電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

L10003

タイトル(和文)

ワイヤメッシュセンサの流れ場への影響と適用範囲の評価

タイトル(英文)

Influence and Applicability of Wire-Mesh Sensor to Acquire Two Phase Flow Dynamics

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

沸騰水型原子炉の炉内流動評価は従来の保守的な解析から、最適値を予測する解析に移行しつつある。最適値を予測するためには、精度の高い沸騰二相流のデータベースが必要である。すなわち高ボイド率で流れの非均一性が顕著かつ非定常性の強い多次元二相流における非均一性をカバーする多くの測定点を有し、流れの非定常性に対して十分高い時間分解能を持ち、さらに高温高圧条件下での運用も可能な計測システムが必要である。
二相流計測手法として、コンダクタンス法、触針法、超音波、レーザー(光)、X線やγ線などの放射線を用いた計測が活発に行われている。
コンダクタンス法は、二相流のボイド率が変われば電気抵抗が変わることを利用して、流路断面の平均ボイド率を計測する。触針法は、流路内ある点におけるボイド率計測に用いられる。触針法の計測手段としては電気抵抗の変化を用いる方法および光屈折率の変化を用いる方法等がある。超音波やレーザー(光)、X線やγ線などの放射線を用いた計測手法では、回折、散乱、減衰量、周波数変化を計測することで、二相流を計測する。これらの計測手法において高温高圧下二相流の流路内の流速分布やボイド率分布、気泡径分布を計測できる方法としては、X線やγ線などの放射線を用いた計測に限られる[1]。
ワイヤメッシュセンサ(Wire-Mesh Sensor:WMS)は米国によって開発され、Prasserらによって気液二相流のボイド率計測に応用された[2-4]。WMSはワイヤ間の電気伝導率の差から断面ボイド率分布を高空間分解能かつ高速時間分解能で計測可能である。さらに、流れの上下流にWMSを2段設置することで、気泡通過時間差から気泡界面の移動速度分布も計測可能である[5-8]。さらに高温高圧条件下での運用も可能である。これまで、大気圧条件下の水空気系の研究を中心に高温高圧条件下での研究も活発に行われてきている。しかしながらWMSの二相流計測適用性の評価すなわちワイヤの侵襲性や計測精度の評価は十分には行われていない。
WMSの適用性を示すための評価項目として、ワイヤの影響、計測周波数、信号処理方法、流動条件等が挙げられる。WMSによる二相流計測手法は流れの中にワイヤを浸漬する侵襲法であるため、気泡の分裂や変形による断面ボイド率分布計測精度への影響が考えられる。また、ワイヤは流路断面積の4~7%程度を占めるため、気泡上昇速度への影響も考えられる。Prasserらの報告では0.24m/s以下の水流速条件下では、二相流構造の乱れによる気泡の変形が大きいとある[4]。WMSの構造および過去の文献から、ワイヤの影響に関する項目が上述した項目の中で最も計測精度への寄与が大きいと考えられる。しかし、過去に行われた報告では気泡の変形に関して可視観測画像に基づく大きな変形の有無を判断基準としており、精度の良い評価は行われていない。また、WMSの上昇速度への影響および計測精度についても十分な評価は行われていない。現在、当所ではWMSを用いた二相流の多次元計測を進めている。WMSの二相流計測の侵襲性および精度すなわち適用性を十分に把握することが重要である。
本研究の目的は、WMSの二相流計測信号の相互相関分析および高速度撮影による可視観測結果との比較により気泡形状および気泡速度への影響を評価し、WMSの二相流計測適用性を評価することである。

概要 (英文)

Wire-mesh sensors (WMS) are able to measure void distributions and velocity profile at high speed. Immersing the wire-mesh affects the structure of two-phase flow. Experiments were performed for single rising air bubble in a vertical pipe of i.d. 50 mm and 224 mm at water velocities ranging from 0.05 to 0.52 m/s and 0.42 to 0.83 m/s. Distortion of a relatively large bubble with the wire-mesh was small in the water velocity over 0.25 m/s and confirmed by cross-correlation analysis as well. Bubble rising velocity acquired by WMS is in good agreement with that estimated by high-speed camera in the experimental range. WMS has applicability to acquire two phase flow dynamics in the water velocity over 0.25 m/s.

報告書年度

2010

発行年月

2011/05

報告者

担当氏名所属

金井 大造

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

古谷 正裕

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

新井 崇洋

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

白川 健悦

原子力技術研究所 原子炉システム安全領域

キーワード

和文英文
ワイヤメッシュセンサ Wire-mesh sensor
水空気二相流 Air-water two phase flow
気泡形変形 Bubble shape distortion
気泡速度 Bubble velocity
沸騰水型原子炉 Boiling Water Reactor
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry