電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
L10006
タイトル(和文)
大口径円筒管内二相流の三次元相速度分布計測手法の開発
タイトル(英文)
Development of Three-dimensional Phasic-Velocity Distribution Measurement
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
1. はじめに
1.1 研究の背景
沸騰水型原子炉の熱流動解析は、上部プレナム等、冷却材の流れを正確に評価するために一次元から多次元の解析モデルに移行しつつある。その中で、沸騰二相流を含む三次元熱流動解析コードの検証は不可欠であり、精度の良い多次元二相流動の実験データでの検証が必要である。すなわち高ボイド率で流れの非均一性が顕著かつ非定常性の強い多次元二相流における非均一性をカバーする多くの測定点を有し、流れの非定常性に対して十分高い時間分解能を持ち、さらに高温高圧条件下での運用も可能な計測システムが必要である。
1.2 従来の二相流計動測手法
二相流計測手法として、コンダクタンス法、触針法、超音波、レーザー(光)、X線やγ線などの放射線を用いた計測が活発に行われている。
コンダクタンス法は、二相流のボイド率が変われば電気抵抗が変わることを利用して、流路断面の平均ボイド率を計測する。触針法は、流路内ある点におけるボイド率計測に用いられる。触針法の計測手段としては電気抵抗の変化を用いる方法および光屈折率の変化を用いる方法等がある。超音波やレーザー(光)、X線やγ線などの放射線を用いた計測手法では、回折、散乱、減衰量、周波数変化を計測することで、二相流を計測する。これらの計測手法において高温高圧下二相流の流路内の流速分布やボイド率分布、気泡径分布を計測できる方法としては、X線やγ線などの放射線を用いた計測に限られる[1]。
1.3 ワイヤメッシュセンサを用いた二相流動計測
ワイヤメッシュセンサ(Wire-Mesh Sensor:WMS)は米国によって開発され、Prasserらによって気液二相流のボイド率計測に応用された[2-4]。WMSはワイヤ間の電気伝導率の差から断面ボイド率分布を高空間分解能かつ高速時間分解能で計測可能である。さらにWMSは、近接配置した2組の計測信号の時間差により気泡速度分布も計測可能である[5-8]。さらに高温高圧条件下での運用も可能である。これまで、大気圧条件下の水空気系の研究を中心に高温高圧条件下での研究も活発に行われてきている。
従来の手法では、上下流のそれぞれ対応する一点間での相互相関分析による主流方向一次元での気泡速度計測が行われている。しかし、高ボイド率での二相流動では数10cmの大きな径を持つ大気泡や数mm程度の小気泡が混在し、複雑な多次元性を持つ。これは、気泡の大きさによって浮力や抗力等の影響がの度合いが違うため異なる挙動を示すためである。さらに、信号処理において大気泡の信号は小気泡の信号に影響を及ぼすため、気液二相流動の高精度な多次元二相計測は困難である。
1. 4 研究の目的
本研究では、多次元気泡速度ベクトルを導出するための信号処理手法を開発し、多次元での気泡速度の導出を目的とする。気泡弁別は周波数解析手法の一つであるウェーブレット(wavelet)解析を用いる。多次元で気泡速度ベクトルは気泡径毎の多点間相互相関分析により導出する。これらの信号処理手法に関して2章で詳述する。本信号処理手法の妥当性は、特徴的で既知流動パターンをもつ旋回流により評価した。さらに、水空気系二相流計測(通常の直線流および)に適用し、旋回板の有無が二相流に与える影響、大気泡小気泡間相互作用の定量評価、高時間分解能での多次元二相流計測についても報告する。
概要 (英文)
A wire-mesh sensor (WMS) can acquire a void fraction distribution at a high temporal and spatial resolution and also estimate the velocity of a vertical rising flow by investigating the signal time-delay of the upstream WMS relative to downstream. Previously, one-dimensional velocity was estimated by using the same point of each WMS at a temporal resolution of 1.0 - 5.0 s.
The authors propose to extend this time series analysis to estimate the multi-dimensional velocity profile via cross-correlation analysis between a point of upstream WMS and multiple points downstream. Bubbles behave in various ways according to size, which is used to classify them into certain groups via wavelet analysis before cross-correlation analysis. This method was verified by air-water straight and swirl flows within a large-diameter vertical pipe. The results revealed that for the rising straight and swirl flows, large scale bubbles tend to move to the center, while the small bubble is pushed to the outside or sucked into the space where the large bubbles existed. Moreover, it is found that this method can estimate the rotational component of velocity of the swirl flow as well as measuring the multi-dimensional velocity vector at high temporal resolutions of 0.2s.
報告書年度
2010
発行年月
2011/07
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
金井 大造 |
原子力技術研究所 原子炉システム安全領域 |
共 |
古谷 正裕 |
原子力技術研究所 原子炉システム安全領域 |
共 |
新井 崇洋 |
原子力技術研究所 原子炉システム安全領域 |
共 |
白川 健悦 |
原子力技術研究所 原子炉システム安全領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
ワイヤメッシュセンサ | Wire-mesh sensor |
水空気二相流 | Two-phase flow |
ウェーブレット解析 | Wavelet analysis |
相互相関分析 | Cross-correlation analysis |
沸騰水型原子炉 | Boiling-water reactor |