分裂過程に基づき機構論的にモデル化しようとする研究が進められており、気泡流域では正確なモデル化が完成しつつある。しかし、多次元性、過渡性の大きなスラグ流、チャーン流域については、多次元・過渡を考慮した実験データが希薄であり、4センサプローブによる計測が提案されているが、局所的な計測法では、スラグ流、チャーン流の多次元的な流れを計測することは困難である[4]。また、既存のモデルと実験との比較では、ボイド率の高さ方向の分布の計算結果は非加熱系、加熱系どちらの実験結果とも良く一致するが、界面積密度(特に径方向分布)の計算結果は、非加熱系、加熱系どちらの実験結果とも一致しないという調査結果がある[5]。

1.4 研究の目的
当所では、これまで周波数解析の一つであるウェーブレット解析と相互相関分析を応用したワイヤメッシュセンサ(Wire-Mesh Sensor: WMS)信号処理手法を開発した。この計測手法により気泡サイズ毎の時間平均多次元気相速度計測が可能となり、多次元気相速度、相間摩擦係数、揚力係数、抗力係数等、解析における数理モデルを構成する係数を得るこが可能となった[6]。
過渡現象である気泡間相互作用のモデル化も界面積濃度積輸送方程式では必要とされている(図1-1)[7]。本研究では近接配置した2組のWMSから得られた二相流動計測データから、気泡を識別・分離し、2組のWMS間で気泡を追跡する信号処理手法を開発する。個々の気泡の多次元計測が可能となることで、界面積濃度輸送方程式の気泡間相互作用に関わる数理モデル作成および実験データによるモデルの比較検証が可能となる。さらに、ウェーブレット解析−多点間相互相関分析の実験データと組み合わせることで、より高精度な数値モデルの構築とその検証が可能となる。

概要 (英文)

A gas-liquid two-phase flow in a large diameter pipe exhibits a three-dimensional flow structure. Wire-Mesh Sensor (WMS) consists of a pair of parallel wire layers located at the cross section of a pipe. Both the parallel wires cross at 90o with a small gap and each intersection acts as an electrode. The WMS allows the measurement of the instantaneous two-dimensional void-fraction distribution over the cross-section of a pipe, based on the difference between the local instantaneous conductivity of the two-phase flow. Furthermore, the WMS can acquire a phasic-velocity on the basis of the time lag of void signals between two sets of WMS. Previously, the acquired phasic velocity was one-dimensional with time-averaged distributions. The authors propose a method to estimate the three-dimensional bubble-velocity individually WMS data. The bubble velocity is determined by the tracing method. In this tracing method, each bubble is separated from WMS signal, volume and center coordinates of the bubble is acquired. Two bubbles with near volume at two WMS are considered as the same bubble and bubble velocity is estimated from the displacement of the center coordinates of the two bubbles. The validity of this method is verified by a swirl flow. The proposed method can successfully visualize a swirl flow structure and the results of this method agree with the results of cross-correlation analysis.

報告書年度

2011

発行年月

2012/07

報告者

担当氏名所属

金井 大造

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

古谷 正裕

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

新井 崇洋

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

白川 健悦

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

西 義久

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

キーワード

和文英文
ワイヤメッシュセンサ Wire-mesh sensor
水空気二相流 Two-phase flow
三次元気泡速度 Three-dimensional bubble velocity
気泡追跡 Bubble tracking
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