電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

L07018

タイトル(和文)

フライアッシュ混合セメント硬化体中における有機炭素およびヨウ素の拡散挙動

タイトル(英文)

Diffusion of Organic Carbon and Iodine in Low-Heat Portland Cement containing Fly Ash

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

放射性廃棄物処分の余裕深度処分システムでは廃棄物の固化材料や構造材料として大量のセメント系材料の使用が予定されている.特に,人工バリア材として仕様が検討されているフライアッシュ混合低熱ポルトランドセメント(FAC)には,セメント系材料に対して収着性の低い核種の移行抑制を図るべく,低拡散性によるバリア機能が期待されている.しかし,処分場性能評価上重要となる有機形態の炭素14(C-14),およびヨウ素129(I-129)のFAC中の拡散挙動に関する検討はほとんど見られないのが現状であり,データの取得および拡散挙動の把握を行う必要がある.そこで本研究では,有機炭素の形態の一つである酢酸,およびヨウ素を用いた拡散実験によって,セメント系材料中における有効拡散係数の取得を行うとともに,FACの核種移行抑制効果を検討することとした.
セメント硬化体試料としては,処分場での仕様が検討されているFAC(フライアッシュ/セメント=3/7)に加えて,建築物などに一般的に使用されている普通ポルトランドセメント(OPC)を比較として選択した.拡散実験は,性能評価上重要となる有効拡散係数の取得が可能な透過拡散法で行った.この実験は,セメント硬化体試料で区切られた二つのアクリルセルの片側(高濃度側)にトレーサー濃度を設定した試料溶液を,もう片側(低濃度側)にはトレーサーを含まない溶液を充填することで,低濃度側セルへトレーサーが拡散移行することによるトレーサー濃度の経時変化を測定するものである.
OPC硬化体試料を用いた実験では,一般的な拡散実験結果に見られるような拡散速度が一定となる結果が得られた.一方,FAC硬化体試料を用いた実験では酢酸およびヨウ素を用いた場合ともに,時間の経過とともに拡散速度が緩やかになる現象が確認された.これは,FAC硬化体試料に含まれるフライアッシュの水和反応が進行し,FAC硬化体試料をより緻密な構造に変化させたことに起因するものと思われる.
拡散実験より有効拡散係数を取得した.FAC硬化体試料については拡散実験開始後と拡散速度が緩やかになる数ヶ月後に分けて有効拡散係数を求めたところ,実験開始後では10-13 m2 s-1オーダー,数ヶ月後では10-14 m2 s-1オーダーの値が得られた.また,OPC硬化体試料については10-12 m2 s-1オーダーの有効拡散係数が得られた.
これらのことは,FACで構成された人工バリアが,低収着性の有機炭素やヨウ素についても十分な遅延効果を発揮できることを示唆するものである.

概要 (英文)

The diffusion of radionuclides in cementitious materials, which would be used as an engineered barrier, is an important parameter for the performance assessment of sub-surface repository system of low-level radioactive waste disposal. Especially, organic carbon-14 and iodine-129 would have large contributions to the dose evaluation, because of their low ability of adsorption on cementitious materials.
In this study, the diffusion of acetic acid and iodine in hardened cement paste was examined by through-diffusion experiment. Low-Heat Portland Cement containing Fly Ash (FA/LPC=3/7) which is a candidate cement material for the construction of sub-surface repository was prepared and used in the diffusion experiments. As a result, effective diffusion coefficients, De, of trace ions for FA/LPC hardened cement pastes were estimated to be 10-13 m2 s-1 order in the beginning of diffusion experiments. Then, the diffusion of trace ions became slowly for the experimental period of 4-18 months. This is probably due to the structure alteration of FA/LPC by the pozzolanic reaction. After few months, De were estimated to be 10-14 m2 s-1 order.

報告書年度

2007

発行年月

2008/06

報告者

担当氏名所属

千田 太詩

原子力技術研究所 放射線安全研究センター

杉山 大輔

原子力技術研究所 放射線安全研究センター

キーワード

和文英文
放射性廃棄物処分 Radioactive Waste Disposal
フライアッシュ混合低熱ポルトランドセメント Low-Heat Portland Cement containing Fly Ash
有機炭素 Organic Carbon
ヨウ素 Iodine
有効拡散係数 Effective Diffusion Coefficient
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry